第5話 獣人族の装備を作ります

 獣人族の服のインスピレーションはなかった。

 というか獣人族の存在はアーバン村の村長の話でしか聞いた事もなかった。

 どういう衣類が好きなのかを尋ねると。


「びしっとした奴がいいです」



 という意味不明な答えが返ってくる。

 ネイリの巨大な胸でびしっとした奴を着せたらきっと破壊的に恐ろしい事になるだろう。

 下手したら奴隷商人が目をきらめかせるかもしれない。



 ジェイクは考えに考えた。

 その結果。見出したのは、いわゆる太ももの毛など両手の毛などを一部外に出す事により服の中の密集率を下げる。次に軽装備は革細工にしつつ。武器は爪が良いとの事。

 2個の爪を装備させている。


 銀色と革製のマッチングでばしっとした獣人族の衣服の軽装備が出来上がった。

 ネイリはそれをとても気に入ってくれた。


 ちなみに7千ポイントを消費した。

 オーダーメイド追加するとポイントが沢山消費される事が分かった。


 

 服も手に入ったので冒険者ギルドに向かう事にしたかったのだが、ネイリはすごくお腹を空かしていた。


 それもそうだろう、ずっと食事にありついていなかったのだから。

 もしかしたら人形の時は空腹ではないのかもしれないけど。

 それでも体が元に戻ったのだからご飯くらい食べたいだろう。



 それで思いついたのが、ポイント食物変換というスキルだった。

 それを使用して果物を沢山取り出す。

 もちろんスキルポイントを消費している。



「わぁあああ、トロピカルですわ」


 

 そう言って上品にネイリは食べ始める。

 ネイリはどうやら犬のような獣人族である。

 てっきりがっつくのかと思ったら。丁寧に果物を食べていた。

 彼女の眼からは沢山の涙が流れていた。



 一体彼女に何が起きたのだろうか?


 呪いをかけられる事をしたのだろうか?

 恐らく彼女は上流家庭の出身だと思われる。

 なぜかは食事の食べ方でも分かった。



 ジェイクは果物を食べ終わった畑に大の字になっているネイリをお姫様抱っこしていた。


「恥ずかしいです」



 ネイリは顔を真っ赤にさせながらこちらに言うと。

 ジェイクはそのような事は気にせず。


 移動スピード上昇というスキルにより、一瞬で冒険者ギルドに到達していた。

 そこで地面に足をつけるネイリは周りを不思議そうに見つめていた。

 


「あたいはご主人様の事を凄い方だと認識し始めています」

「これでも冒険者になって数日だけどね」


「なぜそこまで強いのですか」

「それはチートスキルがあるからだよ、でも僕の村にいる人々はほとんどがチートスキルを持っているらしい。確かめた事は無いけどね」


「神の村」


「なんだ?」


「いえ、なとなく、神の村を思いだしました。その村には特別な人々が生まれると」

「それなのかは知らないけどね」



 ジェイクは不思議に思っていた。村長は1つの物語だけは聞かせなかったし、厳重に保管されていた。それが【神の村】という物語だった。

 なぜネイリが知っているのかは分からないけど。

 いつか聞いてみたいと思っていた。

 今はその時ではない気がする。



「ではネイリも冒険者登録しよう、そうすると2人でクエストを受けられるから」

「はいですわ」


 

 2人は冒険者ギルドに入る事にした。

 するとそこにいた農民冒険者達が腰を落として悲鳴を上げる。


 というか君達はとんでもないスピードでここに戻ってきたのだなとツッコミたい。


 そこにはジェブスンさんもいる。貴様もかと突っ込む。もちろん心の中で。



「嘘だろ、呪いを解いたのか」


「そうです」


「それは良かった。わっしはジェブスン、あなたはネイリですね」

「はいですわ、ジェブスンさん、ご主人様がお世話になりました」

「いえ、わっしらがお世話になりました。ネイリはいいご主人と会えましたね」

「はい、とてもいいご主人です」



 ジェブスンさんとその他の農民冒険者達は嬉し涙のようなものを流していた。

 最悪な人なら、ネイリを返せとかって言うのだろうけど、ジェブスンは違った。

 きっとジェイクを信用してくれているのだろう。

 それにジェイクと出会わなければ呪いを解除する事は出来なかったのだから。



 あらかた農民冒険者メンバーと挨拶をすると2人は受付嬢の所にやってきた。

 彼女はこちらを見ると輝かしい太陽のような笑顔を向けてくれた。



「これは可愛らしいお嬢様ですね、冒険者登録ですか?」

「いえ昔に登録しています。ネイリという名前で」

「少々お待ちください、出ました。でもこれは、30年前ですよ」

「はいですわ」


  

 ジェイクは唖然とネイリを見ていた。

 ネイリは14歳から16歳くらいの肉体年齢をしながら、40歳過ぎの精神年齢をしているという事なのだろうか?



「長期間お休み頂いた冒険者様には理由を書く必要があるのですが、口頭でもいいですよ」

「それなら口頭にしましょう」



 ジェイクも恐らく受付嬢も聞いてみたいと思っている。

 ネイリの過去の話を。2人はゆっくりと耳を傾けた。



「まずは30年前、領地戦争が起こりました。神ダンジョンに向かう権利について、人々は争い殺し合いをしました。その時あたしは神の村に到達し、仲間達と共に神のダンジョンに入りました。仲間達が1人また1人と倒れて行く中、神というボスモンスターを倒せる所まで到達し。人形にされ地上に放逐されました。そして沢山の人々に人形が渡されるのです。そこには一冊の物語があり、それがネイリという女性の物語なのです、その本も無くなったみたいですわ、もっと詳しくすると数日が架かるのですが」



 受付嬢もジェイクも心が痺れていた。

 なぜなら聞いた事もない伝説だった。

 


「ネイリは元仲間と合いたい?」

「もちろん会いたいですわ、ですが今はご主人様を守る事が大切です」



 受付嬢はこくりと頷いてくれる。



「それなら承知しました。では手形を押してください」



 最後の書類に手形を押すネイリ。

 かくしてネイリは再び冒険者となった。



「ではご主人様、クエストをお受けいたしましょう」

「だな」


 受付嬢がこちらを向いて頷く。


「ネイリさんはF級から始まります。S級は解除されたと思ってください」

「それはもちろんですわ」


「ジェイクさんはE級の冒険者ランクになりました。先程の薬草採集により功績が認められました」

「それはありがたい」


「それとパーティーメンバーがクエストを受ける場合は一番高いランクの人が基準となります。ジェイクさんとネイリさんではジェイクさんがEランクですので、Eランクのクエストを受ける事が出来ます」


「「了解した」」


 

 2人が選んだクエスト。

 それは。


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