第36話 3体の魔王

 ジェイクと影ジェイクがそこに到達した時、1人の男が必死になって魔王と戦っていた。 

 鑑定するとS級冒険者のジャイガーだという事が分かった。

 ジャイガーは2本の槍を器用に振り回して、3体の魔王と戦闘を繰り広げていた。


 ジェイクと影ジェイクは影魔法を解除した。

 ジェイクの体に影ジェイクが入る事により分離していたレベルも元に戻った。

 今は1200となった。虫の魔王と動物の魔王と水の魔王を討伐した事により、100レベル分の経験値が入っていたようだ。そのおかげで上昇したのだと思われる。



 ネイリとミナラクとリックイとレイデンはこちらに向かっているが。

 ジェイクと影ジェイクの移動スピードがとても速くて教会に一足先に辿り着いたという訳だ。



 3体の魔王を鑑定する事にした。



【サンダーライトニング魔王:SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS】

【ソードエンペラーブレイク魔王:SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS】

【エンジェルサイエンスサディスト魔王:SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS】



 サンダーライトニング魔王は雷のプラズマの姿をしていた。

 まるでゴーストタイプのモンスターのようにふわりと宙に浮かんでいる。

 体を覆うサンダープラズマは触れたらやばそうだ。


 ソードエンペラーブレイク魔王は全身から剣が突き出している。 

 頭には無数の剣が突き出しており、右手と左手には剣を握りしめている。

 瞳は漆黒に染まっており、睨んだ相手をそれだけで殺してしまいそうな眼力であった。


 エンジェルサイエンスサディスト魔王は背中から白い天使のような翼を生やしている。

 右と左の翼で上と下を向いている。

 まるで天界の天使と地獄の悪魔を連想させる。

 右手には小さな白い羽のついた翼の杖を握りしめている。

 左手には羽のシールドが展開されている。



 S級冒険者のジャイガーは2本の槍を構えている。

 その後ろには教会がある。


 そこには沢山の避難民がいるのだろう、ジャイガーは一歩も退く事は無かった。

 3体の魔王が無表情でジャイガーに何度も攻撃を浴びせてきたのであろう。


 しかし今はジェイクがやってきた。

 影のジェイクと融合する事でレベルが1200になっているのだから。



「ジャイガーさん、攻撃は僕がするので、あなたは守りに専念してください」


「それは、助かるがC級の君達では歯が立たぬのではないか? 確かに最近の君達の活躍ぶりは聞いているが」


「ならその眼でしっかりと見るんだな」


 

 ジェイクは歩き出す。

 一歩また一歩とリズムを刻むように、しっかりと大地を踏みしめて。


 サンダーライトニング魔王とソードエンペラーブレイク魔王がこちらを振り向いた。

 エンジェルサイエンスサディスト魔王はジャイガーとこちらを観察しながら、どうしようかと見計らっているようだ。



 ジェイクは【武器変換】スキルS級を発動させる。

 次の瞬間には右手には【土民の杖】、左手には【爆滅の錨斧】を両手に出現させる。

【斧術】S級と【杖術】S級が自動的に発動されると。その2本の武器が扱いやすくなる。


 土魔法を発動させる。

 土民の杖は魔法攻撃に適している。

 何より土系の魔法にはさらなる付与が期待出来る。



 地面から盛り上がって来る土。

 それはよーく見たら土に魔力を与えた特殊な土だと分かる。

 それは土民の杖から流れる魔力であった。


  

 魔王達はその手品のような物に驚いてこちらを凝視していた。

 ジャイガーでさえ何が起きるのかと興味深く見ている。


 体を覆う特殊な土たち。

 それは魂の土と呼ばれるものであった。

 土民の杖とは土に魂を与える事も出来る。それが沢山ある1つの力なのだ。


 

 土が体を覆いつくすと、そこには土のゴーレムが誕生していた。

 土のゴーレムの右手には爆滅の錨斧が握られている。

 左手には何も握られておらず。土民の杖は頭から角のように突き出している。


 

 人間と土の融合は土ゴーレムの誕生となった。

 土はまるで蟻のように蠢く。それは魂が与えられており、何よりゴーレムを作らねばと瞬間的に思考しているのだ。



 すると突然左手に現れたのは土のシールドであった。

 土達は学習していた。

 本体を守る為にはどうしたらいいのか? それは土の盾を作る事が大事だという事。

 主人であるジェイクの知識から応用したのだろう。


 そのゴーレムは1秒事に進化しているのだから。



 先程から様子を見ていたエンジェルサイエンスサディスト魔王はジャイガーからターゲットをこちらに変更した。

 サンダーライトニング魔王はこちらに向かってふわりふわりとやってくる。

 まるで風に飛ばされているようだった。

 しかし今は無風となっている。



 その後ろからは二足歩行の全身から剣が突き出ている化物が走り出した。

 こちらは地面に足を踏みだした疾風の如くのスピードで走って来る。

 その後ろをエンジェルサイエンスサディストが天使の弓矢で攻撃を仕掛けてくる。


 

 矢はこちらに真っ直ぐに飛翔してくる。まるで鳥のように翼を風で運ばせるように飛んできた。


 矢は胸に突き立った。

 頑丈な魂の土により弾かれた矢はそこで爆発した。

 その爆発は光の輝きそのものであり。

 ジェイクは瞳を瞑った。


 次の瞬間。

 戦闘は移り変わる。



 サンダーライトニング魔王は右手と左手に雷を集め出し、回転を続ける。

 風とか静電気を集める要領で雷を集めて行く。

 それをソードエンペラーブレイク魔王が全身の剣に付与させる。


 全身を雷に包まれた事によりソードエンペラーブレイク魔王は超人的なスピードを発揮する。


 次の瞬間にはジェイクゴーレムのすぐ側に雷の如く飛来した。


 ジェイクは目をかっと開いた時には手遅れで、胸を雷で両断された。

 

 しかし土には雷は効かなかった模様。それでも圧倒的なパワーにゴーレムの胸が両断される。

 そこにはジェイクの生身の体があった。



 ソードエンペラーブレイク魔王は右手と左手に長大なる剣ではなく魔剣を取り出した。


 

 奴はこちらの顔を見て、にやりと笑い、右手と左手を飛来させる。

 右手と左手には魔剣が1本ずつ握られている。



 それで全てが終わる。



 そう魔王達は思ったのだろう。



 次の瞬間。地面が盛り上がり、ソードエンペラーブレイク魔王の腹を土の拳が穿った。


 奴は口から血反吐を吐きだすと。魔剣を振り上げる力すらなくなり、真上に飛びあがった。



 ソードエンペラーブレイク魔王が地面に落下すると。



 その場が静まり返り。

 その静かな間を突き破ったのは。



 ジャイガーだった。





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