第33話 魔王増殖中

 その拳1つだけでも遥かなるエネルギーとパワーを秘めていた。

 ジェイクは爆砲で魔王ブレゼゼモスを吹き飛ばす事に成功した。

 奴は木々をなぎ倒して吹き飛ばされたにも関わらず。

 木々をなぎ倒してこちらに一直線にやってきた。



 黒い蝶のような羽でやってくると、至近距離からこちらの顔面に向かって殴り飛ばした。

 その攻撃はさすがに早すぎるせいか、ジェイクには一切避けられる術がなかった。



 しかしジェイクは咄嗟にスキルを発動していた。


 スキル【絶壁の鎧】S級を発動させる事で9倍の防御力を得る事が出来る。

 スキル【打撃耐性】S級は常時発動しているので、耐性がつく。



 顔面ばかりを狙う拳。

 それはこのブレゼゼモスが顔にコンプレックスを抱いている可能性あるのだろうか?

 ジェイクは殴られながら考えていた。



 ブレゼゼモスがため息をついて拳を停止した。

 奴は荒い呼吸を吸っている。

 魔王がこちらに殴りかかった回数。1億2千4百万回である。

 それをジェイクはひたすら顔だけでガードしていくという事をした。


 もちろん鼻血も青痣も出来ている訳ではない。

 ジェイクは鼻くそをほじりながら、待っていたのだ。

 奴が攻撃を終えるのを。


 ざっと5分。



「僕はブレゼゼモス魔王の攻撃が終わるまで5分も待ってあげた。次はこっちの番だぜ」

「それはダメだ。次もこっちの番だぜ」


「よくばるんじゃねええええ」

「そっちこそおおお」

「それはこっちのセリフだああああ」

「いいか攻撃した方が勝ちだ」

「てめーこちらに攻撃効かせてねーだろうが」

「ふ、お前の頭とほほ骨が硬かっただけだ。この骨男が」


「それはありがとう」

「ほめてねーよ」



 魔王ブレゼゼモスとジェイクは睨み続ける訳にもいかず。

 また相手の攻撃準備が整うのを待っている訳にもいかず。


 

 すると魔王ブレゼゼモスは羽を広げると。空高く舞い上がった。

 そのまま雲の上に行くのを見守っている程ジェイクは優しくはない。


 彼はスキル【竜の翼】を発動させる。

 背中に竜の翼が生える。それは衣服を突き破らない光の翼であった。

 ちゃんと形は竜の翼そのものだ。



 ジェイクは空を飛翔しながら、辺りを見渡した。


 ブレゼゼモスは雲の上にいた。 

 そこに到達すると、奴はこちらを見て笑った。



「お前も空を飛べるようだな、なら空でのバトルと行こう。そして気付いたか?」


「ああ、嫌でも気づくさ」



 辺りの村や町やら国から沢山の煙が上がっている。 

 それは戦争という生優しい物ではない。

 戦争なら一部の地区またはある程度の場所が決まる。

 しかし今回の出来事は、あらゆる村と町と国が犠牲になっている。

 そしてそれを引き起こしている音はかつてモゼス王国が封印したとされる魔王達。



 ちなみにジェイクはモゼス王国の事を何一つ知りません。


【移動スピード上昇】S級を発動させる。もはや猶予はない、片っ端から魔王を倒していくのみ。

 それが出来るのがこの自分の役目。


【武器変換】S級を発動させると。【神食いの弓】を取り出した。

 


 弓を構える。

 矢は無限に召喚される。


 敵はブレゼゼモス魔王であり、恐らく奴は矢如きに自分は捕らえる事が出来ないと思っている。


 だがそれは違うのだよ、この神食いの弓はどんな素人でも最強な弓矢となる。

 さらに弓術がS級となっている。



 矢は一度に5本もつがえる。

 ごく普通に考えるとそれは不可能だとされるだろう。

 しかしこの弓の力で器用になっているジェイク、さらに弓術のお陰でさらなる境地に達する。



「くひひ、そんな攻撃など弾いてやる、いや避ける必要もない」


「そうかい」



 どうやらブレゼゼモスは矢を掴んでやろうとしているようだ。

 呼吸を整える。空気を整える。肺を整える。意識を整える。

 出来上がった瞬間、そこにラインが見える。

 それはジェイクにしか見えないラインだ。



 スキルがあるからとかではない、これはジェイクの力、いやジェイクの本質そのものであった。

 そのラインは全てを指し示す。


 解き放たれた矢は爆走するネズミのごとく発射される。


 1本の矢を掴もうとするブレゼゼモスはその1本を掴んだ。

 しかし矢ではなく衝撃そのものがブレゼゼモス魔王に到達した。

 奴は後ろに弾き飛ばされる。

 空中に飛ばされながら、2本目と3本目が右腕と左腕を貫通する。

 さらに2本が右足と左足を貫通する。



 ちなみにハエだった頃のあいつには3本の腕がなくなっていたが。

 蛹から羽化する事で人間の両手両足になっていた。



 そのブレゼゼモス魔王は空中で回転しながら落下を辿る。

 その先を計算していたかのようにジェイクは爆発噴射した。



【武器変換】S級を発動させると。竜眼剣を取り出す。

  

 ブレゼゼモスが落下していくスピードは普通では考えられないスピードであった。

 しかし向かっている先はモゼス町であった。

 これは計算しての事でもある。



 恐らく四方にいる魔王達に目的はモゼス町なのだから。

 ここから離れるのは得策ではないとジェイクは判断した。


 ブレゼゼモスは町の真ん中に激突した時。

 それに向かって鋭い竜眼剣を突き刺した。

 それは一直線に魔王の心臓を貫いていた。


【おめでとうございます。虫の魔王を討伐しました】


 魔王は悲鳴も咆哮も発する事が出来ず。口から緑色の吐血を吐いた。

 すると魔王の体は風に吹き飛ばされるかのようになくなった。

 頭がくらっとした。その時スキルポイントに異変が生じたと悟った。


 なんとスキルポイントは10億までストックが出来るようになった。

 さらに現在10億のスキルポイントがたまっている。

 これには寒気を覚える。


 レベルもスキルも武具もスキルポイントを使用して強く出来たり習得したり出来る。

 スキルは習得可能リストに登録されないといけないが。



 それでもジェイクは心が震えていた。


 

 しかしモゼス町には沢山の人々が何事かと出ている。


 そしてジェイクも何が起きているのかを理解する為にスキルを発動した。


【鷹の目】S級を発動させる。

 

 モゼス町の全体を掴む事に成功する。


 まずはリックイとレイデンは1体の魔王とバトルを繰り広げている。


 その近くではネイリとミナラクが1体の魔王とバトルを繰り広げている。



 冒険者達は雑魚モンスターが攻めてくるのでそれに相対しており。

 

 

 数名の高ランクの冒険者が時たま4人を助けたりしている。



 ジェイクはどちらを助けに行こうかと考えた。


 しかし考える事を辞めた。



「僕は傲慢なんだ。全てを助けてやる」



 その時に発動したジェイクのスキルは【神領域】だ。さらに【影魔法】も発動させる準備をしていた。

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