第21話 妹加奈司令官
Here is 俺の部屋。
現在妹一行(三人編成)と俺とみくるが一堂に会していた。
それはわが妹でありながら兄を超えて、この家を家事もせずに支配している加奈が招集して現在に至る。
重々しい雰囲気の仲、肘をつく加奈が厳かに口を開いた。
「本日はどうも集まってくれてありがとう。みんなが今日ここに集まれたことを、非常に嬉しく思うよ」
「いや、寿いないけどな」
「シャラップ! お兄ちゃんはライフを一つ失った」
「なんで命がけなんだよ」
喋っただけで命削れるとか、明石家〇んまさん何回死んでんだよ。どんなウィルスだよ。
ようやく重々しい雰囲気は霧散して、いつもの雰囲気に戻る。
しかし加奈以外のメンバーはなぜ集められたのか分かっておらず、きょとんと首を傾げていた。
「今日、実はディベートしなきゃいけないことがあるんだよ」
「ほう」
「その議題とは——」
「「「ごくり」」」
「花に彼氏がいるのかいないのか!」
「「「おぉ~!」」」
バラエティーばりのリアクションを見せる俺たち。
それにだんだんと快感を覚えてしまった加奈は、胸を張ってドヤ顔をしていた。
いや、お前別にすごいこと言ってないからな? ドヤ顔する権利ねーよ。
「だから今日花を呼ばなかったわけね」
「そ。まぁこうやって仲間外れにするのは可哀そうなんだけど……大切なことだから私が犠牲となって、心を鬼にしたわけ」
がおぉ~! とポージングする加奈。
鬼の鳴き声「がぉ~」じゃねぇーだろ。鬼が鬼じゃねぇ。
「で、なんでそんな話になったの? ってか花に彼氏いるの?」
「それに関しては……この幼馴染カップルのお二人さんが証言者です!」
「いや別にカップルじゃねーよ」
「えへへ~」
あれみくるさん? 心なしか頬が緩みっぱなしな気がするんですけど気のせい? っていうか机の下でこっそり俺の手を握ってきますねみくるさん。
何幼児期に退行したの? 嫌なことあった?
ひとまずみくるは放っておいて、話を進める。
「こないだな、寿が公園で同じ高校の男子生徒とバスケしてるところを目撃してな」
「ちなみに寿に男の兄弟はいないよ」
「ってことは……そういうこと、なのかな」
「そういうことじゃない?」
「ぬぅ~」
嬉しいような、嬉しくないような表情を浮かべる妹一行。
確かに、これで本当に寿に彼氏ができていたとするなら女子会に参加できる回数も減ってしまうし、寿が幸せとは言えやはりこいつらも寂しいんだろう。
「そういえば最近付き合いが悪いなぁとは思ってたし……やっぱり……」
「私の花がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ うわぁぁぁぁぁぁぁぁかえせぇぇぇぇ‼」
荒れ狂う妹。
お兄ちゃんさすがに引いちゃってるよ。
あと、さりげなく俺との距離を縮めてくるのやめてくれませんかねみくるさん。
色々と熱いんですよ。……心とか?
「もう私は決めた! 本人に聞く!」
「最初からそうしろよ……」
「だまれぇ‼」
今の妹は無双状態。
ただの兄である俺が何か言えるわけもなく、ここは引き下がった。
「そうだそうだ!」とバックアップする三ツ谷と朝日に見守られながら、加奈が寿に電話を掛ける。
何回かコールした後、寿が出た。
『やっほー加奈~。どしたの?』
「単刀直入に聞こう。貴殿に彼氏はいるかね?」
ほんとに単刀直入だな。
ってかなんだよその話し方。ネタキャラかお前は。
『えっ私⁈ い、いないよそんなの~』
「そこを何とか!」
『どういうことだよそれ』
ツッコむ寿。
「ちょっとでいいから! ほんとちょっとでいいからさぁ!」
『ちょっとも何もないよ~。ほんとにいません。いい?』
「は、花ぁ」
『いないもんはいない——花~。カレーまだ煮込むよな?』
「「「「「……んんんん???」」」」」
今完全に男の声がした。
それも会話の内容からして——現在一緒に家にいるということがわかる。
俺たちは前のめりになって寿と繋がるスマホを凝視した。
『あっ、ちょ、はっ!——プー、プー、プー』
通話終了の文字が、画面に表示される。
それを漠然と見ながら、俺たち五人は皆同じ言葉を口にした。
「「「「「怪しい……」」」」」
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