第283話「幕間 ブラックシャケの日常」
皆様こんにちは、王子という名のしがない社畜ことマクシミリアンです。
突然ですが、今日は最近の私の日常をお届け致します。
まあ、何も面白いことなどありませんがね。
何せ私はしがないシャケ畜……じゃなかった、社畜。
朝から晩まで仕事に追われだけの毎日ですから。
はぁ、なんでこんなことしてるんだろ……。
05:00 オフィス横の仮眠スペースにて 起床
「ふぁ……5時か、よく寝たな……」
まだ辺りが暗い中、私はブランケットをのけると、隣接したシャワースペースにフラフラしながらシャワーを浴びに行きます。
え?何でこんなところで寝てるのかって?
それは当然時間がもったいないからですよ。
宮殿って無駄に広くて、オフィスから私の部屋まで結構距離があるのです。
だから移動する時間が惜しいので、最近はもっぱら仮眠スペースで寝ているのです。
因みに今日は何と三時間も寝れました!
あと最近あまりにもその頻度が高いので、父上に頼んで近くの部屋をシャワースペースに改装して貰いました。
それをお願いした時、珍しく父上達が動揺し、ついで憐れむような目で見られていたような気がしたのですが、一体どうしたのでしょうか?
うーん、自分の宮殿を改築されるのが嫌だったとか?
まあ兎に角、これで時間が節約できる訳です。
因みに自室には殆ど帰っていません、目立ちますし、寝るだけならここで十分ですから。
おっと、時間が……何だかんだ言って遅くまで仕事に付き合ってくれた隣のベッドで寝ている部下が起き出してくる前に、さっさとシャワーを済ませないけません。
一応、親しき中にも礼儀ありですし。
あとは頑張ってくれているその部下の分も一緒に、食堂でコーヒーとパンを貰ってこないと。
05:30 オフィスにて 始業
「バイエルラインは周辺国と抗争の真っ最中か……確かに資金も物資も必要だよなぁ、何とか送る分を確保しないと……あとセシルは大丈夫かな?やはり、過労死の危険を犯してでも現地でサポートに入るべきだろうか?いや、しかし……」
身支度を済ませてから食堂に寄った後、デスクに座ってコーヒー片手に仮眠中に届いた書類をチェック。
寝ている間にもどんどん報告や決済待ちの書類が増えるので、朝であろうと私にゆっくりしている時間などありません。
はぁ、たまにはゆっくり朝日を眺めたいものです。
06:00 オフィスにて 業務中
「ムラーン=ジュールでは利権絡みで海外系の組織と抗争が始まったか……それなら応援の人員や武器、資金などが必要か……こちらへの割当て分も確保しないと……レオニー大丈夫かなぁ……いや、強い女性だし、余計な気遣いは無用か」
ぬるくなったコーヒー片手に静かに仕事を続けます。
07:00 オフィスにて 部下その一が起床
「うーん、寝みー……シャケ、おはよーさん……あー頭イテー、寝酒にウイスキー一本は流石に飲み過ぎたかー……水くれ、水!」
制服のまま仮眠室で寝ていた部下その一がアルコールの臭いをさせながら、ボサボサの頭で起きて来ました。
そして彼女はそのまま私の隣にある自分のデスクにどっかりと腰を下ろすと、私が渡した水差しに直接口をつけて一気に飲み干しました。
いや、ワイルド過ぎだろう。
それから落ち着くと着替えを持ってシャワースペースに移動して行きました。
正直、これは年頃の女性としてどうかと思うのですが、意外にも律儀に毎晩遅くまで仕事を手伝ってくれていますし仕方ないのかもしれません。
08:00 オフィスにて 部下そのニが出勤
「レオンハート提督、おはようございます!あら、顔色が……今日も二日酔いですの?もう、寝酒もほどほどになさいませ……あ、あとランベールさんもおはようございます……さあ!今日もあの方のお役に立つ為に稼ぎますわよ!」
何故か上司の私をおまけのように扱いをしながら、金融担当メイドこと、メイドのコスプレをした秘書のエリザが出勤して来ました。
彼女は甲斐甲斐しくレオノールに世話を焼いた後、最近勝手に独立した金融担当セクションにある自分のデスク向かいました。
あれ?この人って私の秘書ではなかったっけ?
うーん、秘書とは一体何だろう?
あと、あの方って誰?
09:00 オフィスにて 通常業務
「おいシャケ!こっちの見積もりとバイエルライン関係の調整終わったぞ!さっさと確認して決済しろ!コラ!」
「ちょっとレオンハート提督!アタクシが先ですわよ!?ランベールさん!早くコモナ支店立ち上げに関する資料を確認して下さいな!何日承認待ちのまま放置する気ですの!?ああん?」
優秀な部下達がどんどん仕事を進めて決済や確認を迫ってきます。
正直、私が処理するより彼女らが仕事を仕上げるペースのが早いので、どんどん決済や承認待ちの書類が積み上がっていき、同時に彼女らからのクレームも積み上がっていきます。
業務が捗るのはとてもいいことなのですが……胃が痛い。
10:00 オフィス横の休憩スペースにて オフィスラブ?
「うわーん!でも……私……レオノールさんのこと諦めませんから!」
私が休憩スペースにコーヒーのおかわりを取りに行こうとしたちょうどその時、若い女性の部下が泣きながらパーテーションの裏から走り出て来ました。
それから、
「はぁ……また泣かせちまったよ……ん?見てんじゃねーよシャケ!」
バツの悪そうな顔をしたレオノールが出て来た後、八つ当たり気味に私に向かって叫びました。
理不尽だ……。
あと、ちょっと羨ましい……。
いいなー、あんな風に女の子に呼び出されて告白されてみたいものだ……。
さあ、仕事しよ。
11:00 隣のオフィスから パワハラ?
「ピエールさん!部下の管理もまともに出来ないんですの!?貴方バイスプレジデント(課長)でしょう!高い年俸を貰っているのですから、それに見合った仕事をなさい!出来なければ来月には貴方の席はありませんわよ!」
相変わらず書類の山に埋もれていると、隣のオフィスからエリザの罵声が聞こえてきました。
え?バイス……何だって?あとピエールって管理職になったの!?
というか年俸制?
出来なきゃクビ?
何か隣のセクションが外資系の投資銀行みたいになってるけど……大丈夫なのか?
12:00 会議室にて ランチミーティング
「おーい、シャケー、メシ食いに行こうぜ!」
大量の仕事を捌きつつ、どのタイミングでランチにしようか、それとも面倒だし一食抜いてしまおうかと迷っていたところで、まるでそれを見計らったかのようにレオノールが声を掛けてきました。
流石は頼れるお姉さんレオノール、ガサツなようで周りをよく見ています。
折角なので、そのお言葉に甘えて誘いに乗ろうとした、その時。
「ダメですわよ!ランベールさんもレオンハート提督も今からランチミーティングですわよ!」
横からエリザの鋭い叫びが飛んできた。
驚いてそちらを見ると、書類の束を抱えた彼女が仁王立ちしていました。
ああ、そう言えばそうだった……はぁ、やはり私に優雅なランチなど許されないのか……。
私が肩を落としていると、
「えーマジかよエリザ、飯ぐらいゆっくり食わせろよー」
レオノールが不満そうに言いました。
しかし、
「お黙りなさい!世界経済は秒単位で動いていますのよ!?時間がもったいないですわ!さあ、会議室に参りますわよ!」
即座に却下され、怒れる金融の鬼に会議室への移動を促されてしまいました。
それからエリザが思い出したように言いました。
「それとランチのメニューはアタクシの一存でイカスミパスタにしておきましたので、ご承知おき下さいな」
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