第6話 赤毛の兄弟
*
ティアリスに一人だけ存在する『魔女』の弟子であり実の兄弟であるアルとユタは、名も知らぬ『転移者』の少女達を彼らの師匠の元へ誘導していました。
あゆみを進める度に、特徴的な赤毛がふわふわと揺れます。
「……とりあえず、こっちの意思は伝わったっぽいな」
アルは、ユタと同じシアンブルーの瞳に好奇心と驚きの色を見せつつ、会話をしながら楽しそうに笑っている茶髪の少女と、気が抜けたような顔をしている黒髪の少女を見つめています。
「そうだね。どう思う?兄さん」
「どうって言ったってなぁ……まぁただのガキじゃね? 魔法が使えるようには見えん」
「あのねぇ、もう少し兄さんは口を慎むべきだと思うよ?僕らだって、今年で14なんだから大人から見ればまだ子供の範疇でしょ」
「ユタ、なんか最近俺に厳しくないか?」
「それは元から。あと、本当に直した方がいいよ。お師匠様困ってたし、それに……兄さん言い方は悪いけど、基本的に間違ったこと言ってないからね」
「お、おう」
ユタは「ごめん、ちょっと言いすぎたかも」と、申し訳なさそうに俯きました。
彼はアルに似て口の悪い性格が為に友達ができず、アルと同じように親元を離れて修行をするようになったのですが、最近は自覚するようになったようです。
弟の成長を感じて、アルは少し嬉しくなりました。ユタはアルのそんな気持ちを知ってか知らずか、慌てたようにすぐに話を戻しました。
「……お師匠様は不可能じゃないとは言ってたけど、僕らと同い年ぐらいなのに二人だけで転移を成功させるとか、正直信じられない。見た目は普通の女の子だし、洋服や髪色もディアス地方でよく見る普通のものだ……靴じゃなくてスリッパを履く文化があるなんて知らなかったけど」
「おま、お前……いや、なんでもない」
「?」
ユタが言ったディアス地方は、ティアリスから馬車で3日ほど真南に進んだ場所にあり、独自の文化を持った街々が並ぶ温帯地方です。
ティアリスはちょうど地方との境に位置している上、海が近く文化の交流が盛んであるため、人々は様々な出で立ちで街を闊歩しています。
ちなみにディアス地方には、スリッパを履く文化は存在しません。
「ま、お師匠様があんなに血相変えて『連れてこい!!!!』って言うんだから、半端なやつらじゃないんだろ。人は見掛けによらないってな」
「うん……お師匠様のあんな顔、初めてみたなぁ……」
「話したら凄いやつだったりしてな!あーぁ、なんで言葉っていっこにならなかったんだろうな〜、マジめんどくせぇ」
「だから、口が悪いよ兄さん。……あっ」
「いいっていいって。俺もユタも多分当分治んねぇし、ゆっくりやろうぜ」
「うん……またお師匠様にあの道具を貸してもらおう」
「おうよ! 楽しみだなぁ」
ユタは魔導書を小脇に抱えなおし、その持ち主の元へと、先を急ぎました。
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