Act:64『変わらないことも良いことだね』

桜「そういえば最近、京ちゃんの『ほたるくん』呼び訂正しなくなったね」

蛍「んー、もう直す気無さそうだから諦めた」

桜「あはは。でもあだ名みたいで良いよね」

蛍「そうか?」

桜「私も呼ぼうかな、ほたる~って」

蛍「呼び捨てだと本当の虫みたいに感じるな……」

桜「た、確かに……」


 *


姫「うちの学校ってどうして私服なんだろ」

帝「御十時は自由な校風が魅力だと言われているね」

姫「でも帝ちゃんも私も制服着てるじゃない?」

帝「そうだね。それも自由だ」

姫「皇ちゃんなんて特注の制服なんでしょ? 可愛い~」

皇「ふふん!」

妃「サイズが無いからでしょ」


妃「毎日決まってる方が楽よ。だからいつも制服なのよ」

姫「たしかにそうだね~」

妃「あんたは私服着そうなのに制服よね」

姫「デートの時に私服の可愛さが引き立つじゃない?」

妃「本当にそれが理由?」

帝「確か入学して数日間は私服だった気がするけれど」

皇「和装の生徒を見て衝撃を受けてなかったか?」

妃「どゆこと?」

帝「『敵わない』と言って次の日から制服だったと思う」

皇「そうだな」

姫「わー! そんな話はしなくていいの!」

妃(それ以上に二人ともよく覚えてるわね……)


 *


悠「桜先輩って前の学校の制服なんですよね?」

桜「うん」

悠「京ちゃん先輩も」

京「せやで!」

悠「みんな個性的で良いですよね、うちの学校!」

唯「ボクは中学の制服だよ」

桜・悠「えっ」

唯「?」


悠「唯先輩って身長いくつですか?」

唯「150だよ」

桜「中学の頃から変わってないの?」

唯「うーん、流石に中学の頃よりは少しだけ伸びたけれど、

  体型はそんなに変わってないかもしれないね」

京「ほえー、じゃあずっと唯ちゃんは唯ちゃんなんやな~」

桜(中学から体型が変わってない……)がーん

京「ん、さくちゃんどないしたん?」

桜「えっ! あ、いや! なんでも! ……京ちゃん、私のご飯食べる?」

京「ええの! いただきまーす!」


悠「ってことはもうこの制服5年目なんですか?」

唯「そうなるね」

桜「綺麗だよね」

悠「物持ち良いんですね!」

唯「そうなのかな」

京「ウチは中1の時なんかツギハギだらけの穴ばっかやったのに!」

桜「それはそれで凄いね京ちゃん……」


 *


唯「――という話をしていたんだ」

蛍「確かにお前ずっとその制服着てるよな」

唯「物持ちが良いって褒められたよ」

蛍「良かったな」

唯「ところで質問なのだけれど」

蛍「ん?」

唯「ボクって中学から変わってないのかな?」

蛍「……確かにそんなに変わってないかもな」

唯「そうか……やっぱりそうなんだね」


蛍(……落ち込んでる?)

唯「……」

蛍「あー、でもな」

唯「?」

蛍「俺とお前の仲も、その制服みたいにずっと続いてるよな。

  それってやっぱり、お前の物持ちの良さなんじゃねえか」

唯「……」

蛍「わ、わかんねーけどさ」


唯「……ふふっ、それは物持ちじゃないと思うけれど」

蛍「んだよ」

唯「君も変わらないね」

蛍「なんだそりゃ」

唯「ううん。なんでもないさ。……変わらないことも良いことだね」

蛍「?」

唯「ボク達の関係みたいに、ね」

蛍「……そうだな」

唯「おや、珍しく素直だね」

蛍「うるせー」

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