第181話「テレビショッピング:RE②」
予想外に状況が悪いことを悟った私は、今すぐ計画を始めることにした。
そして、そう決めた瞬間、私は父上に向かってガバっと頭を下げて叫んだ。
「父上!宰相閣下!身勝手なことをしてしまい、大変申し訳ありませんでした!……しかし!全てはこの国の……このランスの繁栄の為なのでございます!」
すると、二人は……。
「な、何ぃー!?」
「何ですと!?」
よしよし、素直に驚いてくれた。
「ど、どういうことなのだ!?」
「そうです殿下!ご説明を!」
続いて二人が食い気味に理由を問うてきた。
さあ、ここが勝負どころだ!
そして、私は心の中でそう言ってから神妙な顔で、
「はい、繰り返しになりますが……全てはこの国の為にございます。そして、何故私が独断でこのような大それた事をしたのか、と申しますと……それは」
と、勿体ぶりながらいった。
「「そ、それは?」」
二人が固唾を飲んでこちらを見ている。
次に、私はここで片手を自分の胸に当てて苦しそうな顔を作り、
「それは……私がこの国の王子であり、そして私がこの国と民を愛しているからなのです!」
芝居がかった感じで叫んだ。
ちょっと恥ずかしい。
「「!?」」
まあ、メンタルが少し削れた代わりに彼らの興味を引けたから良しとしよう。
さあ、続きだ。
私は真剣な表情のまま話を始める。
「ひと月前、私は身勝手にも自由を求め、王宮を去ることを選びました……が、しかし!その時、私は思ったのです。本当にこのままでいいのか、と。王族に生まれた者としての責務を……国や民を守ると言う責務を放棄していいのかと!!」
「「おお!」」
お、感動してくれたっぽい。
「そして私は迷ったまま時を過ごし、計画通り王宮を去りました……が、しかし!」
「「!?」」
「その直後に思ったのです!やはり、私は愛するこの国を!そして全ての民を見捨てることは出来ないと!」
「なんと!」
「殿下!」
二人とも更に感動してくれたようだな。
しかも父上に関しては若干目が潤んでいるようにも見える。
うん、順調順調。
ん?これはもしかして私には役者の才能があるのでは!?
と、いかんいかん。
続きだ、続き。
「それから私はこの国の為に働きたいと思い、必死に考えました。この無力で無能で怠惰な私に何が出来るのだろうと。そして、熟慮の末に考え付いたのが……」
「今起こっている事態だと?」
と、宰相が言った。
「はい、その通りです」
「ですが何故、独断でなさったのですか?」
冷静な宰相が至極当然の質問をして来た。
「そうだぞ!我が息子よ、何故だ!何故我々に相談してくれなかったのだ!?」
そして、感情的になった父上がそれに乗っかって騒ぎ、宰相がウザそうな顔をした。
「はい、それについては大変申し訳なく思っています。しかし、黙っていたのは勿論理由があってのことです。それは……お二人の名誉を守る為なのです!」
「「我々の名誉!?」」
「はい、私は今回の件についてお二人にお知らせし、関わらせてしまうと、お二人の名誉が傷付き、また計画自体を実行出来なくなる可能性が高いと判断したのです」
私がそういうと、二人は心外だという顔になった。
「まさか、ワシがお前の助言を無下にしたりなど……」
「そうです、殿下!髭野郎の言うと通りです!」
髭野郎?
まあ、いいか。
「お二人共、まずはお聞きください。私はあの十年前の疫病以来、全てが停滞気味のこの国を一気に活性化させ、かつての繁栄を甦らせたいと考えました。ですが、それだけの事を成すためにはちょっとやそっとのことでは不可能です。そこで私は思い切った手段が必要だと考えました。それが今回の一連の騒動です。当然、初めはお二人に相談しようと思ったのですが……熟慮の末やめました。何故ならお二人は、国王と宰相であらせられるからです」
「「??」」
「平たく言えば、お二人には立場相応のしがらみや名誉があるからです。今回の計画は相当強引に事を進めなければなりませんし、更にかなりの血を流します。それを考えた場合、お知らせしてもお二人の立場では動けない、いえ、それどころか私を止めなければならないでしょう。ですが、あくまで私が独断で事を進め、お二人が計画を知らなければ、また無関係ならば、全ては無能な王子がやってしまったので仕方がない、で済むのです」
「なんと!」
「そんな、では、殿下は我々のことを……」
「はい、ですから知らせない方が良いと判断しました。私は多くの血を流す今回の計画で、大切な父上と尊敬する宰相閣下のお二人の名前に傷をつけたくなかった……なので全て私の独断で実行しました。また当然汚名も私が引き受けます。まあ、廃嫡寸前の無能な王子一人という代価を払えばランスがかつての繁栄を取り戻せるのですから、安いものですよ」
私はここで微笑を浮かべて見せた。
すると、
「そんな……息子よ……」
と、父上は涙を流したが、相変わらず冷静な宰相閣下は、
「あの殿下、理由は理解出来たのですが……一つ質問が。殿下は今回の計画をどのように実行に移されたのですか?また、かつての繁栄と仰られましたが、今回の計画はそれを取り戻す為にどのような意味があるのでしょうか?」
と聞いてきた。
手強い。
だが、当然答えたは考えてある。
「はい、勿論お答え致します。実行した手段につきましては、実は城を出た直後、彼女達に手紙を出しました。あ、スービーズ公には謝罪をしなければなりませんね。貴方の素晴らしいご息女である、心優しいセシルをこんな事に巻き込んでしまい、本当に申し訳ありません」
と、私は再び深々と頭を下げた。
しかし。
「……え?優しい?戦争と聞けば喜んで飛び出して行くアレが?殿下、気は確かですか?……いや、失礼。貴方様程の器をお持ちの方にとってはアレぐらいの暴走はきっと何ともないのでしょう。いや、なんと慈悲深い!あのような歩く火薬庫を優しいといってくださるとは!このエクトル、感謝致します」
宰相の反応は不思議な感じだ。
「え?」
今なんて?
なんか宰相閣下が意味のわからないことを言っていた気がするが、まあいいか。
兎に角、二人の興味は引けた。
これでちゃんと話を聞いてくれる!
「ぐす……それでは殿下、具体的な計画とその理由をお聞かせ頂けますか?何故、今これだけの騒動を、また何の為に起こす必要があったのか、を」
ぐへへ、勿論ですとも♪
さあ、一気に行くぞ。
そして。
私は深呼吸を一つしてから、一気に捲し立て始める。
「はい、それは……なんと!今なら誰も損をせずに!しかも、しかもですよ!?非常に多くのメリットを得ることが出来るのです!」
ジャン!
と言う脳内SEと共に、ひと月前と同じ文句をタ◯タ社長のような甲高い声で叫んだ。
「ほ、本当に!?」
「そんなことが……」
すると、二人とも上手く食い付いた。
よし!
「勿論ですとも!短期間で!しかもお二人の名誉には一切の!一切のですよ!?傷を付けずに可能なのです!」
更に、私は続けて自信たっぷりに大袈裟なジェスチャーまで付けてそう言った。
「そ、それで?」
すると、恐る恐るという感じで父上が続きを促してきた。
よしよし、掴みは完璧だ。
私が心中でほくそえんでいると、
「ですが、そうは言っても一連の行動にどんな意味があるのですか?」
宰相閣下がこれまた冷静に質問をしてきた。
おっと、この人には余計なことを考える暇を与えないようにどんどん喋らなければ!
私はエセスマイルを浮かべると、
「と、そう思うでしょう!?ですが!ご安心下さい!今からきっちりとメリットをご説明致しますから!」
甲高い声でテンション高く叫んだ。
「「おお!」」
それに続いて、ジャン!という脳内SEが響き、
「まずはその一!バイエルラインへの侵攻から!」
私は最初のセールスポイントの説明を始めたのだった。
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