第37話 宣言する者


 ウェイン達一行は、服屋の店員にアドバイスされながら、それぞれが最高だと思う服を選んだ。


 そしてそれぞれがVIPルームに戻って来た。



 初めに戻って来たのがステファンだった。

 ステファンはスーツにサングラス、そして口には葉巻を咥えている。


「キャー! おじ様素敵っ!! スーツが似合い過ぎるわ~!」

「本当ね! 役者さんみたいっ!!」


 若い女店員の黄色い声が飛ぶ。

 元々スタイルのいいステファンには、スーツがとても良く似合っていた。



 そして次にリアナが入って来た。


「ふふ、どうかしらステファンさん!?」

「……おお、何と勇ましいっ!!」

「これで優勝は決まりね!」


 リアナはオリハルコンの鎧を纏い、その背には白銀のマントを付けていた。

 そして足元は、最高級のレザーブーツで決めている。


「キャーっ! お姉様も素敵っ!!」

「本当だわっ! まるで女勇者様よーっ!!」


 戦士としての力量を日に日に増しているリアナには、本当に勇者の様な風格があった。



 そしてエルサとウェインが戻って来た。


「キャーっ!! まるでお姫様みたいだわーっ!!」

「足が長くて小顔! 羨まし過ぎるっ!!」


 エルサは、胸元を大胆に開けた純白のドレスに身を包んでいた。


「この服、動きづらい。エルサ、あんまり好きじゃない」

「いやいや、エルサさん、本当に美しいですぞ!」

「あら、あんたにしては、まあまあじゃない!」


 慣れないドレスに戸惑うエルサ。

 しかし彼女は、店員やステファンとリアナからも褒められて、悪い気はしなかった。



 そして一同はウェインの方を見た。


「どうだ!? 凄い珍しい服があったからこれにしたぞ!?」


 何と、ウェインはバニーガールの衣裳を着ていた。


「「……ぶっ!!」」


 エルサ以外の人間は、噴出しそうになったが、ウェインが真剣だったので何とか必死で我慢する。


「後は師匠だけか。今回はなかなかの接戦だな!」

「お、おっしゃる通りです。皆さん相当ハイレベルでございますから、……ぷっ」


 ステファンはバニーガールの姿で真剣に話すウェインに、笑いを堪えながら返答した。

 さらにステファンがウェインの両足を見ると、当然そこは編みタイツだったので、必死に笑いを堪える。


「でも師匠はかなりハイセンスっぽいからな。要注意だぞ?」

「た、確かに。おっしゃる通りですな」



 そしていよいよバルカスがVIPルームに戻って来た。

 ウェイン達も店主のチャーリーと店員達も、彼に注目する。


 そして彼の口は開かれた。


「ふふ、これでどうだっ!!」


 何とバルカスの姿は、白いバレリーナの衣裳で、しかもその股間からは白鳥の頭が伸びていたのだ!


「「……ぶっ!!」」


 全員が必死で笑いを堪えるものの、ついに我慢出来なくなり、その場にいる全ての人間が爆笑してしまった。


「あはっ、あははははははーっ! やられた! 総司令官殿にやられたーっ!!」

「ひいいぃぃいいーっ! 腹が痛い!」


 リアナも店主のチャーリーでさえも爆笑する。


「クククク……!! さ、さすがバルカス殿でございますな! それ以上帝国をバカにする衣裳はありませんぞ!」

「ぶははははーっ! これで決まりだな、優勝者は師匠だっ!!」

「……へっ!?」



 バレリーナの衣裳で立ち尽くすバルカス。


 その傍らでは、股間の白鳥の頭を上下に揺らすエルサの姿があった。





◇◇◇





 帝都にある皇帝の居城。

 そこでは、ヴラントを占拠したマゼラン王国に対応する為、緊急領主会議が行われようとしていた。


「マゼランが随分と調子に乗っておるな」

「ふん、北の大国ソムリアを落とした今、我々は楽々とヴラントを取り返せるがな」


 領主会議には、帝国の宰相を始めとする大物達が顔を揃えていた。

「竜帝」と呼ばれるモンヴァイもその1人である。


「いやいや、それにしても、モンヴァイ殿の魔竜は流石ですな」

「まったくだ。あの北の大国、ソムリア共和国を滅亡させたのですからな!」


 各領主に褒めちぎられたモンヴァイは、得意気に話し出す。


「あの魔竜が帝都を守っている限り、皇帝陛下の安全は保証された様なもの。そしていざ魔竜で侵攻すればその国の滅亡は免れんよ!」


 そう言ったモンヴァイは豪快に笑うのだった。

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