第3話 天罰を下せ
巨大な城、それは8階建てとされる建物。
城の形状は複雑ではない、勇気の王国だからこそ、道はシンプルに勇気で立ち向かえと前の王様の名言だ。
入り口ですら封鎖されているので、とりあえず指を動かす。
それだけで首無し死体が次々と壁にタックルしていく、それは無限にもおよぶ事であった。
ひたすら次から次へと死体が折り重なり合う。
入り口は既に埋もれてしまい、デュラハンは死体を階段の如く歩く。
ゆっくりとゆっくりと歩きながら、2階の窓を確かめる。
そこもがっちりと閉ざされている。
まだまだ死体は折り重なる。
階段がまたもや大きく丈夫になる。
空から弓矢が飛来する。
そのような事をしてもデュラハンには効果がないようだ。
5階に到達した時、足元には沢山の死体が折り重なる。
首無し死体の塔になろうとしている。
今の塔ではまだ頂点まで遠いい、また指を動かす。
するとまた死体が増える。
全てで1000体は折り重なっている。
今6階くらいに到達。
その光景を8階の窓から見ていた国王がいた。
国王の足元にはまだ幼い1人息子がいた。
妃はその光景を見て絶句している。
国王は騙してはいけない人を騙した。
そして殺してはいけない人を殺した。
なぜなら自分自身の命が大切なら勇者を処刑してはいけなかったのだ。
国王は武者震いしている。
その時だった。
叫び声が聞こえる。
「国王、お前は俺様から全てを奪った。仲間という繋がり、民衆の信頼をひねくられた。俺様は決めたこの地上に人間がいるからダメなのだ。人間を滅ぼす。または人間種を滅ぼす。いいか国王お前が始めた喧嘩だ。お前の後押しで俺様はもっと強くなる。さぁ俺様の手にかかれ」
その時だった死体の塔をかけ昇る1頭の首無し馬がいた。
その首無し馬の名前をグリーと言った。
グリーは走り続ける。
ついにデュラハンの隣に到達した時、グリーは一切スピードを落とす事をしない。
デュラハンはグリーを見ていなくても平気で跨ると、そのまま跳躍してみせる。
それを見ていた国王と妃と息子は逃げる。
城の屋上に向かって。
8階の玉座の窓をデュラハンとグリーは突き破った。
辺りに高そうな色のついたガラスが飛び散る。
そこには国王がいなかった。
屋上では国王と妃と息子がそわそわしている。
「どうやって逃げればいいんだ。ここで逃げても、どうしようか」
「あなた、どうやらここで死ぬようです」
「うるさい、俺にはまだやる事がある。神融合の大陸をさらに開拓するんだ」
「だから、こうなれば、ここから落ちて死にましょう」
「勝手に死ね」
「いいえ、あなたもそして我が息子も」
「うるさい」
「お前が煩い」
そう呟いたのは、国王の後ろに立ち尽くす首無し騎士であった。
彼の馬は隣に立っている。
銀色の剣を構えると、ゆっくりと国王に近づいていく。
「俺様の事をちゃんと思い出しているか?」
「あ、当たり前だ」
「国王、お前は少しやりすぎた」
「それが皆の幸せ、お前が犠牲になれば」
「なら今回は国王が犠牲になるしかないなぁ」
「どうか息子だけは」
「それはいけない、その息子が大きくなったらお前みたくなって第二第三の犠牲者が生まれる」
国王はぶるぶる震えながらその場に土下座していた。
その後ろでは恐怖のあまり妃が飛び降り自殺していた。
子供は理解が出来ないという顔だったが。母親を追いかけて墜落した。
「気付いてるか? お前の家族は死んだぞ」
「う、嘘だ」
国王は後ろを振り返る。
木の葉が舞い散る森が見える。
本来見なくてはいけない場所は、その下。
瓦礫の底、岩などが沢山ある場所。
そこに落ちて無事でいられる訳がない。
妻と息子が死んだ。
ようやく国王は武者震いを覚えたようだ。
ゆっくりと立ち上がると、帯剣から剣を引き抜いた。
その剣は高そうな剣であった。
「国王として最後を遂げる。いやお前を倒す」
「出来ればな、こちらは勇者の称号を持っているのだから」
「うあああああああ」
ブン! という剣の音を鳴らしただけで、その高そうな剣ごと国王の首はころころと転がっていた。
首のなくなった国王の死体は眷属となる。
高そうな衣服を着用しているから、そいつが国王だとすぐに理解出来る。
勇者は国王の頭を掴むと、妃と息子の元へと放り投げる。
デュラハンの瞳はどこかを見ていた。
遠くを見ている訳でもない。
涙を流す事も出来ない。
それは肉体がないからだ。
確かに鎧の中には瘴気に包まれた体がある気がする。
まるで異空間と繋がっているように。
その異空間に体がある気がするのだから。
デュラハンはゆっくりと城から降りる。
人間の気配を感じると、そこに向かっては片端から両断していく。
それの繰り返しをして、城から気配がなくなった。
城門を支えていた兵士も殺した。
城門が開かれると、そこには無数の首無し死体の眷属体が折り重なっていた。
塔のようになり階段となってくれた。
それを指の動きで指示すると、即座に理解してくれた。
首無し死体は取り合えず城門の外に行かせ、デュラハンは辺りを見渡す。
誰かが呼んでいる気がする。
そこを探す為に歩き続けた。どうやら奴隷商館のようで、結構立派な建物だった。
そこにいたであろう売り物の奴隷達はきっと首を引きちぎられたのだろう。首が転がっている。
しかし厳重に閉ざされている部屋がある。
そこから不思議な気配を感じるデュラハン。
デュラハン等の最上級のモンスターはある程度の気配を感じる事が出来る。
黒一色の扉をデュラハンがゆっくりと開くと。そこには全身を鎖で繋がれたエルフの幼女がいた。
この世界ではエルフ族とかドワーフ族は人間の文明が進化しすぎてしまい、遥か彼方に追いやられていた。なのでエルフやドワーフはとてつもなく高い値段で取引される。
しかも幼女と来ているから、すごいレアだ。
エルフの瞳は人間を恨んでいる目だった。
デュラハンはそれに共感を覚えたのか、鎖を両断していく。
狭い部屋の中で白銀の鎧を装備したデュラハンが銀製の剣を振り回す。
それだけでも高等技術なのに、エルフの幼女にはかすり傷1つついていない。
エルフの幼女は地面にぺたりと座る。
すると彼女はこちらを見てただ呟いた。
「うちはテイル、エルフ族だ。人間が憎いうちの家族は皆殺しにされた。お前は人間ではない、先程から外が騒がしい、一体何が起きている」
「俺様は元勇者、7つの国に騙されて処刑された。生まれ変わったらデュラハンになっていた。とりあえずこの国を滅ぼした。お前は俺様の同類のようだ。俺様の仕事を手伝ってみないか」
「人間を滅ぼす事?」
「その通り」
「いいね、お願いよ、あなたの名前は?」
「ゲンセイだ覚えてくれ」
かくして2つの悪魔が契約を結んだ。
この2人が手を組んだ事により、人はもっともっと死ぬのだから
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