第35話 影のジェイク

 ジェイクの影がそこに到達した時、貴族A級冒険者でジェイクの弟子であるリックイと元夜盗であり女性のレイデンが1体の水のような魔王とバトルを繰り広げていた。

 

 

 水のような魔王を鑑定してみると。


【スライムウォーターセルフ魔王SSSSSSSSSSSSSSSSSSSS】



 もしかしたら魔王の中で弱い部類に入るのではないだろうかと思った影ジェイクは、リックイとレイデンの近くに走って向かうと。


「2人で陽動してくれこちらで止めを刺す」


「って真っ黒い師匠だ」

「まじか、ついに師匠は闇の使い手に」



「違うわい、いいから信じろ」


「「承知」」



 2人が頷くと、影ジェイクはスライムの死角に到達する。

 巨大な人の形をしたスライムウォーターセルフの体の中には目玉が存在する。

 その目玉の死角にやってきたのが影ジェイクだ。



 影ジェイクは本体ジェイクの知略も入っている為、結構賢かったりする。

 炎魔法S級を発動させた。


 現在影ジェイクには武器が握られていない、必要があれば武器変換S級で呼び出せばよいのだ。

 しかしスライムウォーターセルフがスライムの特性を持っているのなら、どのような打撃どのような斬撃どのような刺突では倒せない問う事だ。


 

 これが小さなスライムであれば、ごり押しで剣術で倒す事も出来るであろう。

 しかし眼の前にいるのは5メートルくらいの人形を模したスライムなのだ。


  

【メテオブレイクツーオメガ】


 

 それを解き放った時、右手と左手から沢山のメテオが発生する。 

 そのメテオは隕石のような形をしており、炎によって獄炎に燃えている。

 それがスライムの体に激突する勢いで衝突すると。

 スライムの体が次から次へと蒸発してゆく。

 右手と左手から無限かと思えるメテオは、唐突に終わった。



 右手と左手から全てを出し切ったというように白い煙が煙幕のように変化していく。


 

 何かが眼の前で動いた。

 それは本当に小さい何かであった。


 

「リックイ、レイデン、そっちに行ったぞ」


「承知しました」


「きも」



 地面を転がり歩いているのは小さな目玉であった。

 その目玉は逃げ続けている。

 まるで宿るべきモンスターを探しているかのように。


 まさか人間の体に入る事が出来るのか?

 しかし、目玉は人間が近くに居ようとその体に入ろうとしない。

 つまり人間には寄生出来ないという事だろう。


 

 その小さな魔王はモンスターにでもなく人間にでもなく大きな岩に寄生してしまったのだ。

 岩がどんどんと分解され、巨大な人の形に変化していく。

 大きさは10メートルは超えているだろう。

 まるでゴーレムだと影ジェイクは思った。



「人間共! よくも仲の良いスライムちゃんを殺したな」


「それはお前が宿っていたからだろう魔王」


「うるさい、バカ者めええええええ」



 大きな振動を発生させる足踏みをすると巨体がこちらに向かって走り出す。

 地面を揺らしながら来る姿はもはやゴーレムそのものだ。



「師匠どうしますか?」


「リックイは強化ブーストS級と絶壁の鎧S級で、レイデンは風纏いS級、風付与飛行S級、強奪C級を頼む。出来れば強奪で相手の核を倒してくれ」


「はい」

「うん」



 リックイが全身に強化ブーストを発動させる。そして絶壁の鎧も発動させ完璧な攻撃力と防御力が伴う。次にレイデンが風纏いを発動させ、周囲を風纏いにより守る。風付与飛行で空高く舞い上がり。強奪を発動させるタイミングを見計らう。



 影ジェイクはスペルマスターS級を発動させる。

 これは魔法を創作する事が出来るのと分解させる事も出来る。

 今回これを発動させたのは、炎魔法S級と風魔法S級を融合させる為である。


 巨大なゴーレムがリックイに激突するとリックイの力がブーストされているので、圧倒的なパワーでもって押し返す。しかし若干押され気味になっているのはさすがは魔王と言った所だ。


 次に動いたのは炎魔法と風魔法を融合した。


【ファイアストーム】を解き放つ。


 炎の竜巻が岩のゴーレムに衝突すると。

 やすりのようにゴーレムの岩の肌が削られていく。

 次の瞬間には体がばらばらになっていくのだが。



「見つけたぞ」



 そう叫んだのはレイデンであった。


 レイデンは空を飛翔しながら体を風纏いで岩の破片から体を守り。

 眼の前に浮いている魔王を掴むのではなく、風で包み込んだ。

 そのままレイデンは風纏いを圧迫して魔王を消滅させた。



 影ジェイクとリックイとレイデンはほっと深呼吸をすると。

 3人で笑い合った。


【おめでとうございます。水の魔王を討伐しました】


 

 そのアナウンスみたいな声を聞きながら、リックイとレイデンは疲れ果てたのか身動きが取れなくなっていた。



「すげー筋肉痛が」

「師匠、やばいで」


「2人とも休憩していてくれ、僕は……」



 何かを発言しようとして小さな爆発が轟いた。

 確かあちらの方角は教会があり、沢山の人々が避難している場所だったはず。

 影ジェイクは考える。

 魔王達はこのモゼス町の事をモゼス王国と呼んでいた。

 モゼス町のどこかにあるとされるパンドラの箱を魔王達は探している。


 かつてモゼス王国に魔王達は滅ぼされ封印されてしまったと。

 

 恐らくその力がパンドラの箱にある可能性がある。

 それがどれだけ恐ろしいものなのか予想がつかないが。



「僕は教会の方にいくよ」



「了解しました。あそこには沢山の人々がいるのです。お願いします」

「リックイにしては珍しいわね」



 レイデンがからかうと。



「師匠と出会って人の大切さを学んだ。そんな感じです」

「そうか、それは本体に言ってあげてくれ」

「それとあちらにはS級の冒険者が1人向かっているはずです」

「彼はジャイガーという男性ですよ、結構イケメンです」



 2人は横になりながら笑っていた。


 2人が笑っている姿を見た影ジェイクは移動スピード上昇により神業の如くそこから消失した。



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