第146話(第一部最終話)「エピローグ+あとがき的なもの」
場面は『父親達の奮闘』より少し戻り、広間の劇団シャケによる公演が終った直後。
マクシミリアンが腹パンを食らい、近衛兵に引きずられながら無様に退場したところから。
三人が会場の扉を抜け、近くの控室に入ったその瞬間。
「「殿下、申し訳ありませんでした!」」
それまでマクシミリアンを乱暴に掴んでいた近衛兵二人が急いで手を離し、その場に跪いた。
「何を言っているんだ二人共、見事な演技だったよ?よくやってくれたね」
すると、今まで苦しげな顔でグッタリとしているような演技をしていた彼は表情を一変させ、微笑を浮かべながら穏やかに言った。
「ですが、演技とはいえ殿下に手を挙げるなど……」
だが、それでも近衛兵達は申し訳なさそうにしている。
「気にするな、君達は立派に役割を果たしたのだから」
(確かに迫真過ぎて、あの腹パンで本当に気絶しそうになってしまったけどな)
内心苦笑しながら、彼はそう言った。
「ありがとうございます、殿下……しかし、本当に行かれてしまうのですか?」
すると、今度は近衛兵の一人が辛そうに言った。
「ああ、もう決めたことだ」
その言葉にマクシミリアンは少し寂しそうな顔で返した。
「……左様でございますか」
それを聞いた近衛兵はとても残念だったが、それ以上食い下がることは出来なかった。
「さて、そろそろ準備をしようかな……」
そう言うとマクシミリアンは予め控え室に準備しておいた目立たない服に着替え、黒髪のウィッグを被り、眼鏡を掛けた。
そして、最後にレオニーが準備してくれたトランクを持ち、
「では行くとするよ。あと、すまないが皆に伝えてくれ。今までよく仕えてくれた、感謝している、と」
「「殿下……」」
「さらばだ」
マクシミリアンは優しい笑み浮かべてそういうと、男泣きする近衛兵達を残して静かに部屋を出た。
そして、誰にも見送られることなく、ひっそりと宮殿の裏手から去って行ったのだった。
一週間後。
王都の一角にある閑静な住宅街。
その中のこぢんまりとした一軒家にて。
その家には自堕落な若い男が一人で暮らしていた。
昼前になって、ようやくベッドから起き出してくるような類の。
この男は一週間前にこの家に越して来たばかりだった。
男は突然越して来て荷解きを終えると、それから毎日好きなだけ惰眠を貪る怠惰な生活をしている。
ルーティーンはこうだ。
毎日昼前に起きて身支度をすると、偶然見つけた美味い定食屋でブランチ(朝昼兼用の食事)を取り、午後は読書と軽い筋トレ、それに街の散策をして、再び昼と同じ定食屋で夕食を取り、寝る。
まさに、気ままな一人暮らし。
またはのんびりとしたニート生活。
これが、これこそが男の理想だった。
今それを実現し、満たされた男はこの幸せを噛み締め、神に感謝した。
そして、その男は今日もルーティーン通りにのんびりと起き出し、常連になりつつある定食屋に出掛けたのだった。
「ウィッグよし、眼鏡よし。さて、と。今日もこの間見つけた美味い定食屋でブランチと行こうか!」
私は身支度をすると、日課になりつつある定食屋に向かおうと玄関を出た。
すると高く登った太陽の光が自堕落な私を咎めるかのように降り注ぎ、私は思わず目を細め、
「ああ!目が!目がぁ〜!」
などと何処かの大佐のようなセリフを叫び、派手に仰け反った。
って、何をやっているんだ私は!
ついつい新生活でテンションが上がり、一人でバカなことをしてしまった……。
もし今のをご近所さんにでも見られていたら……。
ああ、恥ずかしい。
そして、私は自分の奇行を反省しながら、再び目的地に向かってシャレオツな石畳を歩き始めた。
さて、今日は何を食べようかな……ん?
あ、これはこれは!
皆様、ご機嫌よう。
実質的に平民になったマクシミリアン……いえ、リアン=ランベールです。
私、お陰様で今は王都の一角にある静かな住宅街に住んでおります。
宮殿を出てから早、一週間。
豊かで自由な平民生活を謳歌しております。
いやー、一人暮らしは最高です。
誰にも気兼ねせず好きなように動ける、という贅沢を噛み締めております。
で、取り敢えずはこのままニー……いえ、自宅警備員を引っ越しまで続ける予定ですが、ルラックの地へ引っ越した後は、何か仕事をするつもりです。
それ以上何もしないと社会復帰出来なくなりそうですし……。
まあ、辺境に仕事が有るのか心配ではありますが……それはゆっくり考えれば大丈夫でしょう。
何故なら、お金は沢山あるのだから。
まあ、取り敢えず先のことは置いておくとして……。
ああ!このままずっと自由な生活が出来ると思うと、胸が高鳴ります。
先程のような奇行に及んでしまうぐらいに!
「自由万歳!平民生活ばんざ……」
と、思わず私がそんなことを口にした、その瞬間。
「そこの平民!アタクシを助けなさい!」
突然、背後から耳に突き刺さる甲高い声が……。
「は?」
驚いて私が振り返ると、そこには……。
『悪役令嬢』がいた!?
第一部 完
あとがき的なもの+今後の予定
皆様、こんにちは。
作者のにゃんパンダです。
まずは御礼を。
皆様、ここまでお読み頂き、そして応援して頂き、誠にありがとうございました。
本当に感謝の気持ちで一杯です。
昨年の四月に読み専だった私が無謀にもいきなり本作の執筆を始めてから早一年。
まさか、ここまで来られるとは全く思っておりませんでした。
正直、何度筆を折ろうと思ったか分かりません。
実は投稿ペースが乱れていた時期は、執筆が辛くて本当に辞めてしまおうかと悩んでおりました。
ですが、皆様から頂いた暖かいコメントに救われ、支えられて今日まで何とか続けてこられました。
本当に読者の皆様には感謝しかありません。
さて、真面目なことばかり書いていても面白くないと思いますので、ここからは作品の裏話的なものを少し書いていきたいと思います。
まず、作品全体についてですが、作中でマリーが語っていましたが、当初二十話ぐらいの予定で書き始めたパートが、何故か一五〇話近くなってしまいました(^_^;)
この原因は恐らく、一話で書こうとしたネタが高確率で三、四話に膨れ上がる所為です。
そして、皆様に頂く沢山のコメントを見て、ついつい期待に応えたくなって色々と新たなネタを入れてしまう所為です。
要は、私が優柔不断な所為なのです。
ですが、私はこの作品を読者の皆様と一緒に作っていきたい、そして一緒に楽しんで欲しいという思いが強くありまして、出来る限り皆様のお声を反映して話を作っていきたいということでもあります!
(まあ、こう言うのはプロを目指しているような方からすれば、邪道なのかもしれませんが……。)
ですので、これからも皆様のお声をどんどん聴かせて頂けるとありがたいです(^^)
次は本作の幻のテーマについて。
実は本作の最初期の構想のテーマの一つになる予定だったのが、転生チート設定に対するアンチテーゼ、だったりします。
全く、バカなことを考えていました。
因みに作中でシャケが「頭がwikiとリンクしてるような連中は……」とか言っているのはその名残りだったりします。
で、次にちょっと失敗したかな、と思うのが、本作のシリアス過ぎる部分です。
具体的に言うと疫病とアネットの暗い過去についてで、この辺りの設定は最初期の構想が割とシリアスな感じだったので、その名残りです。
もう少し軽い設定でも良かったのかな、と思っています。
特にアネット。
彼女の過去の回想については本当に多くのご意見を頂きました。
なので、多少マイルドに改稿しました。
それに加えて、彼女が複数の男性と関係を持ってしまった、というのもキスくらいの設定に変えて欲しい、というご意見を沢山頂いたりしました。
私もそうしようかと随分悩んだのですが、逆に設定が軽くなり過ぎる気もして今のところそのままになっております(^_^;)
キャラクターについては、今書くと次回以降に書くことが無くなってしまうので一つだけ。
私が意外だったことは、ヒロイン達の人気についてです。
それぞれのヒロインがメインの回に付くハートマークの数を見ると分かるのですが、
一位 レオニー
二位 セシル
三位 アネット マリー
という感じの結果になっております。
(あくまでハートの数だけをざっくり見た感じなので正確ではないと思いますが……)
正直、作者としては意外でした。
勿論、レオニーも私が好きなキャラクターなのですが、何故レオニーが一位?みたいな。
あ、もし宜しければレオニーのどこが魅力なのか、今後のために教えて頂けると有難いです(^^)
あ!でも、胸とか太腿、みたいなのは無しで(笑)
さて、最後に今後の予定についてですが、第二部の準備の為、本編の投稿は暫く(二週間から一ヶ月ぐらい)お休みさせて頂きます。
ですが、何も無いのは寂しいのでこれまでと同じ投稿ペースで、短めの話ではありますが、バッドエンド集を投稿していきますので、宜しくお願いします。
予定では一話につき、ヒロイン一人のバッドエンド一つと、そのキャラについての紹介・解説を書く予定です。
で、バカな私はここでまた余計な企画を思い付いてしまったのですが、それぞれのヒロインについて知りたいことが有れば、その話の投稿日までにコメントでお知らせ下さいませ。
可能な限り、紹介・解説パートでお答え致します。
あと、それに加えてちょっとしたクイズも出させて頂きます。
賞品はありませんが、色々考えてニマニマしてみて下さい(笑)
問題は、私がヒロイン達を書くに当たって、どんなキャラクターを参考に書いたか、です。
もし宜しければ、お付き合い頂けると嬉しいです。
早速ですが、次回投稿予定(3月27日(土))の話ではセシルが主役ですので、もし彼女に関する疑問・質問が有ればコメントでお知らせ下さいませ。
それ以降はマリー、レオニー、アネット、リゼット、フィリップの順番の予定です。
あと、クイズのヒントですが、セシルのモデルにしたキャラクターは少し古い作品のヒロインです。世代で言うとフ◯メタル・パニックと同時期で、更に同じ富◯見ファンタジアの作品です。
そして、そのキャラクターに別の二つの作品のヒロインのエッセンスを加えたイメージで書いています。
まあ、今では原型はあまり無い気がしますが……。
あと、これは少し厚かましいお願いではあるのですが、第二部を準備するに当り、何でも結構ですので本作に対するご意見、ご要望、アドバイス等ございましたら、頂けると大変ありがたいので是非宜しくお願い致します。
あ、誤字脱字が多すぎだぞ!終わる終わる詐欺ばかりじゃないか!変なペンネームだ!ふざけやがって!の三つは自覚しておりますので、あまり虐めないで頂けると有難いです(笑)
最後に、これからも皆様にお楽しみ頂けるように全力で頑張りますので、どうか応援を宜しくお願い致します。
それでは皆様、ここまでお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m
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