第8話 討伐の先にあるのは連鎖

 先手必勝とばかりに10体のオーガに向けてジェイクは炎魔法を炸裂させていた。

 ドラゴンのような炎が飛行しながらオーガ達を地獄の炎に包み込む。

 ネイリは突如として走り出す。


 ジェイクも剣術Sランクを上手く活用させる為に疾走する。

 鑑定の最高位を発動させると、10体のオーガ達のヒットポイントが4分の1になっている。

 これですぐに倒せるとジェイクは油断していた。



 剣がオーガの首にめり込む。

 そのまま切断するとオーガの首がころころと地面を転がる。


 1体のオーガが全身を火傷で覆われながらも、走ってきて、巨大な棍棒を振り回す。

 ジェイクは後ろに跳躍すると、眼の前の地面が抉られ爆発するようになる。


 そこにネイリが跳躍してオーガの首を両手の爪でぐしゃりと潰す。

 オーガの2体がこちらに走って来る。

 そいつらも大やけどを負いながら真っ直ぐに来る。

 ジェイクは右にジャンプすると、そこに巨大な棍棒が飛来する。

 棍棒は地面を叩き、土を爆散させていた。

 


 スキル【危険察知Sランク】が随時発動してくれる為。

 残り8体となったオーガ達に囲まれても即座に相手の攻撃を避け続ける事が出来る。

 1体1体の敵が攻撃してきたらそれも順序に避ける事も問題ない。

 剣術スキルがSランクの為、殆ど一撃の竜眼剣で敵を屠る事が出来る。

 ネイリとジェイクは背中越しで残り4体となったオーガを見据えていた。




「やっぱり、このオーガ達は一筋縄ではいかないようね、ご主人様! 油断しないでくださいね」

「それはもちろんだ。ネイリこそ油断するなよ」


 

 2人は地面を蹴った。

 ジェイクが一回転して転がった先ではオーガの棍棒が上空を通過する。


 着地した先で、オーガの首が落ちる。

 後1体。

 残りの2体はネイリが相手してくれている。



 オーガは自分が最後のモンスターになると悟ったのか、大きな口でどろどろの牙を見せびらかして、咆哮を発したのだ。


 オーガ自身が自らを鼓舞する咆哮であった。

 オーガは落ちている棍棒を拾うと。

 二刀流の棍棒となった。


 オーガはダンスをするように走り出した。

 1本の棍棒が真上を通過する。

 横に一線したので、ジェイクはそれを避けるだけで済んだ。

 しかし縦にもぅ片方の棍棒を振るったのは予想外だった。


 

 全身でそれを受けると後方に吹き飛ばされ大木にぶつかった衝撃で口から胃液を吐き出した。

 ぜいぜいと空気を吸いながら意識が錯乱している中で、オーガが問答無用とばかりにこちらに走って来る。



 ここで死ぬのだろうか?

 脳裏に色々な物が炸裂していく中で、これが死ぬ前の走馬灯という奴なのだろうか?

 記憶にはなかった父親と母親の笑顔が脳裏をよぎり、このまま死んでたまるかという強い願望が飛来した。



 ゆっくりと立ち上がるジェイクは、竜眼剣を真っ直ぐにレイピアのように構えた。

 


「こんな所で死ぬ訳にはいかない」


 

 レイピアのような構えから次に突き出される竜眼剣。

 真っ直ぐに突き刺されたその武器はオーガの喉を串刺していた。

 オーガはジェイクより2倍は大きい。

 しかしジェイクは真っ直ぐに突き進むレイピアのような構えで、剣術を発動させた。


 

 オーガは地面に座るようになると、そのまま動かなくなった。

 

 ネイリの方を見ると、やはり人生の先輩だけあり、さらには神のダンジョンを攻略間際までいかせた人だと思った。


「まったく、オーガが10体もいるって聞いた事がないわよ、オーガは基本的に孤立を好むのにね」

「僕はオーガの事はよくは知らないけど、1体だけで強いモンスターが群れたらやばいってのは分かったよ」


「ちょっとこの辺りを調査してみるけど、ご主人様も来ますか?」

「もちろんだとも、少しのダメージくらいはこのように回復させるからさ」



 ジェイクは回復魔法ランクSスキルを使用する事により全身に負った打撲などの怪我を治療していく、もしかしたら骨折などもあったのだろうけど、Sランクの回復魔法の威力は眩しすぎるものであった。


 2人は辺りを調査していく、この山の中腹地帯にオーガ達がいるとされているが。

 彼等は果物などを主食としている、狩をして動物を食べる事もある。


 なぜ中腹地帯の下層までやってきたのか、2人は中腹地帯の上層に向かった。

 そこには信じられない光景が広がっていた。

 果物の木が全て燃やされていたのだ。

 燃えカスとなっている果物の木々、果物を食べて生きていたであろうモンスター体の餓死の死体がある。



 餓死死体があるという事は、相当前からこの野生の果物の木々は燃やされたのであろう。


 オーガは狩で生きて行くしかないから、山岳地帯の下層にやってきたのだろう。 

 そして動物を狩っていたのだろう。その為には仲間が必要だとオーガ達は自らの意思で判断した。


 そう考える事が出来る。



「一体何者が木々を燃やしたのでしょうか」

「それは分からないけど、冒険者ギルドに報告が出来るわ、戻りましょうよご主人様」

「そうしよう」


 

 その後周りを少し調べたけど何もなかった。

 あるのは朽ち果てたモンスターの死体ばかりであった。


 2人はその足でモゼス町に戻る事となった。

 冒険者ギルドに真っ直ぐに向かった2人は、冒険者ギルドが慌ただしくなっている事に気付いた。



「だから、砂漠地帯にて砂地獄が大量発生していて、砂漠地帯からモゼス町に輸送体がこれないそうです」

「こちらは海岸地帯にて隣の島からの輸送が出来ません、リヴァイアサンが大量発生しています」

「草原地区は野生のワイバーンが輸送体を襲撃、人々は避難しましたが、輸送物がワイバーンに奪われました」


 まだまだ報告が行き交う。

 ほとんどが最強種とされるモンスター達の大量発生であった。

 ゴブリンとかオークやその他の下位のモンスターが大量発生しても問題はなかっただろう。

 しかし砂地獄や、リヴァイアサンや、ワイバーンという高位のモンスター達の大量発生は普通では考えられない事であったようだ。



 まだまだジェイクは冒険者ギルドの事を学べていなかった。


 

 2人はいつもお世話になっている受付嬢の元に到達していた。


「お帰りなさいませ、オーガは討伐出来ましたか?」

「これがオーガの部位です。全部で10体いました」

「そ、それは凄い、よくご無事でしたね」

「ネイリもいたからなんとかやれたよ、少し付近を調査したらオーガの主食となる果物の樹木が殆ど燃やされていたよ」

「それはどういう」

「この大量発生は仕組まれた可能性があるという事です」



 最後にネイリが付け足すと。



「やはりそうですか、砂漠地帯も海岸地帯も草原地帯も仕組まれた可能性があるわね」


 

 受付嬢が少し悩んでいる表情をしている。



「僕はスキルをもっと学ぶ必要があります。習得スキルをどのような条件で発生出来るかという事も知りたいのです。今のままでは、砂地獄もリヴァイアサンもワイバーンも倒せる気がしません」

「それが正しい判断ですわ、それならモゼス図書館に行った方がいいでしょう、あそこには沢山の書物がありますわ。それで学ぶ事をお勧めしますわ」

「なら、そうする。ネイリはどうする?」

「もちろんご主人様のサポートをしますわ」


「受付嬢さん、今の僕達ではこの緊急事態に手を貸せません、本当に申し訳ありません」

「いえそんな事はありません、実はこのクエストが成功したらジェイクさんをDランクにすべきという話がありまして、あなたは今からDランクの冒険です」



 ジェイクはちょっとだけきょとんとしながらも。

 ただ頷くだけだった。



「もとろん、ネイリさんもDランクとなります」


「ご主人様はともかくあたいは凄い飛び級だね」

「それだけネイリさんは30年前から認められていた存在だという事です」


 

 受付嬢が挨拶すると、ジェイクとネイリは冒険者ギルドから出て行った。

 後ろでは沢山の依頼主たちがパニックになりながら依頼をしてく。

 冒険者達が命をかけて大量発生したモンスター達を討伐しにいく。



 ジェイクとネイリがやらなくても、別な冒険者達がやってくれる。

 でもそのような考え方が危険である事は分かるし、逆に自分自身が何かやらないといけないと思い込むのも危険であった。



 今ジェイクに必要なのはスキルを沢山習得して、それをどのように応用するかであった。

 自分と同じように時間とともにスキルポイントが上昇していく人がいれば。

 そういう人が師匠となってくれれば、それはそれで、夢のような話だ。


 

 2人が向かった先、このモゼス町で一番大きいとされる図書館。

 2人はそこに立ち尽くす。

 中に入ろうとして、受付カウンターに向かった。


 そこは静けさの塊であった。



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