第13話 残り3人の強者


 円卓の騎士は銀色の兜を被りながら、全身を銀色の鎧で包んでいる。

 恐らく軽めの鎧とされており、素早く動く事が可能なのだろう。

 銀色の槍そのものは真っ直ぐにこちらに向けられている。

 槍ともランスとも呼ぶが、彼の武器はランスという名前が相応しい程大きな槍であった。



 ジェイクは冷や汗を掻きながら、考えるより行動で示した。

 それは弓矢を使う事だった。

 今持っている武器を武器変換すると両手に弓矢が転送されてきた。



 弓を引っ張る時間と構える時間が終わった時、円卓の騎士は2メートル先の鼻先まで到達していた。


 矢が疾風のごとく飛来すると、円卓の騎士は後ろに吹き飛んだ。

 あちらからやってくる強いベクトルと、こちらからあちらへと向かうベクトルが。

 ぶつかり合った結果。円卓の騎士と矢自体が反対のベクトルを向いて吹き飛んだ。


 

 矢自体が反対の方角に吹き飛ぶのであってジェイク自体が後ろに吹き飛ぶ訳ではない。

 そのままジェイクは【武器変換】スキルで槍を転送すると、弓矢を転送し返した。



【移動スピード上昇Sランク】を使用すると近距離にて円卓の騎士の兜目掛けて突きを繰り出した。こちらの突きを予想していたのか円卓の騎士はランスでそれを弾いてしまう。

 そのままこちらに突き出そうとするランスはジェイクの頬っぺたを右にかすった。


 

 空中で浮遊していた槍を再び掴むと、次こそはと円卓の騎士の顔に命中させるつもりで心臓を突き刺した。



 円卓の騎士は胸をのけぞらせて死ぬ事を再認識したようだ。

 そして彼は消滅した。


【おめでとう、次は4戦目だ頑張りたまえ、何度でも死ぬ事が許される世界だよ】



 ジェイクは幻惑の世界が移り変わっていく中でも、ネビルガ師匠のやりたい事を考えていた。

 


(恐らくだけど、こういった色々な経験が習得可能スキルの獲得条件を満たしていくのではないだろうか、さらにスキルポイントも上昇するという2度美味しい戦法か?)


 

 ジェイクが1人で考えている事などつゆ知らず、ネビルガ師匠は笑う。

 変わり果てた世界、それは人が到底住めるような環境ではない場所。


 

 沢山のカラフルな色をした場所であり、そこが魔法使いの修行の場だと認識させる程、本当にぐちゃぐちゃの絵のキャンパスであった。


 赤は炎を黄は雷を青は水を、茶は土を銀色は氷を、緑は風をあらゆる色合いが魔法を発動させている。


 

 目の前にいる女性を見てジェイクは絶句していた。

 なぜなら彼女は伝説の魔女であったのだから。

 なぜジェイクが知っているのかと言うと、村長であるレーガンティアが隠していた本に描かれた写本そのものであったからだ。



【彼女は破滅の魔女と呼ばれた女性だ。この大陸で一番最初に魔女になったとされる女性じゃ、さて彼女の魔法をどこまで避ける事画が出来るかな?】



 ネビルガ師匠がいやらしい笑い声を上げている。


 

 そんな事など無視するかのように【破滅の魔女】は天に両手を捧げる。

 そこには浮遊している大きな杖があった。

 その杖が回転しなら虹色に光出す。

 そこから数える事など不可能と言えるほどのハイスピードで魔力の玉が飛んでくる。

 カラフルな色をしているので何か属性が付与されていると見て良いだろう。



【移動スピード上昇Sランク】を再び発動させる。


 

 ジェイクは地面を蹴った。

 沢山の鬼に追いかけられるような感覚だった。

 回転しまくるカラフル杖から連打で魔力玉が飛来する。

 


 走り続けた。

 後ろから魔力の玉がせまる。

 赤だと炎、黄色だと雷のようだ。

 その他にも色々な魔力玉がこちらに向かって飛来してくる。

 避けては避け続ける。走り続けてもいたが、ついにすぐ背中まで飛来している。



【気配察知】と【気配遮断】を発動させる。


 気配察知の力で魔力玉の飛来するポイントを避け続ける。

 ついにジェイクは走り続けるのを止める。

 気配遮断で魔力の玉が飛来し続ける事で、カラフルな色をしたフィールドが煙だらけになる。

 先程からジェイクは走りながら危険な場所は避け続けてきた。

 

 

 気配遮断のおかげで破滅の魔女がこちらに攻撃を当てづらくなっている。

 こちらは高速で暴れ狂う魔力玉を避け続ける事に成功している。

 ついに破滅の魔女はジェイクの居場所を見失ってしまった。


 

 ジェイクは武器変換スキルで再び杖を両手に持つことにする。

 それを右に薙ぎ払うと、魔法が炸裂するようになっている。


 杖は普通に武器として使う事が出来るが、魔法の力を増幅させる効果もある。

 色々な使い方が出来るのが杖というものだ。

 まぁ棒に少し似ているくらいの大きさだが。


 

 杖を振り乱すと、炎魔法と水魔法が交互に出る。

 それを何度も何度も繰り返すと、破滅の魔女はこちらに近づいてくる。

 それもシールド魔法を展開していた。


 

 バシンバシンと嫌な音をさせながら、ジェイクの炎魔法と水魔法を無効化している。

 しかし少しずつ希望が見えてきた。

 炎と水が何度もぶつかり合う事により、爆発が生じたのだ。

 この舞台は沢山の魔力に包まれている。

 それなのに炎と水という真逆性の魔法を炸裂させ続けていたらどうなるか。

 もちろん爆発位するだろう。


 破滅の魔女はこちらを見てにやりとほくそ笑み、爆発の中へと包み込まれた。

 それが破滅の魔女の最後だったのだろう。



 戦国武将とヴァイキングと円卓の騎士と破滅の魔女はきっと本気を出していない。

 それをセーブさせている人物には心辺りがある。

 


「ネビルガ師匠、手加減はありがとうございます」

【ふぉふぉ、やはり気付いておったか、お主の力ではまだ奴等の本気を倒す事は出来ん、さて、次は最後じゃ】



 そのフィールドは見た事もない世界であった。

 見た事もない乗り物、見た事もない建物、まるで今の文明を進化させたらこうなるであろあうと思われる。


 煙が上がる中、爆弾が降って来る。

 沢山の人々が逃げ続ける。 

 こちらの世界の服とはまったく違う。



【この世界はパラレルワールドの1つの世界じゃ、ここでは銃兵と呼ばれる人々が殺し合っている。それは相手の土地を奪う為、それは相手の富を奪う為。彼等は国の王の為に戦う。その武器をライフルと呼んだ】


「これが、パラレルワールド、凄いです」



 ジェイクはいつしか見た事もない世界に感動していた。

 そこで繰り広げられている光景は、人が人を殺すというものであった。

 しかもライフルと言う武器で一発当たればほぼ即死だし、当たり所が悪ければ、苦しんで死んでいく。



 衣服は恐らく特殊な力を使って裁縫された物だろう。



【敵はそこにいる100体の銃兵だ。武術の果てに辿り着けるかな?】



 次の瞬間、ジェイクは四方八方から睨みつけられるのを感じた。

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