第12話 武術の果てに
ゆっくりとネビルガ師匠が扉を開いた。
その中には無数の武器が転がっていた。
ジェイクが習得している武術はと言えば、剣術、斧術、槍術、杖術、弓術であった。
他にも知らない武器もあったりした。
5つの武術を学ばせてくれたのは村長であるレーガンティアであった。
彼はこちらがスキル習得出来ない身であるにも関わらず、5つの武術でもってぼこぼこにしてきた。
毎日怪我をして村長の家が自宅なのでそこに帰ると、体の節々が痛くて情けない事を呟いたりした。
すると村長が活を入れてくれた。
その度に、なぜここまで苦しい思いをしなくてはいけないのかと思っていた。
だがある程度の武術を学んでも、スキルを習得しない限り、それは強さではない事を初めてのモンスター討伐の時に理解した。
モンスターに攻撃しても全く歯が立たなかったのだから。
しかし15歳になった事を思い出してスキルを習得したら攻撃は通用した。
村の掟である15歳以下はスキルポイントを使用してはならないというあの掟は必要ないと思うけど。
何かしらの理由があるのだろう。
代々続いてきた掟なのかもしれないし、そのおかげで何かが助かっているのかもしれない。
色々な理由が枝分かれに存在している事をさすがのジェイクも理解してきた。
それだけあの頃のように子供では、いられないという事だ。
思考を現実に戻すと、ネビルガ師匠が告げる。
「ここでも集中してもらおう、すると別な世界に行く、5人の猛者がいるからそれぞれの武器で戦う事を教える。それとここに入る前に恐らく習得可能になっているであろう【武器変換】を覚えてくれ」
「でもスキルポイントが足りないのでは?」
「安心しろ、50万ポイントになれば、時間経過で上昇する桁も上がる。スキルポイント見てくれ」
そこには1440となっていた。
猛スピードでスキルポイントが回復している事を悟ると。
それはそれで驚きを隠せず、過呼吸になりかけたのであった。
習得可能スキルは沢山増えていた。
レベルを習得するだけで増えたとは思えず。
恐らく先程の部屋での修行も関係しているのだろうし、ネビルガ師匠と出会った事も関係していそうだ。
【武器変換】Cランク【武器を高速で変更する】
このスキルは600くらいのスキルポイントを使用した。
ランクを上げる余裕がないのでCランクの状態であるが。
「Cランクでも大丈夫じゃ、さて、そのスキルは戦いながら学ぼう」
「はい」
「では目をゆっくりと瞑って」
ジェイクはまるで、催眠術にかけられているかのように重たい瞼がゆっくりと閉ざされていく。
そこに広がる光景に心の底から震えてくる。
そいつは1人の猛者であった。
そいつは全身を見た事もない鎧で包んでいた。
この世界の鎧ではない事を即座に理解したジェイクは、もしかしたらと思うようになった。
【そうなんじゃ彼は異世界からやってきた戦国の時代の武将と呼ばれる人じゃ】
「なんだかよく分からない名前が」
【まぁ知らない単語なのは仕方なかろう、さて、奴は刀という武器の達人であり、そなたは5つの武器を変更させながらたかうのじゃ、まずはイメージして1つ1つの武器を変更させろ】
右手にイメージしたのは剣であり、意識を集中すると斧になり、左にすると槍になり、斧と槍を持っている状態だが、それを解除して弓にしたり、杖にもしたり、Cランクである程度のスピードで変更出来るのだから、Sランクになればどれだけ凄いスピードで変更できるのではと、期待を胸に抱いていた。
【では無理せず、何度でも挑むのじゃ、この世界では死ぬ事は何度でも許されるのじゃから】
ジェイクは走り出した。
【移動スピード上昇】スキルを発動させると、即座に戦国武将と呼ばれる敵に飛来する。
次の瞬間、ジェイクの上半身と下半身が半分になり、地面に転がった。
激痛はなかった。
ただ動作のように、こちらが早かろうが遅かろうがカウンター出来るような雰囲気だったし、こちらは剣で勝負した。
結構離れた場所で復活したジェイクは冷や汗を流しながら、武器を構える。
【刀という武器には何の武器が適切かを考えるのじゃ】
ネビルガ師匠がそう天の声で呟くと。
ジェイクは槍を構えた。
そして次はゆっくりと対面に相対した。
そして槍で突き刺すが、槍は輪切りのように両断され落ちる。
戦国武将が空気を両断したら、風ごとジェイクの首がぼとりと落ちた。
そして復活する。
ジェイクは相手を見据える。
こちらが攻撃していかない限りあちらから攻撃してこない。
という事は遠距離で攻撃したらどうなるのだろうか?
即座に剣か槍に【武器変換】出来るように準備しながら。
弓矢を構えると。
その鋭い矢が赤い戦国武将に真っ直ぐへと空気を裂いて突き進む。
戦国武将は刀でそれを両断すると、こちらへものすごいスピードで走って来る。
それを槍で構える。
戦国武将は刀で槍を両断する。
槍の穂先から真っ直ぐにふたつになるその武器はころころと転がり、次の瞬間には戦国武将の心臓へとジェイクの剣が突き刺さっている。
戦国武将はこちらを見てにかりと笑った。
すると蒸発した。
【1戦目の勝利をおめでとう、では次は2戦目だね】
全ての空間が改変されていく。
今の空間は何もない空間であったが、今はどこかの巨大な船の上のようだ。
帆には骸骨の姿が描かれていた。
【ここは異世界のヴァイキングと呼ばれた奴等の船じゃ、奴等は野蛮でな、色々な武器を使うが、奴は斧が得意だ。倒して見せよ】
結構離れた場所に巨漢が表れた。
先程の戦国武将より遥かに大きい。
だからと言って巨人族よりかは小さい。
そいつは巨大な斧を肩に担いでいる。
奴はゆっくりとこちらに歩いてくるのだ。
まず最初は剣からやろう。
息を止めて。突き進んだ結果!
即死は免れたが後方に吹き飛ばされた。
まるで怪力そのものであり、剣が通用しなかった。
村長であるレーガンティアから小さい頃に教わった剣術でも通用しなかった。
空中で回転しながら船の壁に激突した。
あの斧では槍は通用しないだろうし、杖ならどうだろうかとジェイクは物は試しと挑みかかる。
ヴァイキングはこちらに問答無用とばかりに殺しに掛かってくる。
杖で斧をガードする事に成功した。
杖は木材ではなく鉄に近い素材だった。
武器と武器がぶつかり合い、右手で支えながら、左手で剣を出現させると。
剣がヴィキングの左目に突き刺さる。
恐ろしい断末摩を上げるヴァイキングに問答無用とばかりに剣を捨てる。
杖でガードしながら、斧との鍔迫り合いをしている。
左手で斧を出現させ、渾身の力で投げる。
ヴァイキングの頭がぐしゃっりと潰されてしまい、攻略する事に成功する。
【おめでてとう、のこりは3人だよ】
3人目はどこかの城の上であった。
そいつは全身を鎧で包んでいた。
しかしその鎧も見た事がなかった。
【彼は円卓の騎士と呼ばれた人だ。名前は忘れ去られたがな、さて、彼の槍のランスを受け流すが出来るかな】
円卓の騎士はこちらを見た。
一直線に突っ込んでくる。先程のヴァイキングのようにゆったりとやってくる訳ではない。
もはや槍を真っ直ぐに突き刺す為だけに突っ込む。
風が彼を追い立てようとしているかのようだ。
向かい風がやってくるので、ジェイクは武器を振りにくい。
まるで自然そのものを味方にしてしまったかのように。
2人はぶつかった。
心臓に巨大な穴を空けたジェイクは後ろに吹き飛ばされながら死んだ。
そして蘇ると、先程と同じ位置にいた円卓の騎士がまた一直線に突っ込み始める。
「どうやら考えている暇はなさそうだ」
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