戦力外通告?

次にソラの出演が決まったのはその次の月だった。

・ハルカ!

・どうしたの

・また主演決まった!次はデカい劇場だぞ

・本当?すごいじゃん


次はどんな役なのだろう。ボクは、ソラの役作りに振り回されるのが好きだった。


・次はどんな役作りするの?


次からはボクも少し調べて、ソラに提案できるようにしたいな。


・いや、今回はいらない

・え?どうして

・今回の役は難しすぎるんだ、だから1人で集中したい

・そっか


そうだよな、ソラは役者だ。1人で頑張る時だってある。


・いつも協力してくれてるのにごめんな

・ううん、大丈夫

・ハルカと会うと、素で楽しんじゃうんだよな!

・確かに

・だから、役作りナシの時に遊ぼう

・うん

・チケットは渡しに行くから

・うん。頑張って、楽しみにしてる


ボクは馬鹿だ。なんで傷ついているんだろう。


ボクはソラの演技が好きだった。ボクには全てが完璧に見えたし、それでもなお公演を重ねる度に完成度が上がっていくのが気持ちよかった。そしてその役作りに、ソラの演技に、少しだけでも自分が関われていることが誇りに思えた。

なんとなくでしかないけど、ソラはきっと小さな劇場を飛び出して、いつか海外とか、世界中で有名になるんだろうと思う。

だけど、それと同時に、ソラはボクと出会う前から役者だったんだ。生まれた時から今まで、きっとずっとその才能を抱え育てて来たんだ。

だから、そりゃあ、ボクが居なくても役作りはできるし実際、ボクと出会う前はそうしてきたに違いない。いや、ボクの前に、ボクと同じようにソラと一緒にいた人がいたのかもしれない。

……あぁ、駄目だ、考えすぎだ。

ボクはふるふると頭を振り思考を追い出す。ボクはこんなにめんどくさい奴じゃない。ボクはボクに出来ることをしなくては。

最初はこんな男ひとりに、人生を狂わされるとは思ってもいなかったのにな。

そんなぼやきが、涼しくなった空に響く。

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