第249話「シャケと黒獅子と牛×2①」
「おい、何見てやがる!見せ物じゃねーぞ!?この……シャケ野郎!」
真っ黒に日焼けしたレオニー(海賊バージョン)、略して黒ニーはキレながら私に向かって叫んだ。
「!?……何でシャケ!?」
そしていつの間に日焼けを?
この短期間で彼女に何があった!?
変わり果てた姿の黒ニーに罵声を浴びせられ、私が混乱してフリーズしていると、次に彼女は私を庇って前に出ていたリゼットを見た。
そこで私は思った。
私がシャケならばリゼットは絶対『このウシ娘が!』と怒鳴られるだろう、と。
しかし、黒ニーは私の予想を裏切った。
彼女はホルスタインメイドを見ると目を見開き、その後戸惑ったような様子になったのだ。
「……と、え?ルーシー!?……の色違い?」
え?何?色違い?
というかルーシーって誰?
私がそんな疑問を頭に浮かべていると、リゼットが涙目で抗議した。
「ふぇ!?久しぶりに会った途端にそんなル◯ージみたいな扱いは酷いのですぅ〜」
それから彼女は、やめておけばいいのに反撃に出た。
「うう〜……て言うかぁ〜レオニー様ぁ〜。それはジャック・スパ◯ーのつもりですかぁ?いくら傷心中だからってぇ〜海賊のコスプレとか痛すぎるのですぅ〜」
そう、リゼットはニヤニヤしながら黒ニーの服装についてツッコミ始めたのだ。
それに私もちょっとした冗談のつもりで乗り、
「リゼット、確かにあのコスプレは痛いが、あれは海軍の制服ではないのかな?だからどちらか言えばノリ◯トン提督だと思うのだが……」
と言ったところで黒ニーがキレた。
いや、既にキレていたが更にキレた。
まさにキレキレだ。
「黙れ!そこのシャケと牛!これはコスプレじゃねぇし、アタシは海賊でもねえ!殺されてえのか!?」
「「ふぇ!?す、すみません!レオニー様(ぁ〜)」」
怒鳴られたので冗談を返した結果、命の危機を感じるハメになった私とリゼットは即座に声をシンクロさせながら土下座した。
「っ!?……お、おい、テメーら!」
すると、それを聞いた黒ニーは何故か驚いたような顔になって動揺した。
「「はい、何でしょうか?」」
私達は恐る恐る問い返す。
(な、なんだ!?今の謝罪が気に入らなかったのか!?)」
(ふぇ!?こ、怖いのですぅ!)
「今アタシの顔見て何て言った?」
それから黒ニーはそう聞いてきた。
「え?いや……」
「その〜」
一瞬、問いの意味が分からず、私とリゼットは言葉に詰まってしまった。
(なあ、リゼット。もしかして街中でレオニーの本名を呼んだのがマズかったのかな?)
(いやぁ〜そんなことはない筈なのですがぁ〜)
私達が小声でそんな会話をしていると、
「おい!さっさと答えろ!」
剛を煮やした黒ニーにまた怒鳴られてしまった。
「「ひぃ!?」」
仕方ない、ここは私が答えるか……。
「はい、『すみません、レオニー様』といいまひた……」
怖くて噛んじゃったよ……。
因みにリゼットはいつの間にか私の後ろで震えている。
おいウッシー、お前は私の護衛ではないのか?それでいいのか?
と心の中でツッコミを入れていると、そこで黒ニーが喜びと憎しみが入り混じったような黒い笑みを浮かべながら言った。
「……はは、そうか、そういうことか。まさかこんなところで姉さんの手掛かりが掴めるとは思わなかったぜ……じゃあ早速、話を聞かせて貰おうか?変態貴族さんよぉ?」
「「変態!?」」
何でそうなるの!?
(リゼット!リゼット!やっぱりレオニーが変だし、怖いよ!何とかしてくれ!)
(無理ですよぉ〜!ワタシが百人居たって瞬殺なのですぅ〜)
(いいから何とかしてくれよ!金ならいくらでも払うから!)
(だから無理なものは無理なのですぅ!ていうか殿下が小悪党みたいになっているのですぅ〜)
(くっ、かくなる上は……)
(はいぃ〜、逃げま……)
仕方がないので取り敢えず二人で逃げ出そうかと思ったところで……。
「あ、逃げたら殺すからな?」
と、先に言われてしまった……。
ギロリとこちらを見る黒ニーの目は、それが全く冗談ではないこと語っていた。
「「ひいぃぃぃ!?」」
完全に恐怖で動けなくなった私達が最早これまで、と覚悟しかけた……その時。
「あっれぇー?そこにいるのはもしかしてー、りっちゃんッスかー?」
と、ひょっこり店から出て来た人物が、のんびりとした声で言ったのだった。
「ふぇ?……ル、ルーちゃん!?」
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