第41話 砂漠地帯

 ジェイク達一行は砂漠地帯に入って2日が経過しそうになっている。

 

 魔法の屋敷はジェイクがいる場所だけ限定ではなく、ギルドメンバーが行った事のある場所ならどこにでも行ける。そう考えるとジェイクだけが頑張る必要もなく、仲間が頑張る必要も出てくる。



 1つだけ覚えておくのはジェイクが本体だという事だ。

 


「次は俺様が魔法の屋敷に行く番だよな」


 ドワーフ族のミナラクが叫ぶ。

 彼は相当参っているらしく呼吸を荒くしながら空気を吸っていた。

 その場にいる全員が限界の状態になっている。


 ドワーフのミナラクと貴族階級のリックイと入れ替わる。

 リックイは涼しい顔をしながら魔法の屋敷から出てくると、その表情は一瞬にして崩壊する。



「あちいいいいいい」

「リックイ、もう少しがんばれ、君が魔法の屋敷でくつろいでいた分、皆は歩いていたのだぞ」

「それは分かってるけど、その為に1時間ごとの交代だろ」

「その通りだ」


 人間族のジェイクは汗を垂れ流している。

 獣人族のネイリと元夜盗のレイデンは呼吸を整えながら、水色のコートを握りしめている。

 着用している水色のコートから涼しい冷風魔法が最高だ。



 それはジェイクも同じ事だった。

 次がジェイクの休憩の番である。魔法の屋敷を作り出している本体が歩かなくても、仲間の行った事がある場所が登録されるので、本体がいなくとも仲間がいればなんとかなる。



 しかし場合と状況によっては変わって来る可能性があった。


 あまり人前では使用できない魔法だ。

 なぜなら周りから見たら突如人が消える所を見せられるのだから。

 何か禁術を使っているのかと思われるだろうし、テレポート魔法を極めた達人だと思われて、色々と注文してくる奴等がいる可能性だってある。



 そう考えると、この魔法の屋敷は諸刃の剣だ。

 ひたすら歩き続ける。砂漠とはそういうものだった。

 ゴールがないかのような景色、永遠の砂地の地平線。

 終わる事のない行軍、汗がだらだらと流れて、これは死ぬのではないかと思う。


 

 しかし体は動き続ける。

 どこにそのような力が隠されていたのかと思う程。

 ついにジェイクの休憩の番がやってきた。


 

 獣人族のネイリはこちらを見てこくりと頷く。

 元夜盗のレイデンは不器用な顔をしつつ。

 貴族のリックイはもうぜいぜいと言っている。

 相当参っているみたいだ。



 魔法の屋敷を出現させると。

 ちなみにギルドメンバーなら誰でも出現させる事が出来る。

 とはいえ扉と通路と階段を通る必要があるが。


  

 先程も述べたが、周りからみたら透明な壁に吸い込まれるように見える。



 中からドワーフ族のミナラクがほんわりとした顔で出て着た。

 彼はこちらを見て頷き。



「だいぶ回復したよ、ありがとうジェイク、君がいて最高だ」


「それは良かった。出来れば早く交代したいのだが」


「それもそうだね、では」


 ミナラクが出て行くと、彼は水色のコートを羽織った。

 ジェイクは魔法の屋敷のドアを開いた。まず通路が続き次に階段を上ると、そこには結構な広さの魔法の屋敷があった。



 ここには10人以上の人々が暮らせる大きさなのだ。

 部屋も沢山ある。


 ジェイクは今から1時間後にまた歩きださないといけない。

 なので倉庫にしまってある飲み物を持ってくると次から次へと飲み干した。

 それは何かの果物ジュースで、口当たりがよくあっという間に飲み干してしまう。


 まるでアル中のごとく飲み干すので在庫が心配だが。

 ジェイクは倉庫にある備蓄を見て爆笑していた。


 ほぼ無限大に存在しているし、アイテムボックスにも多量にしまってある。

 もちろん飲み物とはいえ色々な種類ではあるが。


 ソファーに横になって仮眠をとると。

 あっという間に時間になり、べちょべちょのネイリが魔法の屋敷を呼び出していた。


 はっとなって起きたジェイクは着替えを済ませると、水色のコートを着用して、扉が開かれた。

 そこには死にかけているネイリがいて彼女はジェイクの肩に手を置くとどたどたと走って階段を上った。


 ジェイクは扉を開ける。

 そこには相変わらず砂漠が永遠と広がっていた。

 これでも道に迷っていないだけマシだろう。


 また行軍が始まった。

 もはやここまで来ると誰も話す気力すらなかった。

 ひたすら永遠と続く道程を進み続けている。

 いや、道程と言える道すらないのだが。

 太陽と星と月の位置で道を決める。

 それが出来るのがリックイとネイリであった。

 リックイは英才教育とか呟いていたが、よき教育を受けたそうだ。

 ネイリは独学のようだ。ネイリ学長と呼ばれていたのを思いだした。



 先の見えない旅は冒険に入るだろうか?

 きっと冒険の部類に入るのだろう。

 決められた道を進むより決められていない道を進む方がとても難しい。


 

 しかしこの砂漠には決められた道は存在しない。

 あるのは星と太陽と月だけ。

 

 それでもジェイク達は先代の人々が通ってきた道を歩いているのかもしれない。

 答えのない自問自答程無意味なものはない。


 その時だった。土煙が見えて来た。


 どうやらジェイク達が見ていた地平線は蜃気楼のようなもので幻覚が作られていたようだ。

 その地平線の蜃気楼が無くなると巨大な王国が見えて来た。


 そこには巨大な大樹が存在している。

 なんという大樹なのか気になるが、ジェイク達はサルンティス王国についてしっかり勉強していない事を思い出す。


 その場にいる人に聞いていけばいいか図書館で調べるというのも手だ。

 なぜ蜃気楼が発生していたかは分からない。というより仕組みをちゃんと理解していない。

 この砂漠の熱さは尋常じゃないものだ。

 肌を露出するなり1分でこんがりと焼かれる。

 なんと恐ろしい日光なのかと。これでは光合成ではなく燃やされるだろう。


 しかしサボテンみたいな奴は全然平気そうに砂漠の湿った土の部分で生えていた。


 あともう少しの距離に見えて辿り着くにはとても長い距離のようだ。

 太陽が沈んでいくと、次は凍える程の寒さとなる。

【時計の針】ギルドでは砂漠地帯で夜中移動はしないと決めた。

 下手したら死ぬだろう。

 普通の冒険者達がどれだけ凄いかを理解し始めた。


 なのでメンバーは魔法の屋敷にて朝が来るまで滞在する事となった。

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