登場人物は、ファンタジーというか決して実在していなさそうな雰囲気を纏っているのに、確実に血が通っている生身の人間。
そんな彼・彼女たちの繊細な人間関係が織りなす群像劇。
それだけではなく、豊かな表現があちらこちらに溢れている。景色や感情の描写の秀逸さはさることながら食べ物はどれも美味しそう。
(書き手として絶対に敵わない、尊敬すると感じたのは、「音」の表現でした)
さらにはタイトルが、センスのかたまり。サブタイトルを見るだけで展開に心が震える。
……なんて堅苦しいレビューをつらつらと書いてみましたが、何回でも読みたくなる物語です。実際に何回も何回も繰り返し読んでいますし、これからも読むと思います。
異世界転生/転移系やファンタジーではない、重厚なヒューマンドラマをお求めの方には、心から推薦させていただきます。
読んでみるか迷っている、そこのあなたへ。
目次だけでもご覧になってみてください。……きっと、ページを開いてみたくなると思います。
みなさん、好き嫌いはありますか?
ホヤの見た目がダメ。
トマトの食感が苦手。
ピーマンの苦味が嫌い。
セロリの香りが受け付けない。
ひとには、それぞれのNGポイントがありますよね。
けれど、大人になってみれば、あるいは調理方法が変われば、その美味しさの虜になることもあってりしたりします。料理って面白いです。
さて、この物語の舞台は、とあるレストラン。ここでは、少しばかり癖のある美男美女が働いています。お客さまから見ればスペシャリストとしてスマートに働いているように見える彼らですが、舞台裏では誰もが様々な悩みを抱えていて……。
食わず嫌いでは料理の味はわかりません。
とっつきにくそうに見える相手でも、付き合っていくうちに意外な一面を知ることになるはず。
甘さだけではない、五味が合わさることによって深まる料理と人間関係のハーモニーをお楽しみください。