第12話 体育祭①
俺の通う高校では年に一度の行事として青陵祭というものがある。
それは体育部門と文化部門に分かれており、とにかく盛り上がる。
その体育部門が今日、開催されていた。
「今日六月のくせして暑いらしいぞ」
「それはきついな」
「えいちゃん水飲む?」
「大丈夫だ」
俺とみくると雅樹は白組。他には赤、黄、青がある。
太陽の日差しが燦々と照り付ける中、一部の運動嫌いな人間は待機用テントにてお茶会中。
正直、体育祭はウェイ系がとんでもなくテンションが高い日であって、運動が大好きなわけではない俺たちにとってはただの行事に過ぎない。
ほんと外にクーラーつけて。長い目で見れば地球熱くしてるだけだけど。
「おっ、次の種目は一年生のクラス対抗リレーじゃん」
「へぇー」
「いやお前興味薄すぎだろ。妹御一行が参戦してるんじゃないのかよ」
「そうじゃないか?」
「いやそうだろうよ」
もう一度体育祭のパンフレットに目をやってから、あからさまにため息をつく雅樹。
いや逆に、「あいつらでんのかよ! うひょー写真写真!」って言ったら兄として気持ち悪いだろうが。
ってか、背後でそんな声が聞こえたんですけど。これ、ただの体育祭だからね?
「妹御一行は何組なんだよ」
「白だと思うよ」
「じゃあ俺たちと同じか。よし、たくさん応援するぞー」
そう言いながらも、日陰になっている待機用テントから出ようとしない雅樹。
お前、サッカー部だろうが。
『よーい、パンッ!』
スターターピストルの乾いた音が校庭に響く。
どうやらリレーが始まったらしい。
歓声が校庭に充満する。
俺は申し訳程度に「がんばれー」と声を出した。日陰で。
「えいちゃんもっと応援しようよ」
「してるしてる」
「もっとだよ~」
「が・ん・ば・れ~」
「こらふざけないの!」
ときたま出現するレアキャラ、お説教みくる。
今日も健在であった。
現在白組の順位は三位と、一番どう反応していいかわからない順位。
ラスト四人。
三位の順位で白組のバトンを受け取ったのは、妹海賊団のクルーの一人、ロリ少女寿。(これ絶対本人に言ったら怒られるやつ)
「おっ花ちゃん速い!」
「ほんとだ」
「小さいのにすげぇな」
一歩一歩は小さいはずなのに、足の回転スピードが常軌を逸していた。
徐々に二位との差を埋めていく。
しかしあともう少しのところで抜ける、というところでバトンは朝日に変わった。
歓声が沸き起こる。
「……あいつ足遅いな」
しかしその歓声のほとんどが、「可愛すぎる」「天使降臨」「付き合ってほしい」「膝枕されたい」と言ったものだった。
心なしか校庭に甘い雰囲気が漂ってきている気がする。
これぞザ・美少女パワーなのか……恐ろしい。
また少し差をつけられつつ、未だ三位にて次のバトンを受け取ったのはわが妹。
加奈がバトンを持った瞬間、朝日よりもより大きな歓声(主に男子。と保護者)が上がる。
妹ながらほんとにすごい人気だな。
なんで俺と妹でこんなに格差が生まれたんだろう。いや、別にいいんだけどね?
「加奈ちゃんがんばれー!」
みくるが声を張る。
「ほら、えいちゃんも応援して!」
「か、加奈ーがんばれー」
「うんうん。お兄ちゃんはそうでなくっちゃ」
満足げな表情を浮かべるみくる。
ほんとここ最近は尻に敷かれているなと思う。もはやみくるの傘下。
加奈は割と何でもそつなくこなすタイプなため、普通に足も速い。
そのため朝日が許してしまったリードを埋めて、アンカーへとバトンタッチ。
アンカーはもちろん三ツ谷。
三ツ谷が走り出すと、加奈や朝日よりも大きな歓声が起こり、会場がどっと沸いた。
「……あいつ早すぎだろ」
「一年生にして陸上部のエースらしいぞ」
「美少女のハイスペックさが怖い」
「みんなすごいねー」
三ツ谷はあっという間に二位を抜き、そのまま独走していた一位を抜き去った。
男なら惚れるレベルのイケメンっぷり。
結局クラス対抗リレーは、三ツ谷の大きな貢献あって白組は一位となった。
この一件後、三ツ谷は男子からも女子からもモテるようになったという。
体育祭編、まだまだ続く。
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