Act:66『一つだけわがまま言ってもいい?』

-校庭-


夢「ふっ!」

 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

桜「夢ちゃんやっぱりすごいなぁ」

唯「走り幅跳びをするだけで歓声があがっているね。記録も凄いけれど」

蛍「大人気だなぁ」

夢「蛍くーん!」ニコッ

 ギロッ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

蛍(おうおう、肝が冷える)


-教室-


京「ゆめっちはトイレ行かへんの?」

蛍「アイドルに何聞いてんだ」

夢「えー行くよ? 人間だもん」

京「でも行ってるとこみたことない気ぃする!」

夢「あはは、学校ではしないよ~」

京「ええ! スゴッ!」

唯「色々と問題が起きそうだよね、主に便器周辺で」

蛍「……」


-廊下-


夢「蛍くーん」

蛍「ん、夢」

夢「あれれ……」くんくん

蛍「な、なんだ?」

夢「いつもと匂い違う、ちょっと野性的な……」

蛍「え、そうか? 体育で汗かいたからかも」

夢「そうそう、私今日香水違うんだ~! 嗅いでみて~」

蛍「ちょ、近い、近いって!!!」


-教室-


蛍「最近昼飯が怖い」

唯「おや、いつもじゃないのかい?」

蛍「まあ量の話に関してはな。今日は夢もいるだろ」

唯「そうだね」

蛍「あいつがいると――」

夢「蛍くーん! 一緒にご飯食べよ♪」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

唯「……なるほどね」


-屋上-


夢「わ~風が気持ち良い! 連れてきてくれてありがとう蛍くんっ」

蛍「なあ夢」

夢「ん、なあに?」

蛍「俺と一緒にいてまずくないのか?」

夢「どうして?」

蛍「ほら、アイドルだしさ。そういうのって色々言われる気がして」

夢「うん、だから?」

蛍「いや、だからその……ファンは嫌がるんじゃないのか?」

夢「うーん、もし蛍くんと一緒にいるのがダメ! って言われるんだったら、

  私はアイドル辞めちゃうかな」

蛍「!」


夢「蛍くんはさ」

蛍「うん?」

夢「私と一緒にいるの、嫌?」

 どきっ

蛍「それは、ないけど……」

夢「蛍くんは優しいなぁ」

蛍「え?」

夢「私は確かにアイドルやってるけどさ。

  私の人生、アイドルだけで終わらないから。

  自分のやりたいこと、ぜんっぶやりたいって思っちゃうの。

  だから、アレがダメ、コレがダメって言われるんだったら、

  私は別に、全部辞めちゃってもいいと思ってるの。

  だって、それは自分が選んだ道だから」


夢「蛍くん」

蛍「うん?」

夢「私はこの学校が好き。校風が自由なとこ、校舎が広くて大きいとこ、

  お仕事してる私を受け入れてくれるとこ、全部全部。

  それに、学校のみんなも優しくて大好き!

  だから、お仕事で全然来れない時は結構落ち込んじゃったりもしちゃう」

蛍「……夢」

夢「だから、一つだけわがまま言ってもいい?」

蛍「……ああ、いいぞ」

夢「会えなくて寂しい時に、頑張れるように、連絡先教えて欲しいの」

蛍「ええっ!?」

夢「メールか電話ができたら嬉しいな~って」

蛍「そ、それは別に構わんが……」

夢「じゃー決まり! ふふっ」

蛍(夢はやっぱり凄いな。笑顔だけで幸せにさせられちまう)


唯「それで、夢さんの連絡先を手に入れた、と」

蛍「ああ」

唯「それ、教えても良かったのかい?」

蛍「隠してる方が変だって夢が言うからさ」

唯「なるほど。確かにそうだね」

桜「ゆめっちと連絡先交換したって凄いことだよね」

 ピロリンッ

蛍「んお、メール来た」

唯「おや、早速」

蛍「……」

桜「蛍、顔赤いよ?」

唯「おやおや、きっと素敵なメッセージが書かれていたんだろうね」

蛍「う、うるせー!」

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