第2話 修行編2 衣食住
白い部屋に残されたのは僕とミーナの2人だけ。
地球に帰れない現状では宇宙人に用意された住居に住むしかない。
最低限の衣食住は保証されるということなので、食事や衣料の提供方法も聞かなければならないだろう。
僕はミーナに説明を求めようと口を開きかけた。
「では
ミーナが空気を読んだのか、いつものことなのか案内を申し出てくれた。
”案内”が”あんにゃい”になっていることは脳内変換してスルーしておこう。
語尾の”にゃ”は異世界ものの標準仕様だ。
ミーナが白い部屋の白い壁に近付いていく。するとドアがシュッと開いた。
そこはプリンスが出入りしていた場所で、内側からはドアが判別出来ない。
二人で廊下に出るとドアがシュッと閉まる。廊下側からは出入口がわかりやすく色分けされている。
「あれ? 文字が読めるぞ?」
僕はドアに書かれた”3”の数字が読めた。
しかし、その数字は地球のものじゃない。
それが”3”だと読めてしまう。
「
そのニャノマシンと腕輪の機能によって帝国語の自動翻訳機能が使えるようににゃっているにゃ。
会話と文字を読むことは不自由がにゃいはずにゃ。さすがに書く方は覚えてもらうしかにゃいにゃ。
腕輪で表示出来る仮想スクリーンは空間に表示されているわけじゃにゃくて、ニャノマシンによって頭の中に表示されているにゃ」
うん。ナノマシンね。なるほど、だから宇宙人と普通に会話が出来ていたのか。
何気にスルーしていたけど、宇宙人が日本語を話していたわけではなかったんだな。
もしかするとミーナの”にゃ”は猫獣人の方言を翻訳した結果なのかも。
それにしても、中と外では随分差があるんだな。
白い部屋はゲストが勝手に出歩かないようにという一応の安全対策なんだろうな。
これは僕一人だとロックされていて出入口だとも気付けない仕組みなのだろう。
所謂隔離いや軟禁部屋か?
まあしょうがない。運営側から見ればセキュリティは大事だし、病原菌対策の検疫も必要だろう。
廊下には同じ出入口がいくつも並んでいることがわかる。
同時に何人か収容出来るようになっているのだろう。
廊下をミーナに連れられて歩いて行くとエレベーターホールに行き着く。
そのまま1Fに降りるとエントランスに出る。
「ここは行政塔にゃ。何かあったら1F受付でミーニャを呼ぶといいにゃ。
では各種ガイダンスを始めるにゃ」
ミーナに連れられて僕は広いエントランスを出て行く。
ブロック構造体が連なった宇宙ステーションかと思っていたら、巨大構造物の中に建物が建っていた。
「ステーションは直径100km高さ20kmの扁平な球形構造にゃ。
1km級の宇宙戦艦を何艦も格納するにはこれくらいにゃいとだめにゃ。
格納庫を横切るのにさえ広くて大変だから移動は転送ポートを使うにゃ。
晶羅様には専用艦格納庫を備えた住居に住んでもらうにゃ。
住居から格納庫までは直接向かうことが出来るにゃ。
だいたいは格納庫の真上が住居になるにゃ」
ステーションは横から見たらまんま葉巻型UFOだろう。
なるほど、アブダクションといいリアル元ネタに遭遇したわけだね。
少し歩くと光の柱が中心に立つ広場に出た。
「ここが転送ポートにゃ。ステーション内の主要施設の前には必ずあるにゃ。
腕輪に行きたい先を告げて光の柱に入れば転送されるにゃ。
施設は行政区、商業区、居住区、格納庫区、ドック区、工業区、生産区、戦闘区、機関区、航法管制区に分かれているにゃ。
戦闘区以降は立ち入り禁止区域にゃ。生産区は一部がバイトに公開されているにゃ。
立入禁止区域への転送は禁止されていてアカウントのレベルによって転送されにゃくにゃっているにゃ。
あと転送先は各区域
では次はギルドに
そう言うとミーナは転送ポートから離れて行く。
え?と思ってついていくとギルドは行政塔の目の前にあった。
「ここがギルドにゃ。正確には
あまり余計にゃ単語を覚えると対外的にポロっと口にしてしまうのでゲーマーギルド略してギルドと呼んでいるにゃ。
ギルドを利用するのは講習後ににゃるにゃ」
ミーナが僕を連れてギルドから広場に戻る。
ミーナが腕輪を操作して資料を確認している。
「では
百区230」
ミーナが住所を告げると僕と手を繋いで引っ張って光の柱に向かう。
光の柱を抜けると、そこは僕に充てがわれた住居の前だった。
ドアには帝国語で大きく【百区230】と書いてあった。
これが住所になるのだろう。
「百区とは100m級以下の格納庫を持つ住居を示しているにゃ。230は連番にゃ。
鍵は腕輪で開くにゃ」
ミーナが僕の腕輪が嵌まった腕をドアに翳す。
ピッと電子音がしてドアがシュッと開いた。
「鍵は腕輪に設定済みにゃ。
此処がこれからの
では、お邪魔するにゃ」
そう言うとミーナが先行して部屋に入って行く。
そこは2LDKの地球型のマンションだった。家具付きだ。
個室2つ、リビング、バス、トイレ、ダイニング、キッチンと見て回ると、キッチンに見慣れない装置が設置されていた。
「これがクックマシンにゃ。最低限の食料は此処から供給されるにゃ。
贅沢したいにゃら稼いだお金でメニューを豪華に出来るにゃ。
商業区に行けば外食も可能にゃ」
うん。転送装置で送られてくる合成食料をイメージしてしまったぞ。
ミーナも最低限の食料と言っているし、これは早くお金を稼いで別メニューにした方が良さそうだ。
食事って何をするにも大事だと思うんだ。
単なるエネルギー補給と考えて味も素っ気もない食事をするようにはなりたくない。
続けてミーナが個室のクローゼットを開ける。
「ここに必要最低限の衣服と下着が入っているにゃ。
定期的な支給品以外は自分で買ってもらうことににゃるにゃ。
ここに置くと翌日には洗濯されて畳まれて戻って来るにゃ」
ミーナが特定の棚を示して言う。
ああ、それで洗濯機置き場や洗濯物を干すランドリースペースが無かったのか。
ある意味未来の洗濯装置なんだろうな。
「そして、ここが格納庫へと続くエレベーターにゃ」
僕の住居最奥には格納庫へと続く直通エレベーターがあった。
ミーナと一緒にエレベーターに乗ると格納庫へと降りる。
そこは格納庫脇の前室へと続くエリアで曝露対策が施してある扉で前室と繋がっていた。
うん。格納庫破損で真空中に曝されるのは勘弁して欲しいから当然だね。
前室への扉を抜けると、そこは格納庫を一望出来る透明な窓を持つ部屋だった。
格納庫は当然空だ。ミーナの説明にあったように全長100mの宇宙艦まで格納可能な広さだ。
「このロッカーにパイロットスーツが入っているにゃ。
これは一応支給品にゃ。御洒落がしたかったら自分でオーダーメイドするにゃ」
そこに入っていたのはアニメでよく見るタイプのパイロットスーツだった。
ただしヘルメットが無く、背中のランドセルの上に丸い膨らみが付いている。
不思議がっている僕を見て、ミーナがそこを指さして説明してくれた。
「そこにヘルメットが入っているにゃ。
空気漏れの気圧低下を感知すると一瞬で頭を覆うようににゃっているにゃ。
右横のボタンを押しながら念じれば任意に被ることも出来るにゃ」
ふーん。よく出来ているんだな。
「衣食住のガイダンスはこれで終了にゃ。
明日9時から初心者講習が始まるので行政塔に集合するにゃ。
専用艦は明日午後に竣工するから期待して待つにゃ。
ミーニャはこれで帰るにゃ」
「ありがとう。これからもよろしくね」
僕は玄関でミーナを見送ると備え付けのソファーに座り寛いだ。
ステーション時間的にはもう夜だ。
いや眠っていた時間があるからどうなんだろう?
午前中に退学になって家に帰って、アブダクションされて此処にいる。
腹の虫の感覚的には日本時間と同じように感じる。
とりあえず夕食でも用意しよう。
僕はクックマシンを作動させて標準糧食を取り出した。
これしか選択出来なかったから操作は簡単だった。
味は……。早くお金を稼ごう。
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