第9話 【時間の書物】
カウンターには男性の受付係がいた。
彼はこちらをぎろりと見た。見た目は勤勉な学者風な男性だ。
彼は頭に学者がつけるような帽子を着用していた。
「この図書館のルールは分かるかね?」
「この図書館に来るのは初めてなのです」
「あたいは30年前に来たよ」
「まぁ初めての方は説明するとして30年前とは、姿形と一致していないなぁ、あまりからかうのはやめてくれたまえ」
するとネイリが囁くように歌う。
それを聞いていた学者は真っ青になっていく。
「なぜあなたがネイリ学長様の歌を知っているのですか」
「それはあたいがネイリだからよ、鑑定してごらん、学者が鑑定くらい覚えていないとねぇ」
「こ、これは申し訳ありません、ネイリ学長様はこの図書館を設立した有名人の1人であります。ですが年齢を食っていないのが謎ですし、何よりあなたはエルフやドワーフではないはず」
「色々と説明するのは難しいけど、ある敵に人形にされてしまい30年間も放浪していたのです。放浪といっても人から人へと渡されていっただけですわ」
「これは失礼しました」
「ではあなたはジェイクさんですねルールをご説明させて頂きます」
それから受付係の学生風の男性は真っ直ぐな瞳でこちらに語り聞かせてくれた。
1つが図書館では静かにする事。
2つが図書館の本を借りたい時は受付にて名前と現住所を書く事。
3つが本を持ち逃げした場合厳正なる罪となり指名手配される事
その3項目が述べられていた。
その内容にジェイクとネイリは頷いた。
受付カウンターから中に入ると、そこには無数の本が並べられていた。
「ご主人様、あたいは色々と調べ物をするから、ご主人様は自分の調べ物をしてください」
「そうさせてもらうよ」
ジェイクは本棚から本棚へと目線を移しながら調べて行った。
人はさほど多くはいないが、まばらにいた。
彼等はきっと色々な事を学んでいたり、小説と呼ばれる娯楽の本を読書しているのだろう。
ジェイクはこの沢山ある本を一々調べるのは時間の問題だと悟る。
最高位の鑑定スキルを発動させる事にした。
すると全ての本の題名が頭に入って来る。
鑑定機能に検索機能があったので、それを発動。
時間関連の書物を調べると、数冊がヒットする。
さらに検索にかけると。
それが出てくる。【時間経過伝説スキル】という項目を見つけたジェイクは、その本がある場所まで歩いていくと、分厚い本を見つける事となった。
その本を持って椅子に座って、机の上に本を乗せる。
ゆっくりとページをめくっていく。
全てを読み終わるのに5時間くらいの時間を要した。
このモゼス図書館は24時間開かれている。
なので現在は図書館の職員が光魔法で部屋を灯してくれている。
現在は夜の7時くらいになろうとしており、まばらだった人々はさらに少なくなっていた。
あの受付係の学者さんはにこにこしながら本を読んでいる。
どうやらここにいる人々は大の本好きさん達ばかりのようだ。
ネイリも無我夢中で調べ物をしているし。
ジェイクはジェイクで本を見終わっている。
この本はジェイクの為にあるような本だった。
この書物を書いた人の名前は【ネビルガ】という男性であり、20年前に書かれたものらしい。
計算すると今は60歳くらいで生きている保証はない、彼はモゼス町の離れに住んでいるとされる。
それが20年前と同じであればだ。あって話がしたい。
そのように考えていると、何か変なものが頭にするすると入って来る。
それはイメージのようなもの。
右手を開くと、そこに本が出現する。
【スキル習得ブック一覧】
というアイテムが出現する。
イメージするとその本は消滅する。
凄いものを身に着けたようだ。
スキル習得ブック一覧を開くと、そこにはジェイクが学んでいないスキルがずらりと表示されている。習得可能にする条件まで書かれてあるし、習得したスキルは名前が黒い太字になっているのですぐに分かる。
実はジェイクは時間経過についての本を読破した時に、ある野望が出ていた。
それは全てのスキルを習得してやるという事。
全てのスキルを習得すると何かが起きると本は最後に締めくくっていた。
野望に満ち溢れたジェイクはゆっくりと立ち上がり、時間経過についての本を本棚に仕舞う事を忘れなかった。
彼はネイリが座っている所にやってくると。
「僕の準備はいいよ」
「では行きましょうかご主人様」
2人は受付に挨拶すると。
「滅相もありません、また来てください、ネイリ学長様」
「ここではネイリさんでよろしくね」
「ではネイリさん、また来てください、もちろんそのお弟子さんも」
「いえ弟子ではありません」
「ええええええ」
受付係の男性を驚かせながらも2人はモゼス図書館から出て行くのである。
「それで色々と収穫があったから、僕の時間経過のスキルについて知ってそうな人がいた。彼は近くの湖に住んでいる。彼に会おうと思う」
「それがいいかもね、あたいの方は生き残った仲間達の消息を調べていたんだけど、あまり収穫はないわね、ライガーくらいかしら偶然に出会えたのは」
ネイリはとても仲間思いの獣人族の女性だ。
彼女の見た目は幼児チックな女性ではあるが、年齢は見た目に反して食っているのである。
沢山の人々はネイリが死んでいると思っている。
2人はモゼス町の門の外に出ていた。
どうやら村の外にある湖の近くに住んでいるようだ。
2人が歩いて見つけた家は、ありえないくらい巨大であった。
凄い派手な細工でもあり、まるでカラクリ屋敷かと思われる程であった。
というよりかはこんな素晴らしい建物があるのにモゼス町の人はこの屋敷をぼろ小屋と言っていた。
何か意図がある。
ジェイクが時間経過スキル持ちだからこそあのぼろ小屋は豪華に見えるのではないだろうか?
そのような事をジェイクはひたすら考えていた。2人は豪華な扉をノックした。
するとどたどたとけたたましい音を鳴らしながら1人の老人が出てくる。
「なんだね、わしは忙しいんじゃ」
「豪華な家ですね」
「はて、お主はこのぼろ小屋が豪華に見えるのか?」
「だって豪華そのものじゃないですか」
「何を言っているの? ぼろ小屋よ」
その時最初からネイリに聞けばよかったと後悔した。
ネイリの瞳にはそれがぼろ小屋に見えるのだ。
「2人とも入れ、どうやらやっと来てくれたようだ。我が後継者が」
老人が意味の分からない事を呟きながら。ジェイクとネイリを案内してくれる。
ジェイクが見る景色は豪華そのものである。
色々な見た事もない道具が転がっている。
「凄いぼろぼろの大きな小屋ですね、ご主人様もそう思うでしょ」
「そうだね」
ジェイクはひたすら頷く事しか出来ない。
なぜならジェイクの目に映るこの大きな家の景色は見た事もない伝説に溢れていた。
だがネイリに移るこの景色はぼろぼろの大きな家そのものなのだから。
「わしはお主に単刀直入に聞く事がある。そしてお主はわしに単刀直入に聞く必要がある。だから同時に言ってみよう」
「はい」
2人は深呼吸すると、同時に発言した。
「わしは時間経過ポイント上昇を持っている」
「僕は時間経過ポイント上昇を持っている」
2人はにやりとほくそ笑んだ。
それをネイリが不思議そうに見ていた。
かくしてここに2人は出会った。
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