第18話 真実の迷宮

 3人はひたすら階段を上り続けた。

 一定の広間に到達すると、3人は少し休憩する事にした。


 ジェイクはポイント食物変換を発動させる。

 Sランクの為結構おいしい食べ物を食物にする事が出来る。

 

 今までひたすら歩き続けたりしたので、トータルで50万ポイント貯まるはずの3万くらいまでには溜まっているだろう。


 なので100ポイントくらい使用すると豪勢なお弁当が出現するという仕組みだ。

 ジェイクが食べ物を出現させた事でミナラクは驚きの表情をしている。

 獣人族のネイリはその事を知っていたので、さほど驚く事はしない。



 3人はもしゃもしゃと豪勢なお弁当をお腹の中へと格納して行った。

 食後の3人はとても満足そうな表情をしながらダンジョンの天井を見ていた。


 

 それから少しの休憩を取ると。3人は再び広間に存在する階段を探す事に。

 不思議なのはモンスターが全然いないという所だろう。

 

 後モンスターが出現するであろう部屋もなかった。

 これはつまりモンスターが部屋に関わらず出歩いているという事なのではないだろうか。

 それはそれで恐怖そのものなのだが。


 ジェイクとミナラクはどの辺まで登っているか数えていなかったが、獣人足のネイリは細かく数えていた。きっといいお嫁さんになれるだろうなとこの時のジェイクは思った。


 そこに到達した時、ネイリが囁く。


「ここまでで上に向かっての10階層、ここまでモンスターは出てこなかった」


【おめでとう、命がけのサバイバルだよ】


「そうも言っていられないらしい」



 その謎の声により、ジェイクは武器を構える。

 ミナラクも大きなハンマーを握りしめると、ネイリは右手と左手に爪の武器を装備する。

 まっすぐ向こう側に階段がある事が分かる。

 そこからこっちにゆっくりと歩いてくる何かがいた。


 それがやばい奴である事はすぐに理解出来る。

 鑑定を発動させると。


【殺戮ピエロ:SSSランク】


 ジェイクの額から冷たい汗が流れ落ちる。

 ネイリとミナラクが真っ直ぐにやってくるへんてこな歩き方をするモンスターを見ていた。



「奴のランクはSSSランク級だ」

「それっと本当なの、凄くやばいじゃない」

「ちょ俺様はまだ仲間になったばかりだろうがよおおお」


「そこでだ。敵の力は未知数。ネイリとミナラクは僕の後ろいてくれ、チャンスがある時に攻撃してくれればいいから、基本は僕が戦う」

「それが一番いい戦い方ね」

「俺様としては少しむかつく事なのだがな、俺様が主人公なのに」


「はは、それはそれでよかったよ」


 ジェイクはゆっくりと前へと歩く一方でその後ろからはネイリとミナラクが歩いている。

 敵のモンスターを近くで見るとそれは恐ろしいものであった。


 ピエロの仮面をつけながら、けたけたと笑っている。

 凄く痩せておりまるでダイエット用のコルセットを最大限までに縛ったような状態だ。

 歩き方も凄く独特で、細長い両足で蟹のように歩いている。


 奴は右手と左手に短いナイフをちらつかせ。

 背の高さは普通の大人と変わらない高さであった。


 殺戮ピエロはこちらを見ると。

 即座に動いた。まさにピエロそのもので、あっちに行ったりこっちに行ったり。

 ジェイク達は踊らされていた。

 あちらを見れば、次は後ろを見る。次は左を見ればというこちらをあざ笑う戦法にジェイク達は怒りを覚え始めていた。


 それを何度も繰り返していると、それは唐突にやって来る。

 殺戮ピエロが消えた。

 そう思った瞬間、ジェイクの心臓にナイフが突き立てられていた。

 胸から血が流れて行く。

 ネイリもミナラクも絶望に陥る。


 

 しかしジェイクは立ち続ける。

 そしてにやりと笑う。

 刺突耐性Sランクのお陰で、全然ダメージを食らっていない。

 殺戮ピエロはこちらを見ながら、不思議そうに首を傾げている。

 血は流れている。それは皮膚が軽く斬れた程度であるからだ。

 その細長いナイフが深々と心臓に突き刺さるという事はないのだ。



「ネイリ、ミナラク、絶対に僕から離れるな」

「もちろんよ」

「もうこうなったらやけだ」



【絶壁の鎧】【発動中防御力が9倍】


 それはどうやら近くにいる仲間にも付与出来るスキルのようで。

 僕とネイリとミナラクは防御力が9倍になっている。


 武器変換を作動させると、両手には弓矢が装備されている。

 ジェイクは弓を構えると、殺戮ピエロに解き放った。

 奴はけたけたと笑いながら矢を避け続ける。

 こちらに向かってタックルでも仕掛けるのかのように走って来る。

 刺突では無理だと殺戮ピエロは学んでいる。

 ならそのナイフでジェイクの首を両断する事はするだろう。



 何度も弓を飛来させる。

 矢は殺戮ピエロに着々とダメージを与える。 

 真っ直ぐにこちらに走ってくるという事は、こちらが真っ直ぐに攻撃をし返す事くらい分かっているはずだ。


 それでもあちらに勝利を確信させる何かがある。

 それはこちらも同じ事だ。


 

 殺戮ピエロが到着したまさにその時。

 僕は武器変換を発動さえていた。

 それは剣そのものであり、それは居合斬りそのものであった。


 

 ピエロが振り落とすナイフは首を両断するものではなかった。

 心臓を両断するものであった。

 殺戮ピエロには狙いやすい場所があったのだろう。


 だが時既に遅しだった。

 ジェイクの居合斬りは殺戮ピエロの下半身の上半身を斜めに両断していた。

 必殺の一撃となったその衝撃で。殺戮ピエロは転がって行く。

 ただ死体として残るそれに【解体】スキルを発動させる。

 何かしらの素材アイテムになってくれただろう。


 

 切羽詰まったこの状況でジェイクはネイリとミナラクを元気づけようとした。

 しかし2人はこちらを真っ直ぐに見ていた。

 ネイリが感動したようにうんうんと頷き、ミナラクは兄貴と呼ばせてくださいと言いだした。


  

 そして3人はこの異常にやばいモンスターが出たにも関わらず再び階段を昇る事になった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る