第24話 神の領域


 ジェイクは自分達が居たからって、魔王の化身を倒せる保証なんてない事くらいは分かっている。

 それでも瞳を炎のように熱く滾らせているネイリとミナラクの熱い気持ちに、ジェイクは揺り動かされた。そもそも一番最初に熱い気持ちを抱いていたのは誰か?



 やれる事は限られている。

 


 一気に回復したスキルポイント50万の有効利用だった。

 先程の真実の迷宮にあった巨大な扉での戦い。

 あれによりスキルの条件を習得して殆どを覚えてしまったはずだった。


 

 あの後、ジェイク達を裏切った元仲間達が次から次へと死んで行った。

 それも玩具を握りつぶすかのように簡単に殺してしまった。



 あの時ジェイクは色々と感じた。

 もっと力があれば。もっと強くなれば。もっと最強になれば、圧倒的な力が欲しい。



 その願いはそのスキル達の習得条件だったのだ。


 そのスキルは無数にあるし、これを習得すべしだと案内されるのだ。

 今案内されている数種類のスキル。

 その1つに30万スキルを使用して覚えるスキルがある。



 莫大なスキルポイントの犠牲が必要だが、また時間が経てば回復するし、今回のようなアクシデントはそうそうあるものではない、そのアクシデントで一気にスキルポイントが回復したのは奇跡だ。



 しかしそれが1つの必然となり、ジェイクを強き者に狩りだしてくれる。



「神領域を覚えるとしよう」


「どうしたの?」


「なんだって?」



 ネイリとミナラクとジェイクは走りながら、話をする。

 ぜいぜいと息を荒げる事はせず、ペース配分で走っているので、魔王の化身と遭遇してもすぐに戦闘が出来るだろう。



「ふ、僕は最強になれるぜ」


「期待しているわジェイク」


「兄貴、いきなりへんてこはやめてくださいよ」




 そのやり取りをしていると、そこに到達した。

 ダンジョンの巨大な入り口に到達したのだ。


 太陽の光を浴びて全身の闇色の皮膚が燃え上がる。

 全身が赤と青の炎で埋め尽くし、そこにいたのは【炎の魔王が出現しました】



「な、なに?」


「姉御、こんな時に何してんすか」


「だれがあたいのげっぷなのよ」


「落ち着け、どうやら魔王が誕生したらこのようにこの世界の全てに通達が送られるようだ」

「それって凄いよね、ぶっちゃけありえないんですけど」

「姉御のげっぷのほうがありえないんですけど」

「うっさいわね、さっき摘み食いしちゃったのよ」



「姉御拾い食いはいけまんぜ」


「違うっていってんの、鞄にしまっておいたの」

「なるほど、姉御は御菓子が好きですか、これはメモしておかないと」


「そんな事している場合ではないんですがね、ほれ、炎の魔王がこっちを睨んでるぞ」

「姉御はそんな事よりお菓子の事ですもんね」


「そうよってなわけないせしょ、はやくミナラクも戦うわよ」

「はいです」


「それでジェイクはどのように強くなってみせるの? はん、どうせ変てこりんなんでしょ」

「なぜ使う前から先がきってるんだ。ふ、ふふふふ、っふふふふふ、さぁ食らえ、泣いても笑っても何も出来ないぞ、ふはははははははあはっはは」



 バシンと頭を殴られるジェイク。


「つかどこからハリセン取り出した」

「んなもん知らないわよ、早くしないと炎の魔王が必殺技をこちらにぶち込もうとしているわ」

「兄貴、あと3秒です」


「ふ、神領域でもくらええええええ」


【神を憑依させます。オルディンと融合をします。賢神と呼ばれるほどの最強の神とされております。奥さんが沢山いるので浮気したらぼこぼこだそうです】


【ジェイクは神領域に到達しました。おめでとうございます。賢神のオルディンが憑依しました。タイムリミットは30秒となります】



「ちょええええええええ」


【ふ、このわしを憑依させた奴が何者かは知らぬが、あそこにいる狼藉者はなんなのだ? わしがこのジェイクと融合した瞬間、SSSSSSSSSSSSS級ランクの炎を投げおったからに、妻に昇天させられるくらいびびったぞい】


「それだけやばいのか」


【現在は時の流れに反している。この世界には時間が存在しない。この空間を突き破った時。全てが柱時計のように動き出す。まぁお茶でもどうじゃ】


「そんな事している場合ではないんです」


【じゃから、この空間では時間は存在しない、お茶飲み放題じゃ、ふぉふぉ】

「だまれ糞爺」


【お主わしが神様だとわかってるおるのか、神はのうこうやって現実世界にやってくると色々とゆっくりしてみたいもので】



「早くしろ糞爺」



【もうね、わし、ちょっと賢神オルディンとしてお前にお仕置きがしたくなったぞ】


「俺にはそんな趣味はない、オルディンはそっち系か」


【なわけあるかい、逆じゃぞ、奥さんが沢山いすぎていつもお仕置きされてる。お仕置きしている方ではない】

「オルディン様力を貸してください」


【じゃからそのつもりだから、この世界のお茶を、うまいのう、これだからリア充は溜まらん、これは神充かのう、ごくん、ぐびぐびぐび】



 それから2時間が経過した。



【あらかたお茶を飲みほしたし、そろそろ行くとするか】


「お茶の飲み過ぎてオルディン様のお腹がおっさんのお腹になっているのですが」


【気にするな、物事はチャレンジあるのみじゃ、では融合を認識してくれ、それだけは忘れずに】



 現実は動き出す。

 あちらではネイリとミナラクが停止している。

 巨大な炎の塊を僕が左手だけで押さえている。

 その状態で永遠とも思える時間を停止させられる。

 正確には2時間だが。



 時間が動いた瞬間。

 左手は何も発動せず、ただ左手だけで魔法のSが何個ついているか分からい攻撃を食らう。



 普通なら死ぬだろう。

 いや骨すら残さず燃え尽きるだろう。



 炎に包まれた1人の少年はゆっくりと炎の煙から姿を現した。



「じぇ、ジェイク、あなたはそんなに」


「あ、兄貴一瞬で太りましたね、何があったのですか?」



 そこにはおっさん体系のお腹ぽっこりのジェイクがいた。


 彼はお腹を見て、神様を認識した。



「これどゆことおおおお」


 

 ジェイクの断末摩が響き渡った。

 それは一瞬でおっさん体系になった神と融合した少年の物語だ。



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