第16話 修行編16 鉱石採取
初心者講習が終わった夜。
突然シイナ様から腕輪に通信が入った。
『アキラ、お前の専用艦はソフトがバグっていたようなので修正することになった。
謎粒子砲の存在が問題になってお前の専用艦の諸元を確認した。
エネルギースロットがマイナスじゃないか。
さっさと修正パッチを導入しろ。
これが実行されなければ各種クエストに参加出来ないぞ。
必ず実行するように』
通信は一方的に切れた。
通信画面には『実行しますか? YES NO』の文字。
各種クエストに参加出来ないとなるとお金を稼ぐことが出来ないってことだよね。
これはYES一択でしょう。
僕は寝ぼけ眼でYESをポチっとした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
翌日。僕の専用艦は武装がほぼ使えなくなっていた。
僕の専用艦はエネルギースロット数がバグっていて、マイナス値を示しても何故か武装が使えていた。
だけど、昨日の最終演習にて謎粒子砲を使ったことで、シイナ様に目をつけられてしまった。
シイナ様に専用艦の諸元をチェックされ、エネルギースロット数のバグを知られてしまったのだ。
その日の夜、早速ソフトウェアパッチでバグは修正されることとなった。
僕はシイナ様から連絡を受け安易にYESを選択。
その結果、使えていた武装が使えなくなったということだ。
おそらくマイナス値になったら使用不能という具合にソフトにより制限が加わったのだろう。
ハード的には使える状態なのに(それも不思議なんだけど)いまいち納得出来ない話だ。
おかげで現在、長砲身5cmレールガン、
つまり後から追加されたミサイル以外の武装が全て使えなくなった。
他にもエネルギースロットを2使っていたS型装備がダウングレードしてエネルギースロット1のC型相当になっている。
戦術兵器統合制御システムなんかは停止してしまっている。
僕は専用艦のアップグレードのための目標を定めた。
現段階の僕の専用艦の装備はあまりにしょぼい。
これじゃ
いや組んでもらえない。
もちろん
僕の専用艦の紙装甲じゃ何度死ぬかわからない。
つまりVPにしろRPにしろ参加するためには専用艦の更なる成長が必要なのだ。
目標は3つ。
艦体を巡洋艦型以上にして速度や防御力を強化すること。
次に武装強化とS型装備の復旧。
そしてこれらを実現するために反応炉を強化する。
この3つだ。
現在の僕の専用艦の諸元は以下。
『AKIRA』
艦種 艦隊旗艦
艦体 全長50m 作業艇型 2腕 **格納庫 (ロック)
主機 熱核反応炉G型(6) 高速推進機G型
兵装 主砲 長砲身5cmレールガン単装1基1門 (使用不可) 通常弾
***粒子ビーム砲単装1基1門 (使用不可)
副砲 15cm粒子ビーム砲単装1基1門 (使用不可)
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 F型標準懸架式2基 最大弾数2
防御 耐ビームコーティング特殊鋼装甲板(盾G型相当)
耐実体弾耐ビーム盾G型 1
停滞フィールド(バリヤー)G型
電子兵装 電脳C(S)型 対艦レーダーC(S)型 広域通信機C(S)型 戦術兵器統合制御システムS型(停止中)
空きエネルギースロット 0
状態 長砲身5cmレールガン使用不能 ***粒子ビーム砲使用不能 15cm粒子ビーム砲使用不能
電脳Sダウングレード 対艦レーダーS型ダウングレード 広域通信機S型ダウングレード 戦術兵器統合制御システムS型停止中
ご覧の通り、武装はミサイルとレーザーだけというお寒い状態だ。
これを回避するためには高性能反応炉を搭載しエネルギースロット数を上げればいいわけだ。
この3つの武装を使えるようにするだけでも熱核反応炉D型(エネルギースロット数3アップ)が必要になる。
各種装備をフルに使用たいなら少なくとも熱核反応炉E型×2は欲しいところだ。
しかし、熱核反応炉E型×2以上となるとサイズも大きくなるため、搭載できる艦のサイズが自ずと決まってくる。
それが巡洋艦型以上ということなのだ。
まずは艦体を巡洋艦型に拡張しよう。
そのためには艦体を購入するか、敵艦を鹵獲して流用するか、構成素材を集めて融合するかという3つの手段が考えられる。
艦体の購入は……無理っぽい。
購入代金を稼ぐ手段が回収しかない僕には何年かかるかわからないぐらい厳しい。
敵艦の鹵獲は却下。死にます。
最後の構成素材を集めて融合ならデブリ回収とほぼ同じ作業なので有望だと思われる。
僕の専用艦もデブリ回収のついでに集めた鉱石や装甲板の屑で20mも大きくなっている。
うん。これだ。
僕は艦体拡張のためにデブリ回収を行うことにした。
武装デブリもついでに集められるかもしれないし一石二鳥だろう。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
とはいえ、撃墜権付きのデブリを集めたのでは実入りも少ないし効率が悪い。
どうにかならないものか。
こんな時はミーナに質問しに行こう。
ステーションの行政区前広場に転移し、行政塔へ向かう。
受付に行きミーナを呼んでもらう。
しばらくするとミーナがやって来た。
「晶羅様にゃ。
小首を傾げ僕の顔を覗いてくる。尻尾がくねくねしている。
(あ、尻尾が「?」に曲がってるw)
「実は艦体拡張のための装甲板や鉱石を回収で手に入れたいんだけど、撃墜権が付いていたら実入りが半分以下になるでしょ?
それを回避するにはどうすればいいのか知りたくてね」
ミーナは少し悩んだような顔をして考えている。
「撃墜権は10日で切れるにゃ。撃墜権の切れたデブリにゃら回収自由にゃ。
でも、撃墜権が切れるまで放置されるデブリは数が少にゃくにゃるにゃ。
フリー回収は実入りという点では微妙にゃ」
「確かに。穴場を見つけられれば儲けが大きくなるけど、それは博打の要素が大きくなるね」
うーん。回収を生業にしている人もいるんだから、そこは厳しいよね。
僕が思案しているとミーナが更なる提案をして来た。
「それにゃら鉱石採取があるにゃ。装甲板の材料を小惑星から採取するといいにゃ」
「それって自由に小惑星を削っていいの?」
「採取登録が必要にゃ。誰かが鉱脈を見つけた小惑星を横取りするのはルール違反にゃ」
「それなら片っ端から採取登録して他人に取られないようにできるんじゃないの?」
自由に採取登録が出来るなら、とりあえず複数の小惑星を自分専用にしようとする人が出ても不思議じゃないよね。
「それは無理にゃ。採取実績が
それと採取登録は有料にゃ。無駄に登録すれば損をするにゃ」
「なるほど。それは試してみる価値があるかも」
僕の専用艦はレーダーやセンサーにS型を搭載しているので、そこらへんの探査は得意中の得意だ。
鉱脈の埋まっている小惑星を見つけて採取しまくれば、艦体を巡洋艦型に拡張するのも夢じゃないだろう。
「採取登録と支払いは通信で出来るにゃ。採掘にはドリルを装備することをお薦めするにゃ」
「そうするよ。とりあえず目ぼしい小惑星の探査とフリー回収を併用して一度行ってくるよ。
ありがとうミーナ」
「どういたしましてにゃ」
僕はミーナにお礼を言うとギルドに向かいフリー回収クエスト(常時クエスト)を受注すると転移ポートを使って専用艦格納庫に転移した。
専用艦のCICに入り電脳と直結するとネットを検索しドリルを注文した。
マッコイ商会が即日発送しかも宇宙空間渡ししてくれるというので即決だ。
この店、なんでもあるな。
◇ ◇ ◇ ◆ ◆
管制塔にフリー回収クエストを伝えアステロイド帯への航路を申請し発進準備。
その前にステーションの前まで進みマッコイ商会の輸送艦とランデブーする。
マッコイ商会の輸送艦が僕の専用艦の右舷に接近すると左舷格納庫を開き複数ある腕でドリルを摘み出した。
僕はそれを艦の右腕で受け取り、そのまま右腕に接続する。
僕のコクピット前にスクリーンが開き、受け取りの確認を要求されたので電子印鑑をポチっとする。
『まいど!』
マッコイ商会の輸送艦の中の人が商店街の兄ちゃんのような挨拶をすると去っていった。
「さあ、僕もフリー回収に向かうか」
メインは鉱石探査なんだけどね。
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