第48話 冒険者の階級
先程の家族の思い出を話し終えたはるか達は、のんびりと依頼場所に向かいながら仕事の話をしていた。
「そういえば店に入る前に何か聞きたそうな顔してたよな? それから説明するか?」
今回の初仕事の件でカイルから聞きたい事があるか促されたが、はるかは思い出せなかった。
「何だったっけ?」
「いや……それは俺が聞きたい……」
「あはは! そうだよね!」
若干失礼な気持ちを含む眼差しで見られているのは気のせいじゃないだろう。
「ちょっと待ってね。何だったかな〜?」
「いや、忘れているならいいんだ。話を続けよう。とりあえず今回の初仕事が終わったら報告してD級にとう——」
「それそれ! D級!」
「食いつきが凄いな……」
半笑いのカイルはこの際、見なかった事にしよう。
この世界で私はまだまだ生きるだけでいっぱいいっぱいなのだ。
産まれたてだから仕方ないんだ。
それに気になる事は気になる。
そんな言い訳をはるかは心の中で呟く。
「冒険者に階級があるんだね。どんな違いがあるの?」
「普通に会話を続けるんだな……。まぁ知識を得るのに貪欲なのは良い事だ。とりあえずランクの説明だな」
呆れつつもちゃんと説明をしてくれるカイルには感謝しかない。
一呼吸おいて説明が始まった。
「上から順にAA・A・B・C・D級と5段階に分けられる。CとDは内容はあまり変わらないかもな。Bから報酬が良くなってくる分、少し依頼が難しくなってくる。その難しい依頼をこなせるようになったらAに……って感じだな」
そんな風にランク分けされているんだなぁ、なんて思いながらはるかは返事をする。
「なるほどね〜。とりあえず安定して依頼をこなさないと上へはいけないんだね」
「そうだな。その辺りは信用問題になるし、命にも関わるからな。そういった冒険者の力量を見極めるのもギルドの仕事だな」
「ギルドの人達も凄い人ばかりなんだね」
みんなそれぞれがプロの仕事をしているんだな……なんてはるかは月並みな言葉で思う。
「特化した能力を活かした仕事をしているから目は確かだな。それにそこら辺の冒険者より強いぞ?」
「えっ!?」
この前対応してくれたお姉さんを思い出したが……全然そんな風に見えない。
「世の中、腕力だけじゃないからな。見た目に反して凄い奴は山ほどいる。特にギルドの奴は何かあった時に対応できるように訓練しているそうだ」
「はぁ……。見た目で判断しちゃ失礼だね。勉強になります」
それならば……私もきっと強くなれる……はず!
「私も頑張る!」
はるかは思わず、考えていた事の続きを口にしていた。
「なんだか良い刺激になったようだな? 良い事だな」
カイルはもう慣れてきたのか、いきなり変な事を口に出しても驚かなくなった。
「あっ! そういえはAA級はどうやってなるの?」
「んー……、この辺りはもう特化している奴らばかりだと思ってくれ。不可能な討伐やら人助けやら、だな」
なんだか普通の人達ではない事はわかった。
だからはるかなりのイメージを伝えてみる。
「剣の達人とか魔法の達人……とか?」
「そのイメージでいい。その辺りになると魔力の影響で髪の色も魔力の色になっている奴もいるしな」
「髪の色まで変わるなんて相当凄いんだね! 世の中不思議な事でいっぱいだなぁ」
「1番不思議な存在が何言ってんだ」
そんな的確なつっこみをもらい、はるかは笑い出す。
「確かにそうかも」
「だろ?」
つられてカイルも笑っていた。
そしてふと、思った。
「そういえばカイルは何級なの?」
「俺か? 俺はA級だ」
「それって凄いんじゃないの? だって上から2番目でしょ?」
「どうなんだろうな? サンも同じだぞ?」
「それは2人とも凄いだけなんじゃ…」
はるかの読みは当たっていた。
A級までの道程もかなり過酷なのである。
そして10代でA級に到達している冒険者は少ない。
あまりそういった事を気にしないカイルの認識での発言だったのだ。
依頼完了の報告の時に事実を知り、やっぱりなと思う事になったはるかは今後この世界の重要な事は別の人にも確認しようと心に誓うのである。
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