第184話「テレビショッピング:RE⑤」

「さ、さて、ご納得頂けたようですので、次の商品に参りましょうか!」


 テンションが上がり過ぎて余計なことまで口走ってしまった私は、誤魔化すようにそう言った。


 危ない危ない、ついつい熱が入って電話とか分割とか叫んでしまった、気をつけないと……。


 さて、気を取り直して次に行こうか。


「続きましては商品No.2『ストリア軍と合同でのコモナ公国侵攻』です!」


 ジャン!(脳内SE)


「「おお!(ワクワク)」」


 二人は一つ目を見て安心したのか、一体どんな素晴らしい商品が出てくるのかワクワクした顔で待っている。


 あの、逆に期待されても……なんだかなぁ。


 まあ、いいか。


「では早速行きましょう!まずはメリットの説明から!」


 ……なのだが、この『コモナ遠征』はさっきの『バイエルライン遠征』と同じく戦争ジャンル?で、被るんだよなぁ。


 しかも二つを比べると、コモナ遠征の方が明らかに規模が小さいから、似たようなことを喋ってもインパクトは無いし……。


 だから被る部分はささっと流し、それ以外の部分をアピールだ!


 私はそう決めると、早速話を始める。


「……始めたいと思うのですが、さてここで父上に問題です!」


 そして、油断していた父上に突然クイズを振ると、


「え!?またワシ?」


 盛大にキョドった。


 だが、私はそれをスルーして高いテンションのまま話を続ける。


「今回の『コモナ遠征』は、先程の『バイエルライン遠征』と同じ戦争ジャンルの商品ですが、得られるメリットに違いはあると思いますか?お答え下さい。さあ、大胆且つ慎重に!アタッ◯チャンス!」


 あ、またノリで変なこと言っちゃった……。


 まあ、いいか。


「え?ええ!?ア、アタック……?う、うーん……同じ戦争だし、あまり変わらないのではないか?」


 父上は戸惑いながら回答したが……、


「……残念!そんなことはないんです!不正解だった父上は一回休みです。お立ちください」


「え?立つの!?」


 と、父上が更にキョドったところで、


「立て!この髭め!もっと勉強しろ!」


 宰相が一喝した。


「!?ご、ごめんなさい……?」


「全く、明らかに条件が違うのに内容が同じ訳なかろうが!」


 そして、やれやれと肩を竦めながら言った。


「ズーン(◞‸◟)」


 宰相閣下に怒られた父上はまたまた肩を落とし、大人しく椅子から立ち上がった。


 あ、これもノリで言ってしまっただけだから本当に立たなくても……いや、だったらトルネードスピンの方が……まあ、いいか。


 話を続けよう。


「え、えーと……では説明致しますね」


「お願いします」


「ズーン……」


「コホン、えー、コモナ遠征のメリットですが、経済的な部分や治安に関する部分で重なっているところは省きます。その上でお話しさせて頂きますが、大きなメリットとしては、まず『戦利品』があります」


「「戦利品?」」


 私がそういうと、二人とも不思議そうな顔をした。


「はい、そうです。具体的にはあの国が持つ莫大な資金と利権です。そして、お二人は今、不思議に思われましたよね?私が何故『賠償金』と言わず、『戦利品』と言ったのか、と」


「「うん」」


 二人共素直に頷いた。


「理由は簡単です。それはコモナを滅ぼしてしまうつもりだからです」


 そして、私は平然とそう言った。


「「何!?」」


 すると、予想外のセリフを聞いた二人は目を見開いた。


 よしよし、今回も順調だな。


「何を迷うことがあるのです?何かと鬱陶しいあの成金国家を排除できるのですよ?」


「で、ですが……」


「確かにそれは魅力的だが……」


 滅ぼす、という単語に驚いてしまった二人が微妙な顔をしているが、これも想定の範囲内。


 勝負はこれからだ。


「それにあの国はバイエルラインと違い、小国ですから完全に滅ぼすことは容易いではありませんか!しかもあの国の軍は対外的な戦争の為ではなく、殆ど国内の治安維持の為に存在しています。ですから、本気で攻めれば連中など瞬く間に全滅するか、即座に降伏するでしょう!」


「いや、そう言うことではなく……」


「流石に滅ぼすのはなぁ……」


 尚も渋い顔をする二人に、私は似非スマイルを顔に貼り付けながら付け加える。


「あ、ご安心を。滅ぼすと言っても別に皆殺しにする訳ではありません。公王家には何処かへ退去して貰えれば十分ですし、国民を傷付ける意味などありませんからね」


「「ほっ……」」


「つまり、今回の遠征を行えば短期間の内に公王家を追い出し、領土を併合出来るのです。そして、それに加えてあの国が集めた大量の金と、カジノの利権を押さえることが出来ます!」


「「し、しかし……」」


「あ、カジノの業者や公国民は今まで通り……いや、今までより税を安くしたり、援助をしたり、権利を保証したりして懐柔しましょう。そうすれば今後、あの地域は喜んでランスの為に金を稼ぎ続けてくれます!そして、もしそうなれば!そうなればですよ!?我が国の財政は安泰なのです!」


 どうだ、中々魅力的だろう?


 と、思ったのだがここで父上が、


「確かに凄く良いプランだとは思うが……しかし、連中も生き残りをかけて軍事的、政治的にあらゆる手段で抵抗する思うのだが、本当に大丈夫なのか?」


 純粋な疑問を口にした。


 え?大丈夫かって?


 そんなこと分からないに決まっている。


 だが、しかし!


 ここでそれを言う訳にはいかないし、何とかするしかないのだ!


 私が生き残る為には!


 そして、

 

「勿論、無抵抗ではないでしょう。武力が無い分あの国は豊富な資金を使いあらゆる手段を取るでしょうから。金で傭兵を雇ったり、金で他国を動かし政治的な手段で我が国を止めにきたり……というか、現にコモナに泣きつかれたと思われる国々の外交官が詰め掛けている訳ですが……ですが勿論ご安心を!全て当社の優秀なスタッフが……じゃなかった、私が責任を持って対応致しますので!」


 キリッ!と、ドヤ顔で根拠のないセリフを決めた。


 ああ、この後どうしよう……。


「「おお!頼もしい!」」


 だが、取り敢えず父上達は納得してくれたから良しとしよう。


 では、次だ!次!


「さて、それでは次のメリットですが、それは……」


「「それは?」」


「『ストリアとの関係』です!」


「「ええ!?」」


 本日、既に何度目か分からない予想外の内容に二人は目を剥いた。


「……というか実はこれが本命です」


 更に私がそう告げると、


「本命?それは一体どういう……?」


 宰相が戸惑いながら聞いてきた。


 そして、私は似非スマイルのままそれに自信を持って即答する。


「ズバリ、『接待』です!」


「「!?」」

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