第182話「テレビショッピング:RE③」
さあ、いよいよ商品のご紹介です!
ジャン!という脳内SEが響いた後、
「まずはその一!『バイエルラインへの侵攻』から!」
私は商品名?を叫び、続いて最初のセールスポイントの説明を始める。
「さて、まずこの商品……コホン、この件ですが、お二人方には一見戦争などあらゆる資源を消費する……いえ浪費する愚かな行為に見えるでしょう?」
続いて私はそう問いかけた。
「うむ」
「はい」
それに対して二人が頷いた、その直後。
「でも、そんなことはないんです!寧ろ、今の我が国にとって、こんなにメリットがあるものは他にないぐらいなんですよ!?」
私は大袈裟なジェスチャーを加えながらテンション高く叫んだ。
「「え!?」」
当然、父上達は目を見開いた。
よしよし、一気に押していこう。
「ではまず、経済的なメリットからお話し致します!えー、当たり前ですが、戦争はあらゆる資源を大量に消費するという点を当然お二人は理解されていると思います。しかーし!だからこそ良いのです!」
「「!」」
「それは……その戦争に伴う巨大な消費によって、停滞した経済を一気に回すことが出来るのです!」
そして、私は力強く叫んだ。
「なんと!」
「そうか、なるほど!」
対して二人は純粋に驚いている。
因みにこれは、第一次大戦や朝鮮戦争時に日本が空前の好景気だったことを思い出したので、それをヒントにした。
「では具体的にご説明致します。こちらにデモ機を用意してありま……じゃなかった。えーと、戦争で消費する物資の中で特に重要な物の一つが兵糧です。いくら精強な兵でも腹が減っては戦は出来ませんよね?で、その兵糧、主に小麦ですが……ここで一つお聞きします。我が国の今年の麦の収穫量は如何でしたでしょうか?」
ここで私が突然父上に質問をすると、
「え?麦?確か記録的な大豊作だったな……あ!分かったぞ!その潤沢な兵糧使い、国土を増やすべきだと言いたいのだな!」
一瞬キョドったあと、ドヤ顔で回答したのだが……。
残念ながらそれでは不十分だ。
「父上、それでは不十……」
そして、私がその不十分な回答に対して、そう言いかけたところで、
「それでは不十分だシャルル。全く、こんなことも分からないようでは国王失格だぞ」
横から宰相閣下が呆れたように言った。
「ガーン!∑(゚Д゚)」
父上は大ダメージを受けた。
だが宰相閣下はそんな父上をスルーして話を続ける。
「殿下、正解は記録的な大豊作の影響で、小麦の価格が大暴落して困っている農民を救う為、ですね?」
おお!流石にこの人は鋭いな。
「流石は宰相閣下!仰る通り!完璧な答えです。そう、経済的なメリットの一つ目は小麦価格の暴落で困っている農民を救うことなのです!」
「な、なるほど……良い案だ」
と、ここでダメージから多少回復した父上が復活し、感心してそう言った。
「戦争を利用して経済の活性化とは!……平時では国が小麦を買い上げられる量は限られていますが、戦争となれば話は別ですからね」
そして、宰相も同意して頷いた。
「はい、しかも更に都合が良いのはバイエルラインが我が国と逆で大凶作だということです!あの国は元々軍事を重視し過ぎる余り、農業の発展が遅く収穫量が少ない上、悪天候で今年は更にそれが減っていますからね!」
ついでにいうと、恐らくセシルとの縁談も肥沃で広大な農地と莫大な財力を持つスービーズ公爵家を手中にすれば、バイエルラインの食料事情を改善できると考えたからなのだと思う。
「つまり、連中は飢えています(多分)。そしていつ暴発するか分からない状態です(適当)。ですから、今回遠征を行うことで危険なあの国を無力化出来るというのは大きなメリットですし、その上余分な小麦まで消費出来るのです!更に言えば、あの国を適度に痛めつけた後、復興を支援する目的だと偽って高値で食料を売りつければ外貨も獲得出来ます!」
「凄い!……だが、息子が黒い……ワシ、なんかショック……」
ええー……そこは喜べよ。
「黙れ髭。ふむ、殿下……流石です」
逆に宰相閣下には褒められたぞ!
ちょっと嬉しい。
「ありがとうございます!しかし、まだまだメリットはありますよ?今、小麦と言いましたが、他にも武具、防具、馬、その他食料や酒、茶などの嗜好品も大量に消費します。ですから、これらの需要に応える為、製造、輸送、販売等、国中のあらゆる人間が仕事に追われることになるでしょう」
「素晴らしい!」
「はい」
ふう、これでやっと一つ説明が終わったな。
次も頑張ろう!
「そして、二つ目、治安です!」
ジャン!
「「治安?」」
「はい、治安です。更に言えば人、ですね!」
「「人?」」
「そう、人です。戦争で消費するのは今言った物資だけではありません。戦争は兵士を大量に必要とし、消費します」
「うむ、まあそうだな」
「ええ、そうですね」
それがどうしたんだ?と、頭に?を浮かべながら、二人は取り敢えず頷いた。
「確かに人命が失われるのは悲しいことです……しかし!ランスという国全体の利益の為には必要な犠牲なのです。そして、何故今兵士のことを持ち出したのか、と言いますと……ここで重要なことは、その兵はどこから集めるのか、という点です」
「兵を集める?そんなのバイエルライン方面の諸侯に出させれば良いではないか?……だが、治安?……分からん」
父上はまた分かんなーい!という顔でそう言ったが、
「……そうか!分かったぞ!流石は殿下!……それに比べてシャルル、お前と言うやつは……それでも国王か?もうそんな髭剃ってしまえ!」
優秀な宰相閣下は逆に私の言わんとしたことを即座に理解し、続いて父上を再びディスった。
「ガガーン!∑(゚Д゚)」
そして、再び大ダメージを負った父上は、机の上で崩れ落ちた。
……ま、まあ、いいか。
「殿下、治安が悪いというのは、先日の作戦で多くの諸侯を粛清した影響で、政治的混乱や主家を潰された影響で多くの騎士や兵士が職に溢れて浪人になっていることを言っておられるのですね?」
そして、宰相閣下が私に答えを確認してきた。
「素晴らしい!その通りです、宰相閣下!つまり、今回の戦争でその失業した連中を雇うのです!そうすれば治安は瞬く間に回復し、加えて彼らに溜まった不満を戦場で存分にハラさせることができます!」
「「おお!」」
「しかも!しかもですよ!?遠征に参加中の兵士は当然、酒、女、ギャンブル、美味い食べ物などに金を湯水の如く注ぎ込みますから、連中に支払う金もどんどん回ります!更にその上遠征そのものに掛かる費用は先日粛正した貴族達から没収した財産があります!」
「「素晴らしい!!」」
と、二人が目を輝かせて叫んだ。
よし、もうひと押しだ!
「ですが、まだこれだけではありません!」
「何ー!?」
「何ですと!?」
「バイエルラインを屈服させた後、賠償金も取れます!ですから、我々の懐は痛まない……いや、大いに温かくなるのですよ!」
「素晴らしいな!流石は我が息子!」
ふ、やはり人間は儲け話には弱いものだな。
「完璧です、殿下!……あ、いやしかし……」
ん?
「確かに凄いプランではありますが……」
どうした宰相?
もしかして私のダイレクトマーケティングに不満でも?ああん?
「宰相閣下、何かご心配が?」
「ええ、国際関係が少し……実は現在、多くの国の外交官達が外務省に詰め掛けておりまして……このままでは我が国が国際的に孤立する可能性が……。それに万が一、諸外国が連合して攻め込んで来るという事態も……」
ああ、なるほど。
そんなことか。
勿論それぐらい考えてあるさ!
我がテレビショッピングに隙はない!
そして、私は最高の営業スマイルを浮かべると、深刻そうな顔の宰相に言った。
「ご安心下さい!勿論考えておりますとも!」
さあ、後半戦の開始だ!
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