今度の火曜
ボクとソラはあの夜、連絡先を交換した。緑のアイコンのメッセージアプリで連絡を取ることにした。ボクもソラもあまり友達とメッセージのやりとり、というものを嗜んでこなかったらしく、
・今日はありがとな。追加したぞ
・うん。こちらこそありがとう。
という絵文字も愛想もない無機質な文でしかも最初の挨拶だけでぷっつり会話は途切れてしまった。だけどボクはとっても満たされていたし、多少キツいことがあってもボクには友達がいるんだ、それも役者だぞ、なんて心の中で相手にを威嚇できるようにまでなっていた。
事が動いたのは7月、ちょうどソラとボクが出会ってからひと月とちょっと経った頃だった。
部屋で寝ようとした時、ヴッと短くバイブ音が鳴った。
・おい!ヤバい!どうしよう!
・え。何?何があったの
・とにかくやべえの!来週いつ空いてる?
秒刻みで展開される慣れない会話に焦りつつも起き上がってカレンダーを確認する。
・火曜日なら、空いてるよ
・マジか!わかった!
・また舞台、やるの?
・違う!火曜、原宿駅集合!
・え?なんで?
そこからは既読さえつかない。ホントこいつ、こういうとこだぞ。というか、「!」とか打てたんだな。テンション高かったなぁ。原宿かぁ、意外と行ったことなかったな。なんだかんだふたりで会うのは2回目か。なんて考えていると、どうしようもなくソワソワした。お前は遠足前日の子供か、と自分にツッコみ無理やり布団に体をねじ込んだ。
この前とは違って、火曜までは長く感じられた。とにかくはやく、ソラと話したかった。会いたかった。
原宿ということはユニコーンの服でも着るべきか、いや、さすがに違うだろ、たかが地域にドレスコードがあってたまるか、などとアホらしいことを考えた挙句、悪足掻きだが腕時計を蛍光黄色のものにした。ほかは特にいつもと変わりなくTシャツにジーパン。この間は服なんて気にしなかったのに。と友達がいると外見に気を使うようになるんだと実感した。
平日なのに少し混雑した電車に乗り、原宿駅に着いた。
やっぱり、空気が綺麗じゃないな、と少し暑くなり始めた空を仰いだ。
「ハルカ君おまたせ〜」
少し掠れた高い声に違和感を感じながらも振り向くと、そこにはひとりの女の子…?背も高くガタイもいいそれも年上の…?は…?
「エッ」
……ニコニコ笑顔の、女装をしたソラが立っていた。
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