第7話 夏祭り
会いたかったような。
会いたくなかったような。
あれ以来、初めて、顔を合わせた。
3週間ぶりくらいか。
いや、夏休みということを考えれば、長くはない。
むしろ、他の女子なんて、学校以外で会うこと自体初めてのやつもいた。
「よっ!何食べてんの?」
笑顔に少し、悲しさを混ぜた表情で、ちーちゃんは話かけてくれた。
いや、そう、見えたのは、そうであってほしいと思っていたからだろう。
本当は、以前の笑顔と差異なんてないのだろう。
「カレー!辛くないけど、熱くて食えん笑」
思っていたよりも、普通に話せた。
話せてしまった。
「ホントだ!鼻の下、汗かいてるよ笑」
「マジ?恥ずっ笑 でも、マジめっちゃ熱い笑」
「ねぇー?ちー!さっきあっちにパインあったよね?」
たくやと話していたはるかが、振り返ってちーちゃんに聞いた。
この声を聞いて、今の一瞬だけ、ちーちゃんと2人きりでいられたことに気がついた。
「うん!でも、もう少なかったくない?」
「え、マジ?海斗買いに行こうぜっ!」
「え、おう」
ちーちゃんと目が合った。
「んじゃ、またな!」
「うん、また学校でね!」
本当に一瞬だった。
たぶん、たくやは、
「俺パイン食わな、夏祭り来たって感じしねぇんだよな〜」
みたいなことを言って、それに対して、りゅうが
「いや、普通かき氷とかじゃね?」
みたいに返していた気がする。
でも、俺はその間、あの時、素直な返事ができていたら、今頃2人で来てたのかな?とか考えていた。
カレーはまだ熱い。
たくやとりゅうは、冷やしパインと書かれた旗を目指して走って行った。
2人との距離が離れないように、俺も走った。
パインは残っていた。
「よかった〜」
カレーの反動で、余計に冷たく感じた。
その後は、男子組で花火をして帰った。
もう、この時間には、バスすら通っていない。
クロッキー 久住 海 @SHINGARI
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