Act:61『嫁に欲しいね』

-2-C教室-

桜「揚げパン作ったよ」

蛍「お、美味そうだな」

桜「お一つどうぞ」

蛍「いただきます。……うん、美味いね」

唯「こんなに美味しい揚げパン、ボクはもう」

京「お手やな!」

唯「うん、そうだね」

京「にひひっ」

蛍(……さむっ)


蛍「そういえば妃先輩って料理研なんだな」

桜「うん、しかも部長だよ。手際がすっごく良くって惚れ惚れしちゃうよ」

唯「へえ。是非見てみたいね」

蛍「というか、部長ってことは生徒会兼任なんだな。忙しいだろうに」

桜「この揚げパンも、先輩が作ったレシピを参考にしてるんだよ」

蛍「すげえな」

唯「是非とも、嫁に欲しいね」

蛍「飛躍し過ぎだろ」


京「悲しいこと思い出してん」

蛍「なんだ?」

京「あんな、ウチ関西におった時にずっと観てた番組あってんけど」

蛍「うん」

京「こっちでやってへんかってん! ショックやわぁ」

蛍「確かにショックだなそりゃ」

京「せやからウチ、決めてん」

蛍「何を?」

京「もっと面白なるって」

蛍「関係あるのか……?」


-廊下-

悠「最近肩凝りが酷くて」

帝「私もだよ」

桜「私もです。なんか変な姿勢とか取っちゃってるのかなぁ」

悠「やっぱり私だけじゃないんだ! ねえねえ、智ちゃんはどう?」

智「……ねーです」

悠「そうなんだ! 羨ましいな~」ぽよんっ

帝「流石にこうも酷いと、身体が悪いのかと疑ってしまうね」ぽよぉん

桜「そうですね~……」ぽよん

智(……何も言わねえです)すとーん


-調理実習室-

妃「迂闊だったわ……」

桜「妃先輩、部室で何なさってるんですか?」

妃「ああ、桜。実は課題出されてるの忘れてて、今日中に出さないとなのよ」

桜「あらら、大変ですね」

妃「大変よ、昨日は生徒会の仕事が終わらなくて、家に持って帰ってやったんだから」

桜「ええっ」

妃「生徒会ってマンパワーが足りてないのよ」

桜(そんなに大変なお仕事なんだ……)

妃(姫と皇がちゃんと動いてくれれば……はぁ)


桜「あっ、良かったら何か作りましょうか?」

妃「私のことは気にしなくていいわよ」

桜「先輩に教えてもらった揚げパン、すっごく好評だったんですよ」

妃「あ、作ったの?」

桜「はい。とっても美味しかったからお家で」

妃「あれ、カロリー多いから気をつけなさいよ?」

桜 ピタッ

妃「? 桜、どうしたの?」

桜(……昨日、いっぱい食べちゃった……)

妃「だ、大丈夫……?」

桜「はひっ!? だ、大丈夫デスヨ!?」

妃(明らかに動揺してるけど……)


-廊下-


皇「んー……」

蛍「? 皇せんぱ……こほんっ。お姉ちゃんどうしたの?」

皇「あっ♡ 弟ではないかっ。実はな、お姉ちゃん今目薬を点けられなくて困ってるんだ」

蛍「なるほど……?」

皇「頼もしい頼もしいお前に点けてもらいたいなぁ~」ちらっ

蛍「え……」

皇「嫌か……?」うるうる

蛍「や、やるやる! まかせてよ!」


 *


蛍(な、なぜ俺は膝枕してるんだ)

皇「準備万端だ!」

蛍「い、いくよー?」

皇「うむ、かかってこい!」

蛍(あれ、なかなか出ないな)

皇「むぅ、焦らすなぁ」

蛍「ちょ、ちょっと待って……」

  ぴちょん

皇「ふわっ! はいったぁ……」

蛍「良かった……」

皇「気持ちいいなぁ」

蛍「あはは……」(どういう状況だこれ)


皇「なんか、いいな」

蛍「?」

皇「こうしてると、昔のことを思い出す」

蛍(人違いなんだけどなぁ)

皇「もう少し、このままでいいか?」

蛍「……うん、いいよ」

 (とりあえず、気が済むまでこうしていよう)


 この後、変な噂が流れたのは言うまでもない。

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