第22話 圧迫面接的尋問
私と海、舞の三人である人物を待つ。
いつもなら朝一番に学校に登校してくるのだが、あと十分でホームルームだというのに未だに登校してきていない。
これは間違いなく怪しい。
私たちに何か隠し事をしているのは間違いない。それを今から問い詰めようというわけだ。
「まだ来ないね」
「もしかして風邪とか?」
「風邪だったら「風邪なう~」ってメールしてくるじゃんいつも」
「「確かに」」
ほんと体調悪いのにメールしてこないでほしい。というか、絶対それ遠回しに「お見舞いこいや桃缶持って」って言ってる。なんて強情な子なんだ。
だから経験則からして学校自体を休むということはない。
さらに怪しい。
んー、と唸っていると教室のドア付近から会話が聞こえてきた。
「ほんと起きるの遅すぎ! もう高校生なんだから一人で起きれるようにしなよね!」
「反省してる。だけど改善されるかどうかはわからん」
「改善しろ!」
声からして花。
声がだんだんと大きくなっていって、ようやく花が姿を現した。
「全く~私に甘えるのもいい加減にしなよね?」
「あぁーすまん」
「感情込めろ!」
花が……ツッコみキャラに⁈
いつも私たちが四人でいるときは完全にボケと同じ部類にいるのに今はツッコみ⁈ ってか一緒に登校してきたのやっぱり男の子じゃん!
それもウチのクラスの……弁天(べんてん)君。
確か二人は……幼馴染、だったっけ。
……問い詰めてやろうじゃないか。うふふふ。
「花おはよ~」
「おはよ……って、なんで三人とも私の席にいるの⁈ 人口密度高いよ!」
「花も早くこの楽園に入る? それとも――男の子と話したい?」
「ぐっ……」
いじりがアッパー並みに花に炸裂。
なかなか効いたのか後ろによろめく。
「まぁまぁ座りたまえよ花君。さぁさぁ」
「は、はぁ」
花の席から少し距離をとって、花が座るのを温か~い目で待つ。
ちなみに舞はこの状況にノリノリ。いつにもまして生き生きしてる。目輝かせるし。可愛いなぁ。
花が荷物を机に置いて、私たちにちらちらと視線を向けながら椅子に座った瞬間、三人で花を包囲した。
「どういうことだあれはあれはあれはあれは!」
「花、正直に話して」
「どういうことなんだ花く~ん!」
「ひぇっ!」
圧迫面接さながらの尋問。
だって私たちは女子。こういう話題は大好物なのだ。
「一緒に登校してきて、仲よさげな感じだったけどどうなんだよ花~」
「そ、それは……」
「逃げても無駄だよ花。私たちは花がゲロるまで花を解放しない」
「い、いやぁ」
「もう諦めた方が身のためだと思うけどなぁ」
「……はぁ、わかったよわかったよ。話すから」
深くため息をついて、遂に根負け。
私たちは勝利を手に入れハイタッチ。まぁ一対三という明らかに数的有利な状況だったから、卑怯と言われても仕方がない。
でも、女の子って卑怯な生き物だから。だからセーフ。
「今日一緒に登校してきた瑞希は……幼馴染」
「で付き合ってんのか? 付き合ってんのか⁈」
ついつい興奮してしまい、前のめりになってしまう。
「一旦落ち着いて加奈。話の続きを聞こうよ」
「ご、ごめん……」
が舞に冷静を促され、落ち着きを取り戻す。
視線があっちこっちに飛んでいる花の話に、ちゃんと耳を傾けた。
「でも実は……瑞希の両親が海外に転勤することになって、それで一人暮らしに慣れない瑞希をサポートしてあげてるってわけ。以上! それ以外に何もなし!」
ふん、と腕を組んでなぜかドヤ顔をする花。
私たちは簡単にだがすべてのことを聞かされて、ある一つのことを思った。
「「「(いや、ラブコメかよ)」」」
お兄ちゃんたちのラブコメに次ぐ、新たなラブコメの始まりをこの時私たちは確かに予感した。
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