第37話 パンドラの箱
ジャイガーは1つの箱を持っていた。
その箱をこちらに見せると。
「おめーらの目的がこれなら、これを破壊するぞ、それでもいいのか」
ジャイガーが叫ぶ中、サンダーライトニング魔王とエンジェルサイエンスサディスト魔王に、ダウンしていたがゆっくりと立ち上がるソードエンペラーブレイク魔王がけたけたと笑っていた。
ジェイクは何か嫌な予感がしつつも、3体の魔王はゴーレムジェイクをどうでもいい存在のように通り過ぎて行く。
3体は猛スピードで走り出したのだ。
「違う、ジャイガー、それは破壊して成立するんだ」
「ど、どう言う事だ」
ジャイガーは箱を持って逃げようとしたが、それが出来ないと思うと。
遠くの草原に投げた。
コロコロと転がる中、3体の魔王は餌をちらつかせられた犬のように向かって行く。
その時3体の魔王が爆発する音が響き渡った。
黒い煙が噴出する中で、教会にいる人々は絶望の眼差しでそれを見ていた。
ジャイガーがこちらに合流すると、後ろから獣人族のネイリとドワーフ族のミナラクと貴族のリックイと元夜盗で女性のレイデンが到着した。
その場にいる全員が空気を読んだかのように静まり返っていた。
次の瞬間、死体を貪るかのようにバリバリという恐ろしい音が響いた。
ジェイク達は真っ青になりながら、そいつが表れた。
そいつはごく普通の少年であった。
黒い髪の毛をしており、黒いマントを羽織っている。
だが見た目は人間のそれだ。
1つだけ違うとしたら黒い髪の毛の少しだけが白い髪の毛になっていた。
少年はこちらを見ると。頭を下げた。
「いや~今何時の時代なの?」
彼の右手と左手には先程の魔王達の体の部分があった。
それを美味しそうに食べているので、その場が凍り付いている。
「いつと言うと?」
「ここはモゼス王国なのか? 我はちょっと旅に出るとしよう」
その場の全員が止める術がなかった。
圧倒的な力を見せつけられたのだ。
ジェイクは鑑定を発動していた。
【測定不明】
というものが表示された。
それは魔王より遥かに強いという事を意味している。
なぜパンドラの箱に彼が封印されたのか、確かモゼス王国の人々が魔王達を滅ぼしたはず。その為に魔王達の力の何かがこのパンドラの箱に封印されていると思ってきた。
「いかん、奴を逃がすな」
そう叫んだのは教会の司教だった。
彼は杖を振り回し、光魔法を発動させた。
光の渦が少年に激突すると。
少年は小指だけでそれを防いで見せた。
司教はがっくりと足を折り曲げると地面に両足を付いた。
「我に逆らうとは言い度胸だ」
右手に出現したのは巨大なマグマの塊であった。
あんな魔法が司教ごと教会に炸裂したら中にいる人々は即死だろう。
ジェイクは走り出した。
全身を土で覆わせてゴーレムの体をさらに大きくさせる。
辿り着いた場所でマグマの塊が落下してくる。
ジェイクはゴーレムの両手でそれを防ぎ続ける。
全身が燃え上がる中、少年はにやりと笑って。
「じゃあね、我は色々と忙しいので、軍を設立する必要があるし、さぁてと、戦争しないとなぁ、その為にはぶらり旅行ってね」
そう言いながらそこから少年は消失した。
それだけのスピードと言う事なのだろう。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」
マグマの塊と戦っているのはゴーレムジェイクであった。
歯を食いしばって必死に耐えながら。ちょっとずつ両足が地面にめり込んでいく。
「助太刀するぞ」
そこに現れたのはジャイガーであった。
ジャイガーは2本の槍に魔法付与を与えると、その2本でマグマを押さえる。
ネイリ、ミナラク、リックイ、レイデンも助けに入る。
【うあああああああああああああ】
仲間達と協力して。
マグマの塊は蒸発していくかのように消滅していった。
その場の全員がマグマの熱気で体が汗でぐちゃぐちゃになっている。
ジャイガーもははと笑っていた。
「あんな化け物を封印していたとは、本当に申し訳ない、俺のせいで」
「気にするなジャイガー、あれが当たり前の反応だ。誰だってあの箱の秘密を知らない。さて司教さん、説明して頂こうかな」
司教さんはこくりと頷いた。
このモゼス町がようやく魔王達の侵略から平和になった時だった。
人々はそれぞれの生活を始め。教会に避難していた人々もそれぞれの家に帰って行った。
冒険者達も戦闘につぐ戦闘でへとへとになっており、今日は冒険者ギルドではクエスト受給を休止したりしたようだ。
司教が説明を始める時になると、主要メンバーが集まってきた。
場所は教会の地下休憩所だ。
円卓広場にて左から司教にジャイガーにジェイクにネイリにミナラクにリックイにレイデンとなった。
「では説明しようと思うのじゃが、まずはモゼス町がモゼス王国で会った頃の話じゃ」
全員が頷くと。
「モゼス王国は魔王と対等に戦える人々を集めた国じゃ、当時魔王は増え続けた。それを封印するか倒すかをしたのが勇者達と呼ばれる人々じゃ」
全員がさらに頷く。
「最強の魔王ではなく悪魔が生まれたのはその時だ。死んだ魔王がある少年と契約した。その結果その少年は悪魔になった。悪魔になった少年は魔王を操る事も出来るし食べて吸収する事も出来る。少年は寿命を捧げた。あやつは死ぬ事がない、だからパンドラの箱に封印したという事じゃ」
全員が頷く。
「あやつは、そうだな、人間の闇を知っている。国が別な国を亡ぼすという事がどういう事か。女性は乱暴され、男性は奴隷にされ、子供は生贄に捧げられる。そんな地獄を見た彼は一体何を目指しているのか? それが分かればな」
ごくりと全員が生唾を飲み込んだ。
確かに今の時代も戦争は起きている。
だが昔よりむごい戦争は無くなっているはず。
それを見た悪魔はどうなるのだろうか?
ジェイクはそれが怖かった。
「わしからは以上じゃ、お主達はこの知識を皆に伝授してあげて欲しい。悪魔が戦争を引き起こす前に止める事が出来るのは冒険者ぐらいじゃ」
「それってさ、そいつが敵って可能性がある訳じゃないだろ?」
そう呟いたのはジェイクであった。
「仲良くなれるんじゃないかな、何か分かり合える何かがあれば」
「そのようなのは無駄じゃ、我ら教会は悪魔の力を認める訳にはいかぬ」
「それはあんたの考えだろ」
そう言ったのはミナラクであった。
「そうやって色々な種族を差別してきただろう、もしかしたら悪魔のあいつこそが正しいんじゃ」
ミナラクが最後まで言い切ると。
「ええい、もう出て行け」
どうやら司教は信用出来ないようだ。
ジェイク達はその足で冒険者ギルドにやって着ていた。
冒険者ギルドでは沢山の冒険者がひっきりなしに罵倒と指示が飛び交っていた。
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