第315話「00(ダブルオー)シャケ、カジノロワイヤル12」
「私が勝ったら……君を一晩好きにする、というはどうかな?」
私がそう言った瞬間に場の空気が固まり、レオニー本人もポカンとしてしまった。
それから、
「ふぇー!?シャケさん大胆ー!」
ルーシーは私の真意に気付いているのかいないのか、わざとらしくそういい、
「て、テメー!ふざけんな!」
レオノールは顔を真っ赤にして叫んだ。
「ええ!?……嬉しい!」
レオニーは戸惑って……いや、錯乱しているのか微妙にズレた反応をしている。
と、三者三様の反応が返ってきたところで、
「レオニー、どう?」
私が彼女に確認すると、
「え!?で、殿下がお望みでしたら喜んで!……(むしろ賭けなどしなくても好きにして下さっていいのに!)」
戸惑いながらも上司には逆らえないと諦めたのか、素直に承諾してくれた。
悪いなレオニー、悪いようにはしないからな。
私は心の中で彼女に謝った後、
「よし、決まりだな……あ!あともし君が勝ったら一億に加えて、私が何でも好きな願いを聞いてあげるよ……では始めようか!私は黒を選ぶ!」
彼女の気が変わらないうちに、そして追加の条件を突然上乗せし、彼女が戸惑ってイカサマや脅迫などの小細工ができないうちに、一気にことを進めることにした。
因みにこの瞬間レオニーから、
「ふぁ!?殿下を……好きに出来る!?え?ええ!?で、では……私は赤ですね!!……(赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こい赤こいいいいいいいいいいい!!)」
もの凄い怨念のようなものを感じた。
「で、ではルーシー、宜しく!」
そして、私はルーシーにこっそりウインクしてみせる。
「ふぇ?……っ!……は、はいッス!」
ルーシーはそれに気付いたが……さあ、上手くいのか、これこそ本当の賭けだ。
と、その時。
「ちょ、待てよ!」
怒り狂ったレオノールが私に近づいてきて乱暴に肩を捕まれたが、
「レオノール、安心してくれ……悪いようにはしないから……」
私がこっそり小声でそう言うと、
「……わかった」
彼女はあっさり私を信じて離れてくれた。
よし、これで条件は整った。
あとは上手くいくことを祈るだけだ。
覚悟を決めた私はルーシーに向かって叫ぶ。
「ではルーシー、ショーダウンだ!」
「は、はいッス!」
そして、山札の一番上からルーシーが取ったカードは……。
「『スペードのエース』ッス!この勝負、シャケさんの勝ちッス!」
「よし、私の勝ちだな」
私は思わず笑みを浮かべ、
「……わ、私の負け?……あ、アーナンテコトナノー、ワタシハコンヤ、デンカノモノニー……アーレー……ウフフ」
反対に横ではレオニーが自らの貞操が失われると絶望し、俯いて肩を震わせている……ちょっと罪悪感があるが……まあ、接待に失敗した責任ということで。
と、ちょっぴり罪悪感を抱きながら、
「ではレオニー、約束通り私は君を一晩好きにするが依存は無いかな?」
私が問うと、
「は、はい!喜んで!」
何故か居酒屋の店員みたいな反応が返ってきた。
「?……ま、まあいいか、兎に角そういうことだからレオニー、君は今から……」
私は若干戸惑いながら、レオニーに命令を伝える。
「今から!?そんな焦らなくても……むふふふ……」
「一晩レオノールと飲んで来なさい」
「ぐふふ……はい!喜んで!!……は?え?今……なんと?」
「今からレオノールと飲んでこい、と言ったのだよ」
私が悪戯っぽく笑いながらそう告げると、
「なっ!……そんな!それでは約束が!」
レオニーは慌てて抗議してきた。
しかし、私は取り合わない。
「だって『君を一晩好きに出来る権利』なのだから、これもありでしょ?」
「くっ!……た、確かにそれはそうですが……うう……」
私の言葉を聞いたレオニーは、よほどレオノールと一緒に行くのが嫌なのか、愕然としてその場に崩れ落ちてしまった。
そして、私は今度、レオノールの方を向き、
「レオノール!そう言うことだから、姉妹で存分に楽しんでこい」
と言ってやると、彼女は笑顔で礼を言った。
「シャケ……ありがとな!お前本当にいい奴だな!」
「どう致しまして……あ、あとこれもあげるから持っていってくれ、飲み代だ」
ついでに私は約一億のチップの山を指差して言った。
「マジか!?」
「マジマジ」
因みにこれはレオノールが私の為に戦った所為でパンモロ状態になってしまったことへの慰謝料みたいなものだ。
それから、
「……あ、そうだルーシー、手を出して」
「え?自分ッスか?」
私は高額チップ一千万ランス分ぐらいを鷲掴みにして彼女に渡した。
「ふぇえええええ!?こ、こんなにいいんスか!?」
「ああ、全部君のお陰だからね!当然の報酬だよ、美味いものでも食べてくれ」
そう、これは彼女が私の合図に気付いてイカサマをしてくれたことへの礼だ。
「あ、ありがとうございますッスー!シャケさんマジイケメン!では自分はこれで!……ヤッホー!」
ルーシーは嬉しそうにチップを抱え、換金所の方へスキップしながら去っていった。
と、これで全ての精算が終わった訳だが……その結果、姉妹の絆は深まり、牛もお腹いっぱい……そして、何より……これで私は寝られる!まさに完璧なWin-Winだな!
さて、ではさっさと解散して、自分の賭けの勝ち分(睡眠時間)を受け取るとしようか。
て言うか、もう本当に疲れたから早く寝たい。
「みんな、今日は私に付き合ってくれてありがとう、お陰で随分に楽しめたよ……さて、では今日はここで解散にするから、みんなは朝まで楽しんでくれ!サラダバー!」
私はテンション高く若干変なことを叫びつつ、背中を向けて爽やかにこの場を去ろうとしたのだが。
「待て」
「お待ちを」
その瞬間、後ろから両肩をガシッ!と掴まれ、強引に引き留められてしまった。
「え!?」
私が驚いて振り向くと、そこには笑顔のレオノールと、笑顔のまま激怒しているレオニーが立っていた。
「お前も行くんだよ!」
「殿下……私を騙し討ちにしておいて逃げようと?」
「……え?ちょ!まっ……あああああああああ!」
私はそのまま強引に夜の街へ連れ去られ、夜明け頃まで荒ぶる雌ライオン達の酒宴に付き合わされてしまったのだった。
そして翌朝。
私が宿屋のベッドで目を覚ますと、
「ふぁ……ああ、よく寝れなかった……」
とボヤきながら重たい身体を起こそうとしたのだが、
「あれ?身体が動かないぞ?」
全く動かない。
私は不思議に思い、天井を見ていた視線を動かして左右を確認すると……。
「シャケ……寂しいよ……行かないで……」
「殿下……もう一人にしないで……」
何やら寝言を言いながら絶賛就寝中の雌ライオン二頭(イブニングドレス仕様)の姿があった。
「え!?何で!?この二人がここに!?」
夜明けに帰ってきた時は確か、一人でベッドに入った筈なのに……。
正直、訳が分からずパニックだ。
あと何故かは分からないが、草食動物が間違えて猛獣の巣穴に迷い込んだらこんな気持ちだろうな、と思った。
それから、この状況をどうしたものかと考え始めたその時、
「シャケさん!おはようございますッス!……あ」
と、寝室のドアを開けたメイド服姿のルーシーと目があった。
「………………」
「………………」
そして、しばし無言で見つめ合いながら固まっていた後、
「昨日はお楽しみだったッスね!」
と笑顔のルーシーに言われてしまったのだった。
こうして今回の出張は終わり、結局私は疲れたまま……いや、むしろ出張前よりも更に疲弊した状態で王都へ帰ることになったのだった。
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