第316話「帰路 反省とこれから」
「はぁ、今回も疲れたなぁ……」
出張の全日程を終えた私は現在、ムラーン=ジュールから王都へ戻る馬車の中で揺られていた。
因みに、馬車の反対側の席ではレオノール、ルーシー、レオニーの順番で三人が座っており、
「むにゃ……シャケー……早く川を上ってこいよ……」
「むふぅ……殿下を……好きなだけ食べ放題……」
「ひ、ひぃ〜……」
獅子二頭が怯える牛をクッションが代わりに夢の中だ。
そんな哀れな草食動物と幸せそう?に眠る肉食獣達から視線を車窓に写し、流れゆく田園風景を何気なく眺めながら私は今回の出張について考え始めた。
今回の出張について結論から言えば、最上の結果だろう……ただ一点を除いて。
まず、本来の目的である式典への出席はキチンと果たした。
次に、レオノールとの『船を与える』という約束を果たすことが出来た。
やはり不可抗力とはいえ、約束を守れないのは気分が良くないからな。
ただこの際、海軍大臣による二度目の忖度の大暴投があって自分の国の軍艦に私の名前が二隻同時につくと言う意味不明な事態が発生した結果、レオノールは泣き出し、私はストレスを溜め込み、海軍大臣は左遷が決まったが。
三つ目は、レオニーの回収だ。
実は今回の出張に出る際に、もうすぐレオノールとエリザといつ二台巨頭がいなくなってしまうので、このままでは仕事が回らない!何とかしないと!と考えた結果、お出掛けついでにレオニーを回収してその穴を埋めることにしたのだ。
まあ、言うなれば行き掛けの駄賃、と言う感じか。
これも目的は達成出来た。
そして最後に、父上から出張のついでに遊んでこいと言われた件も無事……いや、レオニーの残念な接待プレイの所為で微妙な気もするから無事かどうかは分からないが、兎に角クリアした。
と、結果だけ見れば大成功……なのだが。
ただ一点、失敗……というか、残念な点がある。
それは……私の体調。
今回の出張結果、私の疲労と睡眠不足は悪化していた。
実は当初の予定では早めに仕事を片付けて、何とか疲労と睡眠不足を解消しようと思っていたのだが……。
度重なるアクシデントの連続で、そんな幻想は早々にぶち壊されてしまった。
原因としては……。
今回の仕事は内容的には楽だったが、メンタル的に非常に疲れることばかりだったことや、レオノールに二日連続で朝まで連れ回されたことや、獅子姉妹の不和を何とかする為に柄にもない事(パワハラ)をやった上に大博打を打ち、最後は疲れ果てて寝ようとしたのにテンション高めの獅子姉妹に朝まで付き合わされた挙句、トドメにル牛ーに『昨日はお楽しみだったッスね!』とか言われた瞬間はストレスがピークに達して本当に倒れそうだったりしたこと、などである……。
と言うことで今回の出張は非常に多くの成果はあったが、引き換えに私のメンタルと命がかなり削れてしまったのだった。
……あれ?よく考えたら、いつもこんな気がするような……?
いや、やめよう。
これ以上考えたら闇に落ちそうな気がするし……。
それより、次のことを考えないと。
王都へ帰ったら仕事が私を待っているのだから!
と言うことで、えーと……王都へ戻ったら……まずは一度、フィリップと話をしないと。
他のことが忙しくて中々会えなかったのだが、アイツは何やら色々と暗躍しているようだからなぁ。
弟よ、頼むからもう変なこと(性犯罪)をしでかしてくれるなよ?
お前には次期国王になってもらわねばならないのだから……。
はぁ、何か対策を考えないとなぁ。
それと同時にエリザともちゃんと話さないと……あと、ルビオン方面の情報を確認したり、安全に送り出す準備をしないとな。
何でも今あちらでは皇太子によるクーデターが発生して混乱しているらしいのだが、そんなところへ大切な友人であり、有能な部活でもあるエリザが間も無く帰って行くのだ。
だから、私としては彼女に出来るだけのことをしてやりたいのだ。
勿論、彼女を送り出すのはランスの国益の為でもあるが、やはり友人としてエリザの幸せを願いっているのは本当なのだ。
だから戻っても彼女が困らないように資金や情報を与えて、あとは……スムーズに帰国出来るように手配をしなければ……。
はぁ、まだまだ忙しい日々が続きそうだなぁ。
……あ!あと今回の出張をねじ込んできた父上達のところに抗議の意味を込めて、ルーアブルで買ったお土産物の、どこにでも売っていそうな適当なクッキー、を置いてきてやろう。
きっと、あの二人なら私のメッセージを理解してくれる筈だからな。
たまには私だって、ちょっとぐらい抗議をしたりするのだ、と。
数日後。
国王シャルルの部屋にて。
「なあエクセル!見てくれ!息子が土産物を買ってくれたんだ!」
シャルルが嬉しそうに言って、
「む?そうか、良かったな」
エクトルはそれに微笑を浮かべなら答えた。
「きっと今回の出張を喜んでくれたんだよ!あ、これ君も食べなよ?素朴な味で美味しいよ」
「なるほど……お、こういうのも確かに悪くないな」
それから、
「いい仕事が出来たね」
「ああ、そうだな」
と、二人はほっこりしながら、満足そうに呟いたのだった。
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