第19話 最強に最強

 次に遭遇したモンスターはリザードマンそのものであった。

 しかし鑑定したらそれは違うのだと判明した。


【ドラゴンソードマン:SSSランク】


 そのモンスターが1体だけでいれば、ネイリとミナラクを守りながら戦闘する事が出来る。

 しかし、モンスターの数が4体もいた。

 全てがドラゴンソードマンであり、1体1体がSSSランクである事が判明している。

 これをレベルで表現したらどのような恐ろしい事になるのであろうかとびびってもいたので。SSSランク表記で助かっている。



「うん、そうだよね、ジェイクが戦うのをサポートさせてもらうわ」

「兄貴のやる事を邪魔する奴はこの俺様が武装解除してやるです」


「凄く助かる。出来るだけ攻撃が来たら僕に擦り付けるようにしてくれ、いくら防御力が9倍になろうと、ネイリもミナラクも僕より防御力の耐性がないのだから」


「そこは気合で何とかするわ」

「姉御もそうっすか」



 いつしか、ミナラクというドワーフ少年はジェイクの事を兄貴と呼び、ネイリの事を姉御と呼ぶようになっていた。



「では任せた」


 そう言ってジェイクは移動スピード上昇S級を発動させる。

 その神にも等しいスピードで持って、1体のドラゴンソードマンの首に向かって剣を突き刺した。


 しかしドラゴンソードマンも伊達にソードと付いている訳ではなく。

 全身から剣撃のような嵐が吹き荒れる。

 つまり奴等は全身に剣のカマイタチのようなものが吹き荒れているという事だろう。

 それはある種の魔法の壁なのだ。



「風のような音には海の音ってね」


 海鳴りS級を発動させると。この部屋そのものが海の音で包まれた。

 ジェイクは小さい頃に誰かに海に連れて行ってくれたような気がしている。

 それは気がしているだけで海を見た事などない可能性もある。



 それでもジェイクはこの海鳴りの音が心を満たす音である事を知っている。

 海鳴りの音が1秒減る事に大きくなり、ドラゴンソードマン達は何が起きているか訳が分からないようになり、全身を守っていたソードの風が無くなる。


 

 それは唐突な終わりであった。

 ばしんと音が途切れたのと同時にドラゴンソードマン達ははっと気付く。



「まったく、気付くのが遅すぎますわ」

「兄貴の助けになれるくらいの大きなハンマーを持ってるぜ」



 獣人族のネイリは両方の爪を装備しながらドラゴンソードマンの頭をわしづかみにしていた。

 そのままリンゴのように潰される光景を見せられたこっちはたまったものではない。

 しかしそれが野生の習性のようにネイリは満足そうに恍惚とした微笑を浮かべていた。



 隣ではドワーフが巨大なハンマーでもってドラゴンソードマンの頭を叩き潰していた。

 ドラゴンソードマンが地面に倒れても、滅多打ちとばかりに何度も叩き潰す。

 容赦のない攻撃にジェイクはもう少し慈悲を与えたらどうだろうかとツッコミたい。


 

 2人の仲間が戦ってくれたのだから。

 後の2体はジェイクが倒す必要あるはずだと思った。


 ジェイクは走りながらスペルマスターを発動させる。

 武器変換を作動させると、暴風虎の神槍へと変更する。

 暴風虎の神槍に風魔法をスペルマスターの力で融合する。

 それは一時的な力となり、時間が経過すると元の暴風虎の神槍へと戻ってしまう。

 槍術S級ランクの力により、巧みな攻撃を発動させる事が出来る。

 熟練度、つまり沢山使用する事によりもっと高度技を発動させる事が出来るが。

 今がその時。

 2体のSSS級を槍で倒すという事はとんでもない熟練度が溜まるという事だ。

 そうすればスキル習得可能一覧に新しいスキルが登録される可能性がある。



 こういった基本的な事は村長のレーガンティアが教えてくれた。

 いつしか村長がレーガンティアである事に疑いの可能性を抱かなくなっていた。



 飛来する見えない槍。

 暴風虎の神槍でさえ風のような力を持っている。

 そこにスペルマスターの魔法融合が加わり、風にさらなる風となる。


 ドラゴンソードマンの防御は風のようにソード状の刃を操るというものであった。 

 それは海鳴りのS級ランクで解除されている。

 鋭い槍は1体のドラゴンソードマンを破壊する。

 全身が崩壊するように崩れ去ると、

 右横に回転して、そのまま腹に槍をぶち込む。

 風魔法の力により体が爆散してこなになっていく。



 4つの死体を解体する事に。

 最後の1つは粉々になっているので使える所を探すのは結構大変な事であった。

 


「いえーい」

「やったね」

「兄貴も姉御も凄いです」


 ジェイクもネイリもそして最初の頃とは態度が変わってしまったミナラクもハイタッチするくらいの仲間になろうとしていた。


 そこで3人は一休憩をする事にした。

 そこのダンジョンの階層は暗くて不気味ではあるが、松明のオレンジ色の光が辺りを照らしてくれている。


 

 どうやら松明は魔法の力で燃やされており、永遠に燃やされているようだ。

 それも数百年とかなのだろうか?

 それを創造するだけでジェイクは恐ろしくなった。



「この真実の迷宮ってさどういう所なのかな? きっとあたい達がここにきたのってあたい達が初めての攻略者って事よね」

「それもそうです。あの高さから落下して死なない人は兄貴くらいです」

「そうすると今まで落下してきた人達の死体は?」


「でも結構広かったから、探せば死体くらいあったのでは?」

「それは可能性としてはあるだろうが、ミナラクはどう思う?」


「死体を食べる何かがいたか、そう言えば最近見つかったんすもんねこのダンジョン」

「つまり僕達が初めて落下したって事」



 ジェイクとネイリとミナラクが辿り着いた結論は。

 このダンジョンが発見されてから、冒険者が中に探検して落下したのが。

 ジェイク達が初めてという事だろう。



 ジェイクとネイリとミナラクはとほほと唸っていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る