第2話 チャリVSバス

「ねぇ、りゅう!あれ見て!」

 りゅうは、まんまとバスを見た。

「おい、ふざけんなっ、俺今2個やったのに〜」

「マジ?やった!残念でした〜」

 あの日以来、登下校中も遊んでいる時も、車が通るたびにナンバープレートを確認していた。

お互いに邪魔することを楽しんでいた。


「あ、クロッキー!はい、俺3つ目〜」

 郵便局の車が横を通り、俺は願い事をした。

「明日、学校休みになりますように〜」

「うざっ!てか、それは、ムリやろ!」

 自転車で、どこまでも行けると思っていたこの頃の行動範囲は広く、お互いの罠に引っかからなければ、1日に何度もお願い事ができる日もあった。

 2人とも本気で信じていた訳じゃないが、3回見たら一応何かしら願っていた。


 学校から帰る時も、遊びから帰る時も、だいたい、りゅうの家に先に着く。だから、帰り道の最後には、いつも1人になる。


 ラスト5分に試合は動く。


 部活の顧問が言っていた言葉と一緒に郵便局の車が過ぎ去って行った。


本日2度目の願い事のチャンスだ。


(今日の夜ご飯は、ハンバーグでお願いします。)


 2回も願い事ができても、そもそも大した望みなんてなかった。


 思春期だからか、自転車で走り回ったからか、家に帰ると野菜炒めを食べ、学校の準備をして、すぐに寝た。

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