第7話 初めまして
「えっ……ここ?」
詩織が指を指して首傾げると、兄弟の恐らく兄と思われる背の高い方がこくこくと頷きます。
どうやら場所に間違いはないようです。
「でも、ここって……」
到着したこの場所は、紛れもなく彩と詩織が最初に転移してきた廃屋敷でした。
一体どういうことでしょうか。彩も詩織も一緒になってくまなく探索したはず……誰かがいたならば、絶対に気がつくでしょう。
誘導されるまま中に入りましたが、特に探索をしたときと変わったところはありません。二又の階段を上り、広間を抜け、とうとう屋敷の端の部屋……プロットやライトノベルのあった書斎まで来てしまいました。
疑問と困惑で首を傾げる二人の様子に気がついた兄は、ニカッと悪戯っぽい笑みを浮かべて、書斎の扉にノックを三回。ノックをした右手を広げて、そのまま勢いよく掲げました。
すると――
なんと突然扉に赤い紋章が浮かび、ギギギィ-と勝手に扉が開き始めたのです。俗に言うこれが魔法と言うものなのでしょう。
「うわぁあぁ…… すごい!!!! もしかして封印?! 」
彩は大興奮。おもちゃを買ってもらった子供のように飛び跳ねています。
その横でドヤ顔をキメる兄に、背の低い弟は呆れたようにじっとりとした視線を向けています。お互い相棒には苦労してるんだなぁ……と詩織は少し親近感を覚えました。
内側に開いた扉の中を見てみると、もう二人が知っている埃を被った書斎ではありませんでした。
6畳ほどある部屋のフローリングには金の縁が眩しい赤のカーペット。ボロボロだったはずの本棚は艶を見せ、部屋の中心には木製の社長室を思わせるデスクと同じく木製のロッキングチェア。
後ろの雨とカビで湿って今にも崩れそうな廊下からは、想像もつかないような内装です。
ロッキングチェアに腰掛けているのは、金髪赤眼の若い女性でした。二十代後半くらいでしょうか……二人をしっかりと見据え、口を開きます。
――彼女の第一声は、驚くべきものでした。
「……やぁ、こんにちは。君たちにとっては、初めましてかな」
それは紛れもなく、日本語だったのですから。
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