第30話 最強の漢
冒険者ギルドの扉の向こうには沢山の人々がいた。
正確に分けると貴族が100名右側に集まり、夜盗が100名左側に集まっている。
右側の貴族達をまとめているのが、リックイと呼ばれる貴族でA級冒険者だ。
一方で左側の夜盗達をまとめているのが、レイデンと呼ばれる元夜盗であった。
「おい、てめー今日はぼっこぼっこにしてやるからなぁ」
「つーかあのドワーフはでねーのかよ」
「安心しろミナラクの分も僕が相手をしよう」
貴族達はこちらを見てにやにやといやらしい笑顔を見せる。
夜盗達もまさか貴族と一時同盟を結ぶとは思わなかったらしい。
リックイとレイデンは明らかなる自己満足の為に戦っている事が分かる。
なぜこんなやつらとラビット族のチャイニーはいたのだろうか?
試験員として仕方なく同行したとも考えられるが。
「者ども、貴族の優雅さと謙虚さをこの馬鹿少年に見せてやれ」
「野郎ども、こいつに大人の女の怖さってやつを教育してやれええ」
2つの勢力がこちらに突撃してくる。
周りを見ると、結構沢山の人々が面白おかしそうに見ている。
どうやらこういう乱闘騒ぎはよくある事のようだ。
しかし相手が200でこちら1というのはないだろうが。
「では僕はこれを使わせてもらおうか」
懐から取り出したのは【最強の薬】と呼ばれる錬金して造った魔法薬のポーションみたいな奴だ。
ジェイクはそれをぐびぐびと飲み干す。飲み終える頃になると、敵は四方を取り囲んでいる。
【手加減】を発動する。これは手加減して攻撃する事で殺す事が出来ないというスキルだ。
先程の薬が体を浸透する。ステータスが5倍になって行くのが分かる。
【神目】も発動させる。偽装や隠蔽を無効化するので、貴族や夜盗が隠し持っていた暗器などが明確に表示される。その為それに対しての対抗策を取る事が出来る。
【竜の翼】を発動。ジェイクの衣服の上から翼が出現する。その翼は光輝く翼でありながら衣服を突き破って出現しない辺りがちょっと好感を持てたりする。
竜の翼さんありがとうと叫びたいだろうジェイクであった。
【円卓率】を発動させる。周囲の範囲にある全ての生命を察知する事画出来る。
四方にいる全ての貴族と夜盗を円卓率にて把握する事に成功。これで全ての攻撃を感知する事が出来る。
今回竜の翼は空高く舞い上がる為に使うのではない。
素早く前に突き進む為に使う。
敵はもう直前までやって着ている。
目と鼻の先で矢と剣が飛来する。
貴族はバカなのか剣を投げる奴がいる。
ちゃんと代わりの剣があるらしく装備しなおしている。
貴族というお金持ちだからこそ出来る芸当でもあると。ジェイクは痛感していた。
そして何よりいくら本気を出そうがいくら最強な攻撃を繰り出そうが手加減というスキルが発動していれば、絶対に死なないという、ある意味神スキルの手加減を上手く利用して暴れたいだけ暴れるつもりのジェイクだった。
「てめーら覚悟いいな?」
次の瞬間、ふんわりと風が舞い上がる。
砂と石ころがふわりと空中に浮かび上がる。
そこへ2個の大きな光の翼が通過してく。
その四方にいた貴族と夜盗達は次から次へとばったばったと倒れて行く。
その攻撃は四方の野次馬から見たら殺害されているように見える。
【暴風虎の神槍】を武器変換する事により一瞬で手元に出現させる。
そのまま彼は突っ込んだ。
暴風のような刃は通過する右と左と前の方角に圧倒的なダメージを与える。
中には心臓や腹を貫かれてぐちゃぐちゃになって死を悟ったものもいた。
しかし全ては手加減の元で死亡は無かった事にされる。
遥か後方に到達したジェイクは巨大な【暴風虎の神槍】を握りしめていた。
ぐるんと回転させると、また方向転換する事に。
「馬鹿野郎、奴は後ろだ」
「リックイこれまずいぜ」
「すぐに諦めるなレイデン、あいつは魔法とかに弱いんだぜ、きっと」
「貴族は魔法専門だからな、頼むぞ」
こちらが【暴風虎の神槍】で突っ込もうとすると。
沢山の魔法の塊が飛来する。
それぞれの詠唱を呟きながら、連続で多種多様の魔法の塊をぶつけてくるのだが。
ジェイクのいる場所に爆風と共にやってきた衝撃波。
貴族達は勝利を確信しただろう。しかしそこに悠然と立っているのがジェイクであった。
【魔法防御シールド】これがある限りジェイクはSランクより下級の魔法攻撃を全てマジックポイントとして吸収してしまう。
「このスキルめちゃくちゃ役に立つぜ、では次のラウンドといきましょか」
それから【暴風虎の神槍】で暴れつくした。
貴族達はほぼ全滅。そして夜盗達もほぼ全滅。
だが彼等を倒れる事を許されなかった。
なぜならスキル【手加減】により少しは戦える程度の気力を残されるからだ。
リックイもレイデンも死んだ振りをしたかったようだが、仲間達ががんばるのでそう簡単には死んだふりができないようだ。
その光景をジェイクは見て苦笑を洩らしつつも。背中をぽりぽりと掻いていた。
ジェイクはまた暴れようとした。
まさにその時貴族達がもはやなりふり構ってられず涙を流しながら逃げ帰っていった。
次から次へと逃げて行く貴族達に唖然としてしまうリックイ。
夜盗達も涙こそ流さないが、こちらをびくびくと見て、頭を下げて行く。
「もう反抗しません、どうか見逃してください」
「もっちろんさ、それと僕の友達に喧嘩売ったら分かる?」
「わ、わかります。あなたの事は忘れません、いえ絶対に忘れません」
貴族達も同じようにジェイクに申告するものがいた。
夜盗達と貴族達がいなくなると、取り残されたのがリックイとレイデンであった。
「どうすんだよ、俺様は貴族として、こんなところで」
「僕だって、こんなところで」
「なら死ぬ? いい事を教えてあげよう、君達が今まで死んでないのは僕のスキルのおかげ、それを外して君達を攻撃したら即死だ。君達は即死をするか、それともこのモゼス町から出て修行しなおすかどっちかね?」
リックイはがくんと膝をついてしまう。
レイデンはぶるぶると震えながら、こちらを見ている。
「「なら弟子にしてください」」
「てゆーかなぜそうなる」
ジェイクは思わぬ出来事に突っ込まざるおえなく。
てっきりこいつらを追い出す事しか考えていなかったのが事実だ。
弟子っていってもこっちはスキルポイントが異常に溜まりやすいだけでしてとは言えない。
困り果てていた。僕は突如習得可能リストに閃いたスキルがあった。
それが
【師範代】自分のスキルを弟子に教える事が出来る。スキルの強さによって修行が内容が変わって来る。修行内容は師範代スキルを発動すると表示される。
しかもこのスキルは結構なスキルポイントを消費する。
それも2000万くらいは下らない。
先程からの時間経過である程度高速で溜まったので。スキルポイントを消費する。
「よし、君達を弟子にしよう」
「ありがたき幸せ」
「うっしゃ」
この2人はいわば悪ガキのようなものだ。こいつらの腐った性根を叩き折るのもいいだろう。
ジェイクやにやりとふふひうとほほ笑んでいた。
それを冒険者ギルドから覗いているミナラクとネイリは恐怖の眼差しで見ていた。
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