第151話「番外編 バッドエンド集⑤」

『シャケリアン、貴方は憐れにも死んでしまいました。ですが心配することはありません。貴方には選択肢があります。この世界で別人として生まれ変わるか、別の世界に転生し、特典として与えられるスキルを武器に魔王を倒す使命を背負うか。さあ、選びなさい』


 船から落っこちたシャケが、暫くのちにその生涯を終えた瞬間、謎のセリフが彼の魂に聞こえた。


 そして、シャケがどちらを選ぼうか迷っていると、


「ふぁ!?」


 目の前が暗転し、気がつくと五度目の婚約破棄騒動の直後へと戻っていた。




 気がつくと、私は一人で廊下の真ん中に立っていた。


 ん?あれ?これは一体……というか私は何をしていた?


 だが、まずは……、


「持っていくのはアンタだ!」


 と、言わなければいけない気がしたので、取り敢えず何処かの『素晴らしい』感じのラノベのようなセリフを叫んでみたものの……。


 さて、えーと、これからどうしようか。


 中略。

 

「では、私が助けを求めるべき相手は……」


【選択肢を選んで出荷先を決めて下さい】


 ①クリア済み

 

 ②クリア済み


 ③クリア済み


 ④クリア済み


 ⑤うーん、どうしたものか……全く分からん。


 ⑥仕方がない、不本意だが弟のフィリップに助けを求めてみるか


 さてと、①から④は何故か選んではダメな気がするし、フィリップに頼るのは嫌だしなぁ……うん、分からん!


 ということでここは、⑤を選択だ。


 ……あれ?ということは次回は強制フィリップルート?




「うーん、どうしたものか……全く分からん」


 はあ、一体どうしたものか。


 というか誰に相談していいのか、すら分からない……。


 ああ、困った。


「まあ、取り敢えず部屋に帰ろうか」


 そう思って私が歩き出し、廊下の角を曲がろうとした瞬間。


「はぁ……どうしよう……うわっ!」


「ああぁ〜もうぅ、どいつもこいつもぉ、人使いが荒いのですぅ……ぐぇ」


 出会い頭に突然現れた誰かと激突し、相手が尻餅をついた。


「ああ!すまない、大丈夫か?」


 慌てて相手を見ると、眠そうな目をした巨乳の若いメイドだった。


「ふぇ、痛かったのですぅ」


「悪いな、私の不注意……で!?」


 続いて彼女を助け起こそうとした時、改めてその状態を確認し、私はキョドってしまった。


 何故なら現在、目の前の彼女は床に尻餅をついた時にスカートが捲れ、絶賛大サービス中なのだから。


「ふぇ?助けてくれないのですかぁ?けちんぼですなので……すぅ?……ひゃっ!」


 彼女は動きを止めてしまった私に不満を漏らした直後に自分の状態に気付いて慌てた。


 そして、慌ててスカートを直して黒い下着を隠した。


「うぅ〜、恥ずかしいのですぅ………………あのぉ、見ましたぁ?」


「……うん」


 ああ、とんでもないものを見てしまったなぁ。


 私が微妙な反応なのは、普通なら喜ぶべきシチュエーションなのに……何というか、見てはいけないものを見てしまったからだ。


 それは勿論、パンチラどころかパンモロ状態の黒い下着のことではなく

……。


「そうですかぁ、見てしまいましたかぁ……仕方ありません、可哀想ですが消えて頂きましょうか」


 セリフの途中で声のトーンが低くなり、雰囲気が変わった。


 あ、これヤバいやつだ……。


「ちょ!?ま、待て!私は……」

 

 恐ろしいセリフに私が動揺していると、巨乳メイドは私が見てしまったそれを……太ももに巻きつけてあった大量のナイフの一本を手に取った。


「ではさよな……ら?」


 だがその時、メイドが奇跡的に私が誰だか気付き、


「ふぇ!?貴方はぁ……いえ、貴方様はぁ、ボンクラ王子のマクシミリアン様ぁでは!?」


 驚いたように言った。


「ああ、如何にも私はマクシミリアンだ」


 ふぅ、助かった……というかちょっと待て!


 今コイツ私のことをボンクラって言わなかったか!?


「ふぇ!こ、これはぁ、大変失礼を致しましたぁ!ごめんなさいなのですぅ」


「ぐぬぬ……まあ、ぶつかった私も悪いし、気にするな」


「あ、ありがとうございますぅ」


 と、私の言葉に若いメイドは安堵の表情を浮かべた。


 あと、何処とは言わないが、改めてよく見ると本当に大きいな。


 きっとあだ名はホルスタインに違いない。


「ところで、その手に持っている獲物といい、それを知った私を消そうとした手際といい、やはり君は暗部なのか?」


「はいぃ、左様でございますぅ……あっ!今更ですがぁ、私はぁ、マリー様付きのメイド、リゼット=J=ホルスタインと申しますぅ」


「そうか、リゼット……か。宜しくな」


「はいぃ!」


 そして内心ホルスタイン!?見た目通り過ぎるだろう!と、非常に失礼なことを考えていると、


「あのぉ、殿下ぁ」


「ん?なんだリゼット」


 リゼットがおずおずと聞いてきた。


「こんなところでぇ、殿下は何をされていたのですかぁ?」


「え?あ、ああ、そうだった。自室に戻って考えを纏めようと思っていたんだ」


 ああ、現実を思い出したらテンション下がるな。


「あ、邪魔してごめんなさいなのですぅ」


 あ、そうだ、良い事を思い付いたぞ!


 折角だから……。


「大丈夫だ、問題ない……あ、そうだ!ちょうどいい、少し話を聞いてくれないか」


「ふぇ?勿論私などでよろしければぁ」


「実は……」


 ………………。


 …………。


 ……。


「……と、まあ、色々あってな。まあ、全て自分が悪いのは分かっているのだが、これからどうしたらいいか、全く分からないのだ」


 私はリゼット相手にことの顛末を説明した。


「なるほどぉ、うーん、取り敢えずしっかり考えた上で素直に謝ってみたら如何ですぅ?」


 すると、リゼットはそう答えた。


「え?素直に謝る?」


「はいぃ、怖がらずに、そして難しく考えず、素直に謝って、反省してることをきちんと伝えてぇ、それから今後自分がどうしたいかを示すのですよぉ」


 つまり、誠実に生きろってことか。


 そうか、それが私に足りなかったものだったんだ。


 よし、アドバイスに従うとしよう!


「素直に謝って……自分がどうしたいかを伝える、か。つまり、今の自分に欠けているのは誠実さ。なるほど……うん、いいな!そうしよう……リゼット」


「はいぃ」


「助かったよ、ありがとう。この礼はいずれ……ではな。失礼する」


「はいぃ、ご武運をぉ!」


 私が礼を言うと、リゼットは笑顔で私を見送ってくれたのだった。




 因みにシャケを見送ったリゼットは……。


「マクシミリアン様ってぇ、噂と違ってとってもいい人でしたねぇ、こういう王族なら一生懸命に守ってあげたいと思えるのですぅ……それに比べてあの腹黒いちびっ子はぁ……はぁ」


 愚痴をこぼしたのだった。




 それから数週間後。


 私は出先で賊に襲われた。


 幸い、レオニーと赤騎士の活躍で連中を瞬殺できたが、その直後。


 大人しく拘束されるかと思われた敵が、突如私に向かってナイフを投擲した。


 咄嗟のことで私は動けない。


 そして。


「むぐぅ」


 私は目の前が真っ暗になった。


 いきなりリゼットに抱きしめられた上、顔に胸を押し付けられて。


 何が起こったかを説明すると、ナイフの投擲を見たリゼットが私を守る為、咄嗟に私を抱きしめて自らの身体を盾にしたのだ。


 これだけなら護衛として優秀なのだが、流石はドジっ子ホルスタイン。


 抱きしめた時に、勢い余ってそのまま私をその巨大な胸に押しつけ過ぎてしまい、お陰で呼吸が出来ず、情け無い声を上げてしまった。


 その上、そのままの状態を保とうとするものだから、目の前が真っ暗と言う訳だ。


 と言うか、さっきからグリグリ押し付けられ続けて本当に息ができないのだけど!?


 く、苦しい、い、息が……。


 も、もう……ダメだ。


 数分後。


「ふぅ、マクシミリアン殿下ぁ、もう大丈夫ですよぉ〜……あれぇ?殿下ぁ?殿下ぁ〜!」


 返事がない、ただの(シメられた)シャケのようだ。

 

 バッドエンド⑤『酸欠のシャケ』




 猛獣図鑑No.5


リゼット(学術名パンツィーラ=ホル=スタイン)


 パンチラホルスタインは、イヨロピア大陸に生息するドジっ子な草食動物である。特徴は、普段は大人しいが、ピンチに陥ったり、必要な場面では『裏モード』という戦闘用の真面目モードに切り替わり、かなりの強さを発揮する点である。

 またその際、太ももに巻きつけたナイフを使用する戦闘スタイルの為、スカートを跳ね上げてそれらを取り出すので、パンチラどころかパンモロの大サービスになることが多い。実はそのような理由もあり、下着を見られた相手を確実に仕留めたい、という心理が働く為、敵を逃すことがほとんどなかったりする。

 しかし、高い戦闘力を持つにも関わらず、不幸体質な上、コアクマリーの下僕で獅子ニーの手下である為、いつも酷い目に遭ってばかりである。

 そんなストレスを抱えている所為か、最近では頻繁に姉ットと夜の街へ出掛けているらしい。

 なお、この生物は今のところ、他の凶悪な猛獣達のようにリアン鮭の成分を必要としない。ただし、リアン鮭のルックスは好みではあるので、将来的には未知数で、いつまでも草食のままでいるとは限らない。

 なお、勘違いされがちだが、この生物は純粋なホルスタインではなく実はジャージー種とのハイブリッドである(適当)。




 キャラクター紹介


 リゼット=J(ジャージー)=ホルスタイン 十九歳 獅子の手下、小悪魔の下僕、白熊の天敵(サイズ的に)、姉ピンクの親友にして飲み友達


 では、まずはお詫びを。


 クイズ出すの忘れました、ごめんなさいm(_ _)m


 まあ、どうでもいいことでしょうけど……。


 で、リゼットのモデルは……実は、最初の頃はいませんでした。

 当初、彼女のことはオリジナルキャラのつもりで書いていたのですが、途中で某黒い執事のメ◯リンに似ている気がする、という読者様からの感想を頂き、私も確かにそうだ!と思ったので、それからはメイ◯ンをイメージしながら書いています。


 で、リゼットですが、実は暗殺未遂の回のみ、一度きりの登場の予定でした。シャケを地面に押しつけて怪我をさせるドジっ子、そしてシロクマと獅子に折檻されて、フェードアウト、という流れで。

 ですが、アネットと同じくお笑い担当としての需要が発生し、それからはいじられ役として活躍?しました。お陰でアネットという友人ができたり、クールな裏の顔が出来たりしました。実は裏モードは予定に無かったんですけどね(^_^;)

 そして今ではヒロインではないものの、準レギュラーとして活躍している訳です。

 これは残念?ながら、このドジっ子ホルスタインがシャケのことを男として好きな訳ではないのが理由です……まあ、逆にそのお陰で白熊に八つ裂きにされずに済んでいるのですがね(^_^;)

 さて、では折角なのでリゼットにはしっかりファンサービスしてもら……うわっ!何だ?……狙撃!?いや、投げナイフ!?や、やめろー!……ああああああああああ!

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