第2話 似た者同士

 その席に彼女は座っていた。

 最初に浮かんできた言葉は・・・

「えっ、移動するの早」

危なく声に出てしまうとこだった。いや、出していた。

 カバンを持ちここまで移動するまでの間になぜ彼女はこんなにもはやく座ることができたのか、不思議だ。

 気持ちを切り替えるように、彼女に自然な笑顔で話しかける

 「紗川さんよろしく」

 「よろしくね。」

と雪乃はほほ笑みながら返した。

 そこから、互いに軽い自己紹介がはじまった。

―――—―――「あらためてよろしくね。黒川君」と彼女は頭を軽く下げる。

 俺の新しい席の隣で。俺の席と一緒にほかの席とは離れた窓側の席で。

 二人の席が他の席から離れているわけは、夏休みの間に行われた耐震工事によって教室に埋め込まれた柱だった。

 彼女の席は前の人との間に柱が少し出っ張っているという理由だろうが、その隣に俺の席がある。そしてなぜか俺の席のまえも一席分あいていた。そして僕たちは最後列のため横に席はない。

 本日二回目の担任が無能だと思った瞬間だった。

 柱のせいで席が詰められないのはわかるが、僕の席は前に詰めてはいけないのだろうか。そんな風に不満を抱いていても決して声には出さない。

 それが俺、黒川一心くろかわいっしんという人物だ。

  これは、完全に後日談になるのだが、担任いわく一人だと可哀想だからだとか。

               ***


 私は人の顔色を伺うのが上手だという自覚がある。なぜ人の顔色を窺うようになってしまったのかというといえば、うまく群れになじまないといけないからだ。私はいつでもどこでも他人にあわせる様に生活してきた。だからこの学校でもそんな風に過ごそうと決めて門をくぐった。


 一通りのことを終え、転校生の義務である質問攻めにあっているときでした。

 彼を見つけたのは。彼が先生と廊下で話していた時に、どこか取り繕った様な表情をしていた。

雪乃は、話しかけてきた女子たちの質問を返しながら「彼も猫を被っているのかな」と 考えていた。

 やがて休み時間が終わり、皆各自の席に戻っていった。彼女たちが帰っていき、一心が席に座った。

私はなぜだか無性に彼と話してみたくなり声を掛けると、 彼は私がいきなり話しかけても笑顔で対応してくれた。それから私と同じ図書委員で今日仕事を教えてくれるらしい。

 今日は初日ということもあり授業はしないで、二学期の行事の一連の流れを担任の先生が話すだけで終わった。

 帰りのホームルームが終わり私は仕事を教えてもらうために彼に声を掛けた。


 彼に図書室に案内してもうとそこは、電気をつけてもどこか薄暗かった。

 「誰もいないですね」

 「まぁ、第二図書室だからね」

 一心はカーテンを開けながら返す。カーテンを開けても日の光はさほど入ってこず薄暗かった。

 「誰も来ないから仕事もないよ」

まだ彼とろくに会話もしてないが今日見てきたどの瞬間の彼よりも今の彼は自然体の表情の気がした。

 気が付くと私はすでに声に出していた。

 なぜだろう。この図書室がどこか懐かしい感じがするからなのだろうか。それとも彼は私と似ている気がしたからだろうか。

 普段なら踏み込まない領域に踏み込んでしまったのは。

 「なんで───」

 彼は驚いた表情をした後すぐにうれしそうな顔になった。

 そして思ったのだ。ああ私と同じ種類の人間だなと。

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