第263話「ハッピー?エンド」

 色々とやり過ぎてしまったらしい私がライオンのような美女二人にしばかれた直後。


「殿下の……バカ……」


「アタシの純情を弄びやがって……」


 そう言って拗ねてしまったレオンハート姉妹に、私は某熱血銀行員ドラマのように土下座して謝罪した。


「大変……申し訳ありませんでした……」


 はぁ、調子に乗り過ぎたか……。


 反省反省。


 だが拗ねている彼女達の姿はちょっと可愛いな、と不謹慎にも思ってしまいました。


 やはり、これは普段の彼女達の姿とのギャップからくる、ギャップ萌というやつなのでしょうか?


 ふむ、考えようによっては二人の意外な一面を見られたのだから、ちょっとしばかれたぐらい安いものだったかも?


 などとバレたらお仕置き倍プッシュになりそうなことを私が考えていると、


「殿下、こういうのはもうおやめ下さいませ」


「そうだぞシャケ!もうやめろよ!」


 目の前の二人が拗ねながら怒るという器用なことをしながら言いました。


「はい、二度と致しません……」


 私はヒリヒリする両頬を摩りながら、それに答えました。


 ああ、痛いなぁ。


 はぁ、きっと私はドッキリに向いてないんだな……。


 うん、二度としないことにしよう。


 私は両頬の痛みと言う名の教訓を噛み締めながら、心の中で呟きました。


 そんな感じで、もうドッキリをしないことを心に誓っていると、それまで可愛く拗ねていたレオニーがいつものクールな感じに戻って言いました。


「さて、殿下のおいたについては終わりに致しましょう。これで全ての誤解は解けましたので」


 ふう、終わったかー。


 まあ、何はともあれ、取り敢えずレオニーが帰って来たのだし、ハッピーエンドだろう。


 と私が心の中で締め括ろうとしたところで、レオニーが今度はレオノールに向かって話し始めました。


「それからレオノール」


「はい、姉さん!」


 名前を呼ばれた黒い方は、とても嬉しそうに返事をしました。


「改めて言いますが、貴方を妹として認めてあげます」


 すると、そう告げられたレオノールは大喜びしながらレオニーに抱きつきました。


「っ!?ありがとう姉さ〜ん!」


「離れないさい、暑苦しい!」


 当然レオニーは鬱陶しそうな顔でそれを引き剥がそうとしますが、


「嫌だ、もう離れたくないよ〜」


 パワー重視の双子の妹はびくともしません。


 おいおい、レオノールはちょっとシスコン過ぎないか?


 でも美女二人が戯れ合う姿は絵的に美しいし、アリかもしれない……。


 誰も困らないし、目の保養にも……いや、何でもないです。


 などと私が彼女達の微笑ましい?やりとりを見ながら、漸く今回の件も終わりかと安心しかけた、その時。


「確かに貴方を妹と認めはします!しかし!私は殿下にお仕えする身、貴方などに構っている時間はありませんよ!」


「ええ!?そんなぁ!酷いよ姉さ〜ん……ん?なあ、シャケ」


 レオニーに冷たくそう言われて涙目になったレオノールが、ここで唐突に私に話を振ってきました。


「え?何だい?」


「そういやー姉さんと牛二号がお前のことをずっと『殿下』って呼んでるけど、どういうことなんだ?」


 あ、しまった……。


「あ、それ自分も気になってたッス!」


 それにいつの間にか蘇生したらしいルーシーも続きました。


「「「ふぁ!?」」」


 そんなレオノール達の疑問に我々こと、二人と一頭は驚いて思わず変な声を上げてしまいます。


 ま、まずい!


 一応私の正体は秘密なのだった!


 しかもここには他国の牛……じゃなかった!メイドもいるし、今正体がバレるのは宜しくない!


「え、えーと……それは……そのー……」


「ふぇ〜……ヤバいのですぅ〜」


 私とリゼットが咄嗟にどうしたものかと焦って目を泳がせていると、


「……(殿下、お任せを)」


 レオニーがこちらを見て軽く頷きました。


 おお!流石はレオニー!


 頼りに……。


「レオノール、それはこのお方の本名がリアン=デンカ=ランベール様だからに決まっているでしょう?」


 ならなかったな……。


 え?それを信じろって?


 流石に無理だろう……。


 ほら、案の定……。


「え?」


 レオノールはそれを聞いた瞬間ポカンとした表情になり、


「「それは流石に無理があるのですぅ〜(スッ!)」」


 加えて横から復活した海外産の牛と、何故か味方である筈の国産の牛までもがツッコミを入れてきました。


 おいおいリゼット、お前はこちら側だろう!


 ……まあ、気持ちは分からないでもないが。


 ああ、完全無欠のクールビューティーだったレオニーが、こんなポンコツに……洗脳の後遺症だろうか?


「で、本当はどちら様なのッスか?」


 私が優秀だった部下の変貌ぶりを嘆いていると、ルーシーが更にそう聞いてきました。


 はぁ、これはダメだ……素直に正体を明かすしかないか。


 と、頼みのレオニーは役に立たず、言い訳も思い浮かばない私は思わず頭を抱えたのですが……。


「……おい、黙れ牛共」


 直後、レオノールがドスの聞いたセリフと共に駄牛共に殺気を叩き込みました。


 え?どうしたどうした!?


「ひゃあ!?で、でもぉ〜気になるッスよ〜!」


 外国産の牛はそれに驚き、怯えましたが、無謀にも食い下がろうとしました。


 が、しかし。


「おい……いい加減にしやがれ!」


 そこで黒獅子が殺気マシマシでそう言いました。


「「ふぇ!?」」


 すると、本能的に生命の危機を察した牛達は戦慄して固まってしまいました。


 獅子に睨まれた駄牛……憐れだ……。


「テメェらは姉さんが嘘つきだって言いてえのか?ああん?」


 そして、レオノールは意外……いや、ある意味当然の結論を口にしました。


 すると牛達は命惜しさに一瞬で態度を改め、


「「そ、そんなことはないのですぅ〜(スッ!)」」


 仲良くそう言いました。


「なら黙ってろ牛共!姉さんはいつでも正しいんだよ!」


「「は、はいなのですぅ(ッス)……(テラ理不尽なのですぅ(スッ!))」」


 それから牛達を黙らせた黒獅子は、


「そうだよね!?姉さん?」


 と目をキラキラさせながら言いました。


 するとレオノールに問われたレオニーは、斜め下を見ながら、


「ええ、そうね……」


 後ろめたそうに短く答えたのでした。


 何故だろう、酷いイジメを見た気がするぞ。


 まあ取り敢えず誤魔化せた?からいいけども。


 因みにレオノールはその後、


「そっか、シャケって変わった名前してんだなぁ」


 などとブツブツ言いながら勝手に納得してるのでした。


 ……ま、まあ、いいか……取り敢えず、レオノールが重度のシスコンなお陰で助かったな。


 と私が逡巡していたら……。


 ん?


 レオニーが横からヒジでツンツンして来て、私がそちらを見るとドヤ顔でサムズアップしてきました。


 ええ……マジ?

 

 はぁ、何度も言うけどレオニーってこんな残念なキャラだったっけ?


 うーむ、レオニーが戻っきたのは非常に喜ばしいのだが……この先、凄く不安だなぁ。




 ……と、そんな感じでレオニーの機転のお陰?で強引に話を収めることができ、今度こそ本当に全てが終わったのでした。






 皆様、お久しぶりでございます。作者のにゃんパンダでございます。


 本作の続きを楽しみに待ってくれていた読者の皆様、更新が大変遅くなってしまいまして、本当に申し訳ありませんでしたm(_ _)m


 本日から連載を再会し、徐々に更新ペースを上げていきたいと思っておりますので、今後とも本作を宜しくお願い致します。

 

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