第262話「感動?の再会②」
「アタシのことを妹だって認めてくれるんだね!レオニー姉さん!?うわーん!」
先程までライオンのように猛々しく闘っていたレオノールが、今はまるで子猫のように、同じくライオンのような姉の胸に顔を埋めて泣いていた。
はっ!これは!……獅子の姉妹、シシシマイで新ユニット『獅子舞』!?なんちゃって。
寒いですね、すみません……。
「……わ、私も……嬉しい」
因みに姉ライオンことレオニーの笑顔は若干引き攣っているように見えなくもない……気がする。
きっと天涯孤独だと思って生きてきたレオニーだから、色々と戸惑っているのだろう。
「「ふぇ〜!」」
あと、感動の再会に水を差そうとした愚かな牛達は隅で震えながら出荷を待っている……頑張れよ。
と、まあ色々あったが、美しき姉妹が再会し、私も有能な部下を取り戻し、駄牛共は出荷待ちということでみんなハッピーエンド、良しとしようか。
私がそう思ったところで、レオノールがレオニーに抱きついたままこちらを見て、少し照れながら言った。
「すん……あ、そうだ、シャケ……じゃなかった。ランベールの旦那、ありがとな!アンタのお陰でアタシは姉さんに会えたぜ」
「いや、運が良かっただけさ」
私は微笑を浮かべながら答えた。
実際そうだし。
「まあ、そうかもしれねーけど……これって凄い偶然だよな」
「全くその通りだね」
それから私達は更にそう言って笑い合った。
すると、
「ぐぬぬぬぬぬ……」
レオニーが禍々しいオーラを発しながら、超絶不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。
「レオニー、どうしたの?」
不思議に思い、私が問うと、
「……いえ、殿下は随分と愚妹と親しいようでございますね?」
彼女は拗ねたように言った。
「姉さん酷い!」
ついでに愚妹と言われたレオンハート(妹)が∑(゚Д゚)と露骨にショックを受けている。
ん?これはどういうことだ?……ああ!
そうか!なるほど、嫉妬か!!
まさか液体窒素がライオンの皮を被って歩いてるようなクールビューティーのレオニーが、出会ったばかりの妹を頼りない上司に取られると思って嫉妬!
これは珍しい……そして面白いな!
折角だ、場を和ませる意味でもレオニーを少しからかってやろうか。
そう決めた私は獅子姉妹の仲を深める為に道化を演じることにした。
それから私は悪戯をする子供のようにニヤリと笑いながら言った。
「どうしたレオニー、そんなに私とレオノールの仲が気になるのかい?」
「え!いや、それは……はい、気になり……ます」
私がそういうと、レオニーは歯切れ悪く答えた。
「そうか、だったら教えてやろう!こういう関係さ!」
次に私はそう言いながらレオニーに抱きついていたレオノールを強引に抱き寄せた。
「え!?ちょ、シャケ!?」
するとレオノールは純粋驚き、
「おお!ジーザス!」
レオニーはこの世の終わりのような顔をして膝をついた。
あれ?レオニーってこんなこというキャラだったっけ?
とそんなことを考えていたら腕の中でレオノールが、
「おい……シャケ……離せよ……」
と予想に反して何故か顔を赤らめながら弱々しく言った。
あれ?
思ってたのと反応が違うぞ?
てっきり速攻でしばかれると思ったんだけど……。
これでは当初の、大事な妹が微妙な上司と仲良さげなところを見てレオニーが嫉妬し、そこでレオノールが私をしばき、ウソだよー!一時間前に会ったばっかりだよー、とネタばらしして場を和ます、というプランが成り立たないのだが。
仕方がない、予定変更だ。
もう少し攻めてレオノールにしばかれるとしよう。
「殿下と愚妹は……やはり……そ、そういう関係……だったのです、ね?」
直後にレオニーがそう聞いてきたので、
「ああ……そうだ」
私は彼女が誤解するように、わざとらしくそう答えた。
「ぐはぁ!!!」
するとレオニーは崩れ落ちて床に両手を突いた。
「お、おい……シャケ?」
腕の中ではレオノールが不安そうに問うてきた。
うむ、なんか可愛いぞ。
だがスルーして、勿体ぶって言った。
「そうだ、私達二人の関係は……一時間前に会ったばっかりだ」
さあ、ネタバラシ。
どういう反応になるか楽しみだな。
「……そんなぁ〜二人はそこまでの関係……え?一時間前?……え?え!?どういうことでございますか!?」
驚いたレオニーが聞き返してきた。
お、いい反応だ。
「だから、私達は一時間前に初めて会ったばかりだよ」
私は悪戯っぽく笑って言った。
するとレオニーは混乱しながら更に問うてくる。
「し、しかし!二人はパ、パートナーなのですよね!?」
「そうだよ?私達は『ビジネスパートナー』だ」
因みに私のすぐ横ではレオノールが可愛くコクコクと頷いている。
「ビジネス……パートナー?それはどういう……?」
「ん?つまり仕事上のパートナーだな。実は彼女とは一時間程前にこの酒場の前で出会ったばかりでね。そして話をしたら、レオノールは王都へ書簡を届ける任務ついているのと同時に生き別れた姉……つまりレオニー、君を探していることが分かった」
「そ、それで?」
「それで、秘密裏に行動する為にリゼットしか連れていなかった私はもっと人が欲しいと思っていた。だから渡りに船とばかりに、腕っ節の強さを見込んでレオノールにある条件と引き換えに君を探すのを手伝ってもらう事にしたんだ」
「なんと!」
「その後、今後の方針をこの店で話し合いをしていたところで、レオニー達が来たんだ」
「な、なるほど……」
「だから安心してくれ、君から可愛い妹を奪ったりしないから(キリッ!)」
最後に私はいい笑顔でそう言った。
よし、纏まったぞ。
と、そんな感じで上手くやれたと自己満足していたら二人が、
「か、可愛い?あ、アタシ……が?お、お前、もしかしてアタシのことを……?」
「え?ではその女……我が愚妹はその……殿下にとって……?」
と、聞いてきたので私はそれに即答した。
「え?レオノールはただのビジネスパートナーだよ?それ以上でもそれ以下でもないけど?」
「「!!」」
すると二人は目を見開いて一瞬固まった後、俯いた。
「どう、驚いたかい?ドッキリ大成功……だね……ん?」
そして、肩をワナワナ震わせながら、
「シャケの……」
「で、殿下の……」
「ん?」
あれ?なんか嫌な予感が……。
「バカー!!!」
「バカ野郎ー!!!」
二人が同時にそう叫んで私の顔を引っ叩いた。
「ぎゃあああああ!」
こうして場を和ませようと頑張った私は盛大に外し、美女二人に顔を引っ叩かれたのでした……。
なんでー!?
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