第117話「帰還と報告と噂①」

 皆様、お久しぶりです。


 モブキャラのマクなんとかです。


 覚えていらっしゃるでしょうか。


 私は今、色々あった遠征から漸くトゥリアーノン宮殿に戻って来たところです。


 いやー、今回の遠征はかなり大変で、正直かなり疲れました。


 遠征の始めの方は割と順調だったのですが……。


 しかし、途中からいきなり白豚野郎と場外乱闘が始まったり、何故か悪徳貴族連中が軍備を整えていたりと波乱続きになってしまい、散々な目に遭いました。


 ただ、奇跡的に私の元婚約者であるセシルが、何故か私に味方してくれたのでお陰で命拾いし、こうして帰ってくることが出来ました。


 本当、彼女には感謝です。


 今度、菓子折りでも贈るとしましょう。


 あ、贈るといえば、帰り道で立ち寄った王都の花屋で買った花を、世話になった面々に贈りました。


 他人に花を贈るなど、人生で初めての経験でしたが、やってみると中々気分がいいものですね!


 きっと私の感謝の気持ちは、皆んなに届くことでしょう。


 ああ、なんて清々しい気分なんだろう!


 閑話休題。


 さて、兎に角そんなこんなで何とか全ての予定が終わり、私の率いる遠征隊も役割を終えたので、ついさっき宮殿の広場で解散しました。


 いやー、短い間でしたが私と一緒に頑張ってくれた彼らと離れるのは、少し寂しい気分です。


 ですが、人間感傷に浸っていてはダメなのです。


 人間は過去に囚われず、未来へと進まねばなりません!


 ということで、私は今から一ヶ月間頑張った報酬を貰いに行くとします!


 『廃嫡』という名の……確定した明るい未来を!




 という訳で、私は遠征隊の解散式を終えると、早々に建物に向かって歩き出した。


 そして、通用口から建物内へ入ろうとしたところで、


「……ねえ聞いたー?あの小賢しくて外面だけはいいフィリップ様が……」


「……ええー!?あの色々小さいって噂のフィリップ様が?それマジー?」


 中から話し声が聞こえてきた。


 ん?なんだ?


「マジマジ!大マジよ!しかもね、あの見た目は可愛らしいけど超絶腹黒いマリー様を……」


「……うわっ!キモッ!アイツ最低ー……」


 見れば若いメイドが二人、休憩中なのか、壁に寄り掛かって雑談していた。


 ふむ、どうやら若いメイド達が噂話をしているようだな。


 それにしても……フィリップがどうかしたのか?


 盗み聞きは良くないが、内容が気になるな……。


 ………………。


 …………。


 ……。


「……ね?最低でしょ?」


「うわー、ないわー……」


 メイド達はフィリップの所業について、辛辣なコメントをした後、話題は変わり、今度は……。


「ところで話は変わるけど、レオニー様ってカッコいいわよねー!」


「ええ!まさにクールビューティーよね!アタシ、油断したら惚れちゃいそう……」


「それ、わかるわー。で、そのレオニー様なんだけど……最近なんか綺麗になった気がしない?」


「ああ!やっぱり、アンタもそう思う?」


「てことは……私の気の所為じゃなかったんだ。てことはレオニー様も恋をしてるのかな?」


「うん、きっとそうだよ!だとすると……」


「相手が気になるわね……」


「ねー!あのレオニー様に釣り合う相手って、一体どんな人なのかしらね!」


 くしゅん!


 何故か、突然くしゃみが……。


 それにしても、へー、あのレオニーが恋かー。


 正直、あのクールな女スパイが恋をしているところなど、全く想像出来ないが……。


 うーん……なんか、ホテルのスイートルームでMi -6のダンディーなスパイとド◯ペリとか飲んでそうだな。


 まあ、それは冗談として。


 レオニーも意外と好きな男の前では普通に笑ったりするのだろうか?


 まあ、私には関係のない話だが……。


 彼女は頑張って働いてくれたし、幸せになって欲しいと、素直に思う。


 ただ、彼女は能力の面で色々ヤバいから、お相手の男は大変かもなぁ。


 ちょっとした嫉妬とか、ケンカとか、浮気とか誤解されたら即、命の危機だからな……。


 怖過ぎる……。


 まあ、私には全く関係ないが。


 ハハッ!


 ………………。


 …………。


 ……。


 そこから更に話題は変わり……。


「ねえ、そういえば聞いたー?最近流行ってる都市伝説」


「都市伝説?どんな?」


「えっとねー、それが『呪いの赤い鎧』って言って、真紅の鎧がダイヤのネックレス付けて徘徊してるんだってー」


「は?意味わかんない……」


「だよねー……で、続きがあって、その鎧に出くわした時に、ネックレスを取ろうとしたり、貶したり、あとはマクシミリアン様を馬鹿にするとその瞬間、何故か意識がなくなっちゃうんだってー」


「え?どゆことー?」


「さあ?そういう呪いなんじゃないの?」


「まあ、所詮都市伝説だもんねー……」


 ダイヤのネックレスを付けた呪いの鎧かー……うん、知らない。


 鎧の知り合いなんて、全然いないし……。


 知らないったら知らないんだからね!(ツンデレ風)


 ……と、私が現実逃避をしていると、


「あ!あと知ってる?セシル様って実はパッド……と、いけない!そろそろ行かなきゃ!」


「あ!マズい!遅れたらメイド長にしばかれるわ!」


 そこでメイド達は話を切り上げ、慌てて去って行った。


 結局、そんな感じで私は良くないとは思いつつ、彼女達の噂話を最後まで立ち聞きしてしまったのだった。


 そして私は、


「なんということだ……まさかフィリップが、そんなヤバいことをしていただなんて……これはマズいぞ……『皇太子ヨロ!』の挨拶のついでに、ちゃんと話をしなければ……」


 と呟き、今回の遠征の結果報告の為、父上達のところへ向かったのだった。

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