彼らの生きたあと
ボクたちは居酒屋をあとにして、河川敷に行った。橋の下に引越し会社のダンボールがあって、そこにソラは慣れた様子で布袋を入れた。
「ここは俺が演じた役達の眠る場所なんだ。再演が決まったら、叩き起して、また連れていく。」
「役は、起こされて怒らないの?」
「怒らないよ。こいつらは全員、生きることに執着してるからな。喜んで着いてきてくれるさ。」
「じゃあ、またコバヤシとも会える?」
「ああ。チケットの売れ行き的に、再演は相当難しいだろうけどな。」
ソラは優しくダンボールを撫でる。
「全ての役、全部全部大切だし、感謝してるけど、コバヤシには特に感謝しなくちゃな。」
ソラにならってボクもダンボールを撫でた。
「ハルカと出会わせてくれてありがとう、コバヤシ。お前のおかげで友達ができたよ。」
ボクはなんだか照れくさくて何も言わなかった。言わなかったけど、心の中で、大きな声で言った。コバヤシ、ソラと出会わせてくれてありがとう。ボクは、初めて好きな役者ができたよ。どうやら、友達も、できたみたい。
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