第273話「小悪魔の背伸び③小悪魔と姉っと牛with新キャラ女騎士!?3」
「お久しぶりです、リゼットお姉ちゃん」
驚き過ぎてアワアワしているリゼットに向かって、銀髪のクール系女騎士にトランスフォームしたノエルがハニカミながら言った。
「あ、お久しぶりなのですぅ〜……ではないのですぅ!これは流石にトランスフォームし過ぎなのではぁ!?」
何気なく普通に言葉を返してしまったリゼットだが、直ぐに我に帰ってツッコミを入れた。
「確かにそれはアタシも思うわね……まあ、兎に角、そう言うことだから。さてと、話を戻すとトランスフォームした相手がノエルちゃんだったから、余計にマリーがショック受けちゃったって訳よ、ね?」
アネットはそう言うと、自分に抱きついているマリーを見た。
すると再び怒りが湧いてきたのか、マリーがアネットから離れて喚き出した。
「ぐぬぬぬ……キーーーー!納得いかないです!何で私がちんちくりんのままで!私より小さくて可愛かったノエルがこんな……こんなスレンダー美人になるなんて!」
珍しく癇癪を起こしたマリーだが見た目と年齢、そして普段の大人びた行動を考えると、むしろこれが自然な姿なのかもしれない。
「あ、あのぉ〜」
と、ここでリゼットが恐る恐る小さく挙手した。
「何?」
するとマリーがギロリと視線を向けながら、短く言った。
「ひぃ!?ノ、ノエルちゃんは確か情報局の暗殺者見習い的なポジションだった気がするのですがぁ〜、何故騎士様にジョブチェンジしているのですぅ〜?」
そして、純粋な疑問からマリーにそう質問すると、
「理由?そんなの騎士の制服が似合いそうだったからに決まってるでしょう?」
彼女がブスッとしたまま答えた。
「コスプレ感覚ぅ!?」
軽すぎる理由を聞いたリゼットが目を剥いていると、横からアネットが補足してくれる。
「というのは冗談で、ちゃんと自分の側にいられる身分を与えて、ノエルを光の当たる場所で暮らさせてあげたかったのよ」
「意外といい話だったのですぅ!?」
ふぇ〜いい話なのですぅ〜マリー様ツンデレ過ぎなのですぅ〜とリゼットがマリーを見直し、今度は感動しかけたのだが。
「あと、女騎士を侍らせてみたかったんだって、側にあるのはいつもメイドかメイドコスの暗殺者ばっかりでしょ?」
アネットがしれっと情報を追加した。
「いや、我々のメイド服はコスプレという訳ではないのですがぁ〜、まあそれは置いておくとしてぇ〜、確かにマリー様の周りはそうなのですぅ〜」
リゼットは自らのメイド服をコスプレ呼ばわりされたことに複雑な気分になりつつ、一応それに同意した。
「あとは、女騎士定番のくっ殺プレイをしたかったらしいわ」
それからアネットがとんでもない理由を付け足した。
「「ふぁ!?」」
リゼットと当事者であるノエルが反応した。
「兎に角そういうことで、これからはノエルがこっちに常駐するから宜しく」
と、ここまであまり喋らなかったマリーが混乱するリゼットに向かって宣言した。
「よ、宜しくお願いします!リゼットお姉ちゃん!」
「ノエルちゃん、これから宜しくなのですぅ〜」
こうして驚きの新メンバーが加入し、新ユニット『マ☆リ☆ア☆ノ!』が誕生したのだった。
といい感じに終わりそうだったのだが、ここでマリーが、
「ということで役に立たない駄牛はリストラします、今日までご苦労様、牧場に帰っていいですよ?」
無慈悲にそう言って、結成早々に解散の危機に陥った。
「ふぇ!?そ、そんなぁ〜ワタシは役にたつ牛なのですよぉ〜」
リゼットはブワッと涙を浮かべながら、マリーに縋りついた。
「ふむ、例えば?」
マリーは嗜虐的な目でニヤリとしながら問うた。
「え、えーとー……そうだぁ!て、手土産があるのですぅ!」
ここで漸く少年達の存在を思い出したリゼットが必死に叫んだ。
「ほお、面白い、見せてみなさい」
「みんなぁ、入って下さいなのですぅ〜!」
そしてリゼットの合図で入ってきた少年たちはそれぞれ、
「マクです」
「スィーです」
「ミリアーンです」
と挨拶し、ペコリと頭を下げた。
「この三人はぁ〜殿下に雰囲気が似ていてぇ〜それっぽい演技も多少はできるのですぅ〜」
「ほー、確かにお義兄様に雰囲気は似ていますね……他には?」
「ふぇ!?ま、まあ、普通に家事とか給仕とかぁ……?」
リゼットは見た目が似ているだけの少年達でもシャケ狂いのマリーなら機嫌を良くしてくれると楽観していたが、雲行きが怪しくなってきた。
すると案の定、
「へー、そう……あと何で疑問系なんですか?……って、これほとんど出オチじゃない!駄牛の分際で私を馬鹿にしているのですか!」
マリーにキレられた。
「あ、あれぇ!?」
一方、駄牛は大焦り。
「皆さんは退場しなさい」
「「「は、はい!」」」
それからマリーが少年達を部屋から追い出した。
こうしてリゼットの、レオニープロデュースの手土産大作戦は失敗に終わった。
「リゼット!あれを手土産などと片腹痛いです!恥を知りなさい!」
少年達が退室すると、マリーはいきいきしながら鋭く駄牛を叱責し、
「も、申し訳ありませんでしたぁ〜!(ぎゃあああああ!失敗したのですぅ〜!やっぱりあのメンヘラ女上司を信じたワタシが馬鹿でしたぁ〜!年増ぁ〜行き遅れぇ〜役立たずぅ〜!)」
一方リゼットは土下座しながら遠方にいるメンヘライオンを呪った。
そして、苦しむ駄牛を見下ろしながらマリーは満足げに頷き、
「全く、これだから駄牛は……あ、あとあの三人はこのブルゴーニュの屋敷で雇うから手配をしなさい」
しれっと告げた。
「気に入ってるじゃないですかぁ!?」
すかさずリゼットが叫んだ。
「ふふ、まあ、正直言えば悪くない手土産ですよ……が、弱いですね!これだけで私は満足しませんよ?ククク……さあ憐れな駄牛はどうしますか?」
するとリゼットとのやり取りで大分いつもの調子を取り戻して元気になったマリーが楽しそうに言った。
と、いい感じの流れになったと確信したリゼットが、ここぞとばかりにドヤ顔で切り札を、それも究極のジョーカーを出そうとしたのだが……。
「ふっふっふ、残念なのですマリー様ぁ!この勝負〜ワタシの勝ちなのですぅ!実はあるお方からの預かりものがぁ〜……」
リゼットが勿体ぶってそう言い掛けた、その時。
「マリーお嬢様、失礼致します」
無慈悲にも使用人の声で遮られた。
「ふ、ふぇ〜折角の見せ場がぁ〜」
「リゼットうるさい、それでどうしたの?」
マリーが凹んでいる駄牛を一喝した後、話の先を促した。
「はい、たった今、王都から陛下の使いの方々が……」
と使用人が言い掛けたところで、入室の許可を取ることもせず、武装した男達と何故か王室のメイド隊が入ってきた。
「近衛騎兵?……と、メイド隊!?」
そして、責任者らしき騎士が国王シャルルのサイン入りの書類を掲げて告げた。
「マリー=テレーズ王女殿下、並びにお付きの皆様、お寛ぎのところ大変申し訳ありませんが、王都までご同行願います」
「何事ですか!まずは説明なさい!」
マリーは騎士を詰問するが彼は動じず、
「申し訳ありませんが速やかにお連れするよう仰せ使っておりますので……確保!」
そのままメイド隊に確保を命じた。
「「「はーい!」」」
「え!?またメイド隊!?ちょ、ちょっとまっ……きゃああああ!」
こうしてマリー一行は強引に王都へ連れ戻されてしまったのだった。
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