第28話 勇気のあるドワーフ
鉄製のヘルメットを被り、だぶだぶの上着とズボンを着用、両手にはメリケンサックが装備され、巨大なハンマーが背中に背負われている。
その姿を久しぶりにちゃんと見ている気がする。
ジェイクが会った時もこんな格好をしており、
ハンマーはあったか思い出せないが、沢山の女性の衣服を武装解除していた。
ようは破廉恥なドワーフであったのだ。
それからジェイクとネイリと一緒に冒険をする事で色々と心を開いてくれたのだろう。
「なぁ、兄ちゃん、只者じゃないよね」
「それはまぁもちろんさ、それにドワーフは嫌いでね」
「俺様だって基本的に人間が大嫌いださ、だけどね今は違うよ、その事を知らしめてやろうかってね」
「なら知らしめてくれさ」
むきむきマッチョの上半身裸の男性が試合の開始を告げた。
確かレイデンという夜盗みたいな男性だが。
彼は衣服のあちこちにナイフを隠している。
ジェイクは最高位の鑑定で見破っていた。
その事をミナラクに教える事はルール違反だと思ったので、何も言わなかった。
それにミナラクもそんなに馬鹿ではない気がする。
2人はまるで円を描くように睨み合いながら歩いた。
2人の距離は縮まる事はしない。
すると背中からハンマーを取り出すと。
それを思いっきり振る。
周りは失笑する。
突然空間をハンマーで殴った事に対して。
ドワーフのミナラクは頭がおかしいと皆が笑っている。
「見せてやれ、ミナラク」
「はいさ、兄貴」
それはミナラクが得意とするスキル【空間飛ばし】であった。
突如揺れ動く地震のようなもの。
観客達がげらげら笑い。夜盗のレイデンも笑い転げている間に。
ミナラクはハンマーを振りまくった。
それも狂ったように。
それを見てさらに爆笑していた彼等はそれを感じた時、悲鳴を上げた。
至る所で爆発が起きる。
空間を飛ばしまくったのだ。
レイデンは訳が分からず。パニックになりながら、沢山の空間飛ばしを全身で食らった。
後ろに吹き飛ばされながら。闘技場の壁に突き当たり、連撃で何度も何度も顔面をメリケンサックで殴られる。
いまだに空間飛ばしはバウンドしている。
至る所で爆発やらが起きる。
ミナラクは無傷。
そしてレイデンは致命傷は避けているが、それでも出血がひどいので運ばれて行った。
ジェイクとネイリとミナラクはハイタッチをして、お互いの勝利を感じていた。
ネイリとミナラクは最後にこちらを見ると。
にやりと笑った。
「この中で一番危険な倒し方をしそうな人だね」
「兄貴は手加減しないと相手死にますよ」
「もちろん、手加減をするさ」
2人の仲間から背中を押されて、次の試験を受けに階段を降りて行く。
会場は盛り上がりまくっていた。
「あれは何だ? すげードワーフがいたな、ああ言うのって凄いよな」
「先程のネイリって子も凄かった。一体何者なんだろうな」
「次があの2人のリーダーだろ、すげーんじゃねーか」
沢山の人々が野次馬とばかりにやってくる。
このバトルで色々と偏見というものが変わりそうな気がしている。
ジェイクの眼の前に立つのは、1人の男性であった。
「ふざけるな、俺様の手下2人を倒したくらいでいい気になるな、A級冒険者を舐めるなよ、ここでお前をぼこぼこにして、けっちょんけっちょんにしてやるのだからなぁ」
「話方がまるでなってないよ君」
「貴族に物申すとは何事か、後でお父様に言いふらしてやる」
「それをやったらお前は本当に死ぬぞ」
色々な意味で。ジェイクのレベルは1000だしスキルポイントは1億だし。
こっちが軽く殴るだけで、相手は死ぬ可能性がある。
それだけは忘れてはいけない。
レベル差によるダメージ量の変換みたいな奴だろう。
詳しい事は分からない。
実はこの事については受付嬢から先程教えてもらった。
ジェイクはあまり同業者と戦った事が無かったのでそこの所については疎かった。
つまりレベル100の人がレベル1000の人に殴られると、一撃死を招くという事。
レベル差とはそこまで恐ろしいものなのだと思った。
とりあえずジェイクは身を任せるままに立ち尽くす事にした。
先程から貴族がのたうちまわっているが、無視していた。
ムキムキの上半身裸の男性が試合開始の合図を送る。
貴族は腰から剣を取り出す。
それが魔剣である事は即座に分かる。
鑑定スキルには感謝しつつも、ただ炎効果を付与するだけだった。
貴族のリックイという名前だったはず。
彼はこちらに走ってくると、剣で両断した。
右肩から左脇腹までずばっと切っていたのだが。
はっきり言うとかゆいだけだった。
衣服ですら両断していない。
「あれ、うそ、あれええええええええ」
貴族は滅多打ちを始めている。ジェイクの全身を連撃で両断する。
恐らくだけど彼は戦闘スキルが高いのだろう。
それは相手が同じような動きをしてからというものだ。
しかしこちらは微動だにしないのだから。
ただ立っているだけ。
それにパニックになった貴族のリックイは腰を真っ直ぐにしてひたすらこちらを両断しているだけ。
周りの観客達もリックイが優勢だと認識。
「あれだけ両断されたら死ぬんじゃないか」
「でも倒れないぞ」
「ありえないってあの魔剣で傷つけられないって相当やばいって」
観客達が戸惑い始める。
もちろんそれは審判をしているムキムキ男性にも同じだ。
ジェイクはめんどくさくなったので魔剣を右手で掴んだ。
「はなせえええええええええ、ごきいん」
その嫌な音。
つまり魔剣が折れました。
「うそおおおおおおおお」
貴族のリックイはもはやパニック寸前。
これはどうしたらいいのかとリックイは辺りを見渡す。
そんな事を敵の前でしていたら即座に殺されるという事が分かっていなかった。
「仕方がない」
ジェイクはゆっくりとリックイの元に向かった。
彼は悲鳴を上げて腰を落とした。
それは降参の合図であり、ムキムキの上半身裸の審判はリックイの敗北を高らかに告げたのであった。
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