第27話 Cランク昇格試験
ジェイク達はCランク昇格試験を受ける事となった。
一応パーティーとして登録したのだが、今回はネイリもミナラクも1対1となって審査員としてAランク冒険者が相手となる。
Aランク冒険者に1人1回戦い納得してもらえればCランクとなる。
これは一概にも倒すだけが方法ではないという事だ。
まぁ基本的には倒すと即座にCランクに上がる実力社会でもあるのだが。
ネイリとミナラクなら獣人とドワーフ族で考えがあるだろうし、今は自分の事に集中しなくてはと思うのであった。
試験は今日のお昼頃になった。
それまでネイリとミナラクはわいわいとお菓子やらを食べていた。
なぜか受付嬢のお姉さん達までもがわいわいモードになっている。
ミナラクが武装解除して素っ裸にさせないように睨みを利かせている。
その賑やかな中に浸かっていると、本当に平和ボケしてしまいそうになる。
ネイリの瞳が鋭くなる。それは獲物を見つけた時のハンターのような目だ。
ミナラクはしょぼしょぼとした目をきりっとさせる。
ジェイクもそろそろ時間かと立ち上がる。
「ではこちらへ来てください」
先程まで沢山の受付嬢がわいわいしていたのが嘘のようになり、沢山の冒険者が冒険者ギルドに入って来る。
会場は冒険者ギルドの屋上だ。
そこにはまぁまぁ大きな闘技場がある。
昔は闘技場として使われていた事があったらしい。
今は訓練の場所などに使われている。
S級冒険者が透明なシールドを何重にもかけているので、そう簡単には破壊される事はない。
今回のC級冒険者試験を登録したのはジェイクとネイリとミナラクだけだ。
他の人々は偶然にも重ならなかったという事もあるのだろう。
何よりA級冒険者である教官たちの眼がふざけていた。
「ったくなんで少年と獣人族とドワーフを相手にしないといけねーんだよ」
「そう言うなって、リックイならぼこぼこにして色目使って沢山の女性をたらしこもうぜ」
「まったくあんたらはそんな事ばかりね、リックイにレイデン、私は悲しいわ」
1人は優男風の男で貴族みたいな立ち位置だ。
どうやら彼がパーティーリーダーのようだ。
1人は全身がぼろぼろの衣服を着用しながら、きょろきょろと周りを把握している。貴族には見えないが、どちらかというと元夜党に見えるくらいだ。
最後の1人の女性はとても逞しい女性であり、何より獣人族であった。
頭にはウサギのような耳がついている。
「最初はネイリさんからです。どうぞよろしくお願いします」
いつもの受付嬢が案内してくれる。
ネイリは柵を乗り越えると、地面に着地した。
目の前には大人のような女性のラビット族の女性戦士がいる。
彼女は最初目をきょとんとしていたが。
次に驚愕の瞳となる。
「う、嘘でしょ、あんた生きてたのかい、ライガーが生き写しを見たと言っていたが、本当なのかい、かー久しぶりの楽しいバトルとなりそうだね、先輩」
「あんたは、確かウサギ族、いや今はラビット族と言うのでしたわね、チャイニーお久しぶりですわ」
ジェイクはほっとしていた。
どうやらあの姐さん的なウサギ耳の種族と知り合いのようだ。
ラビット族の彼女は背中から足に装備する武器を身に着けた。
その武器で地面に立つと。
「あれは足剣ですね、竹馬のように操作しながら足で蹴り上げるのです」
「恐ろしい武器だな」
「あまり使える人がいないんです。姉御大丈夫でしょうか」
「僕達の姉御だろ?」
「そうっすよね、まったく兄貴も暗くなりすぎているんですから」
ジェイクは辺りを見渡した。
沢山の観客達が応援を送る。
ネイリを応援するものがいたり、チャイニーを応援する者がいた。
チャイニーは昔からのファンが多そうだ。
最近ではネイリも謎多き獣人とされている為に人気が出ている。
審判が真ん中に陣取る。
とても屈強な人であった。
彼は上半身が裸だけど傷だらけであった。
その男性が大きな旗を上げると。
即座にバトルが開始された。
ネイリの両手に装備している武器が閃く。
それは鋭い爪なのだ。
彼女は恐らく犬族の獣人族だと思われる。
犬なら牙で勝負を仕掛けたらいいだろうに、なぜかネイリは牙が発達していなかった。
彼女は犬族のパワーを利用して爪で地面を抉って空中に飛び上がっていた。
そこに向かってラビット族のチャイニーが足を竹馬のようにしながら、空中に斬撃を炸裂させていた。
両手の爪と両足の剣がぶつかり合う中、火花が散りばめられる。
手と足の戦いは即座につくものではない。
それとこのC級ランク試験では相手を殺してしまったら即座に失格となる。
捕縛まではされないが、冒険者追放という形になる。
なのでネイリもチャイニーも武器に予め魔法をかけておく事で、相手を殺さないようにしてる。
それは先程の歩いている時に受付嬢がしてくれる魔法であった。
もちろんジェイクもミナラクも同じ事であった。
バトルは決着がつかない中で突如終わった。
「わたしの負けよ」
チャイニーは地面に這いつくばっていた。
両足の剣が両足に身に着ける拘束具の金具が外れていたのだから。
どうやらネイリが爪で外したのだろう。
そうする事でチャイニーはネイリに攻撃する手段を失った。
周りから拍手喝采が響き渡った。
まず彼等には2人の戦いを目で追う事が出来なかっただろう。
数名は目で追う事は出来ただろうが。
ネイリはこちら側に戻って来ると、全身から汗を掻いていた。
ぜいぜいと息を荒げている。
こんなネイリを見たのは初めてだった。
もちろんミナラクもだったから彼は心配していたようだ。
「次行ってくるっす」
ドワーフのミナラクが椅子から立ち上がると。
ゆっくりと階段を下って行った。
沢山の人々に罵詈雑言を浴びせられる。
冒険者にはドワーフ族とエルフ族を嫌う風潮があった。
それだけにドワーフであるミナラクは独りぼっちなのだろう。
そこに大きな声で叫ぶ女性の声が轟いた。
「ミナラクがんばれえええええええ」
「はいっす姉御おおおお」
ネイリの励ましの言葉にミナラクは迷いなく自分の道を進むのだ。
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