第251話「ようやくレ……エルツー登場①」
親睦も深まり、そろそろ今後の行動について話し合おうか、と私が言ったちょうどその時、入り口の方から声がした。
「エルツーの姐御!奴らです!」
「「「「!?」」」」
会話に夢中になって現在地がアウェーであることを完全に忘れ、プチ宴会をして油断していた私達四人はその声に驚き、慌てて入り口の方を振り返った。
すると、そこには数十人のガラの悪い連中に加えて何と……。
シャ◯みたいな銀色の仮面(顔の上部のみを覆うタイプのやつ)を被り、マントを羽織った痛い女が腕組みをして立っていた。
そして、その痛い厨二女は、
「ほう、私の手を煩わせるとは一体どれ程の者か楽しみだな……フッ、見せて貰おうか、私の縄張りを荒らした連中の実力とやらを!………………ふぇ!?ええ!?で、でん……か!?」
と、セリフまでシ◯アみたいなことを言った後、何故かキョドり始めた。
因みに外見はスラリとした長身で、マントの上からでも分かる豊かな胸部、そして仮面に覆われていない顔の下半分に見える口元は整い美しい。
あと腰まで届きそうな金髪だ……あ、だったらシ◯アと言うよりもゼ◯スかな?
まあ、どちらでも痛いことに変わりはないが。
兎に角、厨二病を拗らせた痛いコスプレ女ということを除けば、かなりの美人な気がする。
ん?あれ?なんか、こんなスーパーモデル並みにナイスバディな知り合いがいたような……?
あ!レオ……。
そして、閃きかけたその時、私の視界に紺色の制服が映った。
……ノールか!
確かにガサツな所を除けば宝◯の女優さんみたいだもんなぁ。
「あん?何だよ?」
次の瞬間、ニュータ◯プ的な勘で何かを感じ取ったらしいレオノールがギロリとこちらを見た。
「ひぃ!?す、すんません……」
海軍の黒獅子は化物か!?
……ではなくて。
兎も角、目の前にいるアレが噂のエルツーとやららしい。
それから改めてエルツーを見た私は取り敢えず、横にいたレオノールと一緒に叫んだ。
「「なんて痛い厨二病女なんだ!」」
すると、何故かソワソワしていたエルツーは、
「ガーン∑(゚Д゚)!?」
と、露骨にショックを受けていた。
「え?そんな……厨二病!?痛い女!?私が!?」
そして、何かをブツブツ言っているので続けて私は言ってやる。
「いや、だっていい年してシ◯アのコスプレして『フッ、見せて貰おうか、私の縄張りを荒らした連中の実力とやらを!』とか、痛すぎじゃない?」
「うぐっ!」
それを聞いたエルツーは更にショックを受け、メンタルに大きなダメージを負ったようだった。
だったら最初から普通の格好にしとけよ……。
と、私が心の中でツッコんでいると横いたレオノールが、
「そうだそうだ!仮面とかガン◯ムの見過ぎなんだよ厨二女!あと、姉さん返せ!」
更に口撃を加え、傷口を抉る。
「くっ……うぅ……認めたくないものだな、若さ故の過ちと言うものを……」
仮面で見えないが、何だかエルツーが涙目になってる気がする。
ちょっと色々可哀想になってきたな。
因みに私の横にいる牛達の反応は、ルーシーが残念なものを見る目をしていて、もう一頭は何故かプルプルと肩を震わせていた。
「……(ププ〜、やっと戻って来たと思ったら重度の厨二病を拗らせた上にぃ〜、大好きな殿下と生き別れの妹にフルボッコにされるとか面白過ぎなのですぅ〜)」
「?」
私がそんなリゼットの様子に首傾げていると、レオノールが言った。
「おいシャケ、アイツなんかショック受けてるぞ」
「うん、確かにそう見えるな」
私はそう答えたところでエルツーへの要件を思い出し、
「……おっと、今はそんなことより……」
と、話題を変えようとしたところで……。
「そんなこと!?私がこんなにショックを受けているのに……?酷いです!」
何故だかエルツーが反応した。
「??」
もう訳が分からないよ!
何やらよく分からないことを言っているのでスルーして本題に入ることにし、私は強い口調で言った。
「おい、エルツーとやら!」
「ふぁ!?は、はい!でん……じゃなかった、コホン、な、何だ、この……イケメン男!」
「え?イケメン男?」
シャケとかチョロいとかしか言われない中でちょっと嬉しい……いや、今はそれよりレオニーだ!
私はこのふざけた厨二女から彼女を取り戻す為にここにいるのだから!
そう心の中で叫ぶと私はキリッ!としたキメ顔で叫ぶ。
「単刀直入に言う!私の大事な(部下である)レオニーを返せ!」
「はぅっ!(真剣なお顔も素敵!それに今、『私の大事なレオニー』って!)」
するとエルツーは何故か両手で口元を押さえてハァハァ言い出した。
え?どいうこと?
普通、悪党はここで横柄な感じで応えるものではないのか?
うーん、コイツやっぱりヤバい奴なのかな?
……いや、だが悪党共を纏めるカリスマがそんな筈はない……と思う。
そう!これはきっと、いきなりこんな事を言われて怒っている……のだと思う……多分、きっと。
だがしかし、コイツ本当にレオニーを倒す程の奴なのか?
なんか本当に怪しくなってきたな。
全然威圧感とか強さも感じないし。
実は私と同じ口だけ番長で大したことないのでは?
もしそうなら、それはそれで逆に交渉の余地もありそうだ。
よし!ここは一気に金貨で引っ叩いて決着をつけるとしようか!
「必要なら金を払う!お前の望む額をな!取り敢えず即金で10億払える!足りなければ後から追加で払うが、どうだ!?」
私はそう叫んだ。
すると、エルツーの返事より早く横から、
「よく言ったシャケ!見直したぞ!」
と、レオノールに褒められた。
……め、珍しく褒められて喜んでなんかいないんだからね!(>_<)
だが、逆に肝心の交渉相手であるエルツーの反応は俯き気味で黙ったまま、と芳しくない。
「……(殿下ご自身が私などの為にわざわざ迎えに来て下さった!ああ、幸せ過ぎて死んでしまいそうだわ!殿下、貴方のレオニーはここにおります!今すぐ貴方の元へ!)」
ふむ、これはどうしたことだ?
まさか、いきなり金の話を持ち出して気分を害したか?
それとも手持ちの金額が安過ぎた?
まずいぞ!
レオニーの命が掛かっているんだ、なんとかしないと……。
と、私が焦り始めたその時。
少し離れたところにいたエルツーがシュバ!っと消えた。
「!?」
そして次の瞬間、エルツーは私の目の前に現れて両手を広げた。
「!!??」
し、しまった!油断した!?
まさかこの厨二女がレオニーと同じことが出来るとは!
……いや、寧ろレオニーが敗北する程強い相手なのだから、これぐらい出来て当然なのか!?
あと、迫り来るエルツーに対して私は本能的に何故か、まずい!このままだと食われる!?と恐怖を感じたのだが、次の瞬間。
「仮面女!アタシのツレに手を出すな!」
という勇ましい叫びと共に、私の目の前に紺色の頼もしい背中が映った。
それから彼女はその長いで鋭く蹴りを放ち、エルツーの腹部にヒットさせて弾き飛ばした。
「ぐぅ!?」
レオノールに蹴られ数メートル程飛ばされたエルツーだが、即座に体制を立て直し油断なく構えた。
だが、流石のエルツーも今の一撃には驚いているようだ。
私もビックリだが。
レオノール、スゲー!いや、レオンハート姉妹スゲー!
全く、早くレオニーを助け出し、君にはこんなに凄い妹がいるのだと教えてやりたいものだ。
おっと、それより今は……。
「すまん、レオノール。助かった」
「油断し過ぎだ旦那!」
私が礼を言うと、レオノールは怒ったように怒鳴り返して来た。
確かにそうだ、反省反省。
「で、これからどうする旦那!」
彼女に指示を求められたが、どうしたものかと逡巡していると、
「……おい、お前は(殿下の)何だ?」
突然エルツーがドスの効いた低く恐ろしい声でレオノールに向かって問うて来た。
あれ?私はスルーですか?
まあ、怖過ぎるし、こちらに来られても困るのだけど……。
とか考えていると、私の前にいるレオノールが大きな胸を張って答えた。
「あん?アタシ?それは……うーん……えーと、アタシは休職中の使いっ走り……じゃなくて……そう!フリーランスの艦長で、コイツの新しい(仕事の)パートナーだ!……あと、さっさと姉さん返せ!」
するとエルツーは絶句した後、何やらモゴモゴ言い始めた。
「なっ!………………ば、バカな!?……あ、新しい……パート……ナー?そ、それ、は……つま、り?殿下の……新しい女……?……はっ!」
そして何か閃いたようだ。
彼女の考えが全く分からない私とレオノールは、その様子を見て困惑するばかりだ。
「「?」」
すると直後、突然エルツーが片手で顔を押さえながら笑い出した。
「くく……あははは、そうか……そう言うことだったのか……」
何これ、ちょっと怖い……。
「「??」」
その様子を見ていた私とレオノール、牛達、それにエルツーの手下達までもが困惑している。
そして、最後に何かを悟ったらしいエルツーはレオノールのことをキッと睨み付け、
「お前の……お前の所為で……私はぁ!」
と叫びながら腰の二振のダガーを抜き放ち、神速で彼女に襲い掛かってきた。
私にはエルツーが消えたようにしか見えなかったし、普通の人間ならば間違いなく反応出来ずに小間切れになるような鋭い攻撃なのだが……。
直後、それに超反応したレオノールが素早くカットラスを抜き放ち、周囲にガキィーーーン!という凄まじい金属同士がぶつかる音が響き渡った。
そして、
「くっ!おらぁ!ナメんなぁ!それと姉さん返せ!」
という掛け声と共に気合いと根性でエルツーの攻撃を受け止め、再び弾き飛ばした。
すげー……流石は海の女でレオニーの妹だな、と思わず私は関心してしまった。
一方、渾身の一撃を弾き返されてしまったエルツーは、
「ぐうっ!……はぁはぁ……よくも、よくも……私の……」
先ほど蹴られたダメージが残っているのか少し苦しそうに呻きながら、併せて呪詛の言葉を吐いている。
だが、かと言って怯む様子はまるでなく、レオノールを血走った目で睨みながら、
「よくも!私のモノ(男)を奪ったな!」
と寧ろ凄まじい闘志放ちながら感情を剥き出しにして叫んだのだった。
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